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Panasonic LUMIX S1H × 撮影現場 Vol.1 シネマミラーレスカメラ、LUMIX S1Hの可能性

HOTSHOT 編集長   石川幸宏

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◆発売1ヶ月でNetflix認定カメラに
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映画撮影やネット系やTVのドラマ撮影など、ハイエンドな映像撮影現場でも近年小型のシネマカメラやデジタル一眼カメラが活躍する場面は確実に増えている。すでに予算の少ない作品では、こうした小型カメラだけで撮りきってしまう現場もある。デジタル一眼系のカメラ用途として、多くの場合はAカメ(メインカメラ)のサブカメラ=Bカメ、 Cカメとしての利用例が多いと思われる。またドキュメンタリー作品や狭い場所での機動性を活かした撮影にもミラーレス一眼タイプのカメラ利用の価値が上がっているのは周知の通りだ。

2019年初頭にパナソニックから新たなミラーレス一眼カメラのラインナップとして登場した、LUMIX Sシリーズ。それまで主流だったGHシリーズに代表されるマイクロフォーサーズのLUMIX Gシリーズに続き、2018年秋に発表されたライカカメラ社、シグマとのLマウントアライアンスによる、35mmフルサイズ・ラインナップの新シリーズとして発表された。静止画・動画ハイブリッドモデルとなるLUMIX S1、有効約4730万の高画素モデルのS1Rに続き、ムービー撮影を強化したモデルとして発表されたのが、昨年夏に登場したLUMIX S1Hだ。

LUMIX S1Hはデジタル一眼レフのフォルムはそのままに、その内部はVARICAMでパナソニックが培ってきたデジタルシネマカメラの本格的な機能をフルスペックで注入。35mmフルサイズセンサー搭載のミラーレス眼としては、世界初となるセンサー全域を使った「3:2 6K/24p(5.4K/30p)、16:9 5.9K/30p動画記録」などの解像撮影で、SDカードによるカメラ内収録を実現している。さらに昨今のシネマカメラではトレンドの機能となり、最初にVARICAM 35に搭載されて普及したパナソニックの「デュアルネイティブISOテクノロジー」も搭載。ISO640/4000の2つベース感度を持たせることで、暗所撮影での高感度ノイズを低減できるなど、撮影可能なレンジを拡げることに絶大な効果を発揮する。
※V-Log選択時のベース感度

ミラーレス一眼の筐体に、10bit 4:2:2や4K DCI 60Pカメラ内収録という機能を凝縮したモンスターマシン、LUMIX S1H。その高い画質性能はいち早く世界に認知され、発売からたったの1ヶ月の2019年10月末には、ミラーレス一眼カメラとしては初のNetflix認定カメラの指定を受けることになる。パナソニックのシネマカメラは現在、VARICAM 35/LT/Pure、AU-EVA1、AK-UC4000の5台がNetflixの認定を受けており、そこにLUMIX S1Hが横並びした形だ。このことからもその画質特性と機能にハイエンドプロからも大きな関心が寄せられ、昨年末ごろから国内でもすでに多くのハイエンド撮影の現場で、その実力が試されることになった。

パナソニック シネマカメラグローバル
https://pro-av.panasonic.net/jp/cinema_camera_varicam_eva/index.html

◆ハイエンドプロの要求の満たす、広いダイナミックレンジ特性

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劇場用映画やミュージックビデオ(MV)だけでなく、今ほぼ全ての映像作品はポストプロダクション作業において、カラーコレクション、カラーグレーディングという色調整することが前提で撮影される場合がほとんどだろう。現在のプロの撮影現場におけるカメラ選択で重要視されるのは、カメラの色特性と、使用される各カメラ間の色の相性という点だろう。中でも重視されるのは、どこまでカラーグレーディングに耐えうるのか?という素材のダイナミックレンジ耐性に重点が置かれてきている。もちろんビット深度と階調特性については、メインカメラの特性と合わせたときに最も重要視される傾向がある。

S1Hを使用した多くの現場から聞こえてくるのは、そのダイナミックレンジの広さだ。VARICAMと同等のV-Log搭載で下−8、上+6+αの14+Stopを実現。またV-Log設定時には色域としてITU-R BT.2020を超える広い色域を持つ「V-Gamut」記録が可能。3D LUTにももちろん対応しつつ、VARICAMの豊富なLUTライブラリを利用することができるので、現場や編集時の仕上がりイメージの向上にも大きなサポートとなる。

特に今後必要となってくるHDR(ハイダイナミックレンジ)仕上げ用の撮影には、この14+Stopというダイナミックレンジが非常に有効になり、大掛かりなスポーツイベントやライブ、劇場用映画におけるアクションシーンなど、特に機動性を求められる現場が増える中で、仕上げはHDRを前提とした場合、S1Hのようなカメラが必要になる現場は増えてくると思われる。

またV-Logを使用しない、素材そのままの撮影素材の良さも最近重要視されている部分であり、パナソニックは長年のシネマカメラ開発で培われたシネライクガンマを助長したガンマをフォトスタイルとして搭載。ダイナミックレンジ優先の「シネライクD2」とコントラスト重視の「シネライクV2」の2つのルックでより撮影時のイメージのままで仕上げが可能だ。

VARICAM LUT ライブラリ
https://pro-av.panasonic.net/jp/cinema_camera_varicam_eva/support/lut/index.html

◆充実したLマウントレンズ環境も現場での利用に反映

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”シネマミラーレス”カメラの最初のバージョンとしては、VARICAMからの遺伝子を受け継いでフルスペック機能を盛り込んだS1Hだが、もちろん気になる点がないわけではない。例えばそのサイズと重量だ。昔のプロ用DSLR機に匹敵する大きさと1kgを超える重量は負担を感じるかもしれない。さらに周辺機材を併用する際のリグなどとPLレンズを組み合わせると、Aカメのシネマカメラとほぼ同サイズになってしまうということも考えられる。また、ミラーレスカメラとしてのメニュー項目や設定階層の考え方が現場にどこまで浸透するのかといったワンマンオペレートだけでは通用しないシネマ機材としてのハードルもある。

しかしこの辺の課題を退けてでも、LUMIX S1Hは、4K60Pのカメラ内記録をはじめとする、プロ制作に必要とされる画質や機能の魅力に溢れている。


それを支えているのは、すでに充実しているLマウントレンズ環境にもあるだろう。

レンズバリエーションに関しては、当初映像制作業界では全く普及していなかったため懸念されていたLマウント環境ではあるが、3社のLマウントアライアンスによる恩恵が非常に大きく働いており、2020年1月現在ですでにかなりの本数が出揃っている。

全てスチル撮影用レンズではあるが、本家本元のライカカメラ社からは、これまで「Leica SL / SL2」で使用されてきたLマウントレンズ群(単焦点5本、ズーム3本)。シグマからも「SIGMA fp」カメラ用にLマウントレンズを2019年末までに多数(単焦点10本、ズーム2本)発表。さらに2020年1月には、14mmと28mmがそれぞれラインナップに加わっている。

これにパナソニック純正のLUMIX Sレンズとしては、単焦点レンズでは、50mmが1本、ズームレンズが広角ズーム1本、標準ズーム2本、望遠ズーム2本の計5本がすでにあり、さらに85mmなど次の製品群の開発発表もされていることから、これからのラインナップの充実も予想以上に早いと思われる。さらには今後の市場拡大によってはシネマレンズの開発の期待も高まる。

またハイエンドでの撮影現場利用の際に気になるのは、やはりシネマ用のPLマウントレンズの使用環境だろう。必須になるのがLマウントーPLレンズのマウント変換アダプターだ。しかしこれもライカカメラ社からはすでに、Leitz Cine社の「SL-Mount Camera to PL Lens Adapter」があり、シグマからも「MC-31」というL-PL変換アダプター製品も昨年秋には開発発表されているので近日発売されると思われ、国内におけるシネマ用PLレンズでの現場使用も現実味を帯びてきている。

Lマウントアライアンス
https://panasonic.jp/dc/s_series/special/l-mount_alliance.html

こうした環境が最初から整っている状況もあり、多くのハイエンド撮影の現場から、S1Hを使ってみたい、すでに使ってみた、購入したという声が続々と届いている。

HOTSHOTでは、この連載特集でハイエンドプロのからの様々な意見やテストレポートなどをご紹介するとともに、LUMIX S1Hの実力と可能性を、プロ目線のより多角的な視点から追っていく。

Vol.1 シネマミラーレスカメラ、LUMIX S1Hの可能性
Vol.2 撮影監督 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part1
Vol.3 撮影監督 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part2
Vol.4(近日公開)
Vol.5(3月公開)
Vol.6(3月公開)
Vol.7(3月公開)
Vol.8(3月公開)

Lumix S1H