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ドキュメンタリー映画『HOME』が国際映画祭で高評価!MAGNUM × Fujifilm GFX50

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Interview 江夏 由洋 / Yoshihiro ENATSU 〈 marimoRECORDS 〉 , 江夏 正晃 / Masaaki ENATSU 〈 marimoRECORDS 〉

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『HOME』
http://home-magnum.com/ja/

プロデューサー:飯田年久(富士フイルム)
エグゼクティブプロデューサー:青山国雄(富士フイルム)
監督:江夏由洋/Yoshihiro ENATSU(marimoRECORDS)
音楽:江夏正晃/Masaaki ENATSU(marimoRECORDS)
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© FUJIFILM Corporation

世界の写真界の頂点に立つ最も著名な写真家集団、マグナム・フォト。
この中の16人が、2017年、富士フイルムの中判カメラ、GFX50Sで『HOME』という共通テーマのもとに写真を撮影、2018年3月から世界10箇所の都市での巡回写真展と写真集の制作を行った。
実はこの写真展までの道程と各カメラマンへのインタビュー、関係者への取材などを一本にまとめたドキュメンタリー映画「HOME」が存在する。
制作を行ったのは、 マリモレコーズの江夏兄弟だ。
「HOME」制作までの経緯 由洋:2017年の8月に、富士フイルムが、中判で初のミラーレスカメラ「GFX50S」で、思い切ったプロモーションをしたいというお話しがありました。
具体的には、マグナムフォトの協力を得て、マグナムフォト所属の写真家たちによる、GFX50Sによる写真展を開催し、写真集を作るということでした。
ニューヨーク、パリ、東京、ロンドン、ケルン等で120点の写真を1年半かけてツアーをするんです。富士フイルムの青山国雄さんがプロデューサーとなって自らすべてのイベントやプロモーションを担当されました。
そのプロモーションの一環として私たちに声をかけてもらったのが始まりです。
このHOMEプロジェクト自体が青山さんのアイディアで、世界でも屈指のフォトエージェンシーであるMAGNUM PHOTOSとのコラボレーションは商業的な活動というよりも、もっと文化的なものにしたいというのが青山さんのこだわりでもありました。
MAGNUM側には写真家の久保田博二さんがトップ立って、キャスティングも併せてご尽力を頂きました。 写真展の開催は、2018年の3月 にNYからの予定で、それまでの約半年間に16人のカメラマンが撮影している様子をYouTubeで紹介することになりました。
実際には各カメラマンのインタビューや撮影風景などを撮っています。写真家の16人に加えて、写真集の編集者や写真展のキュレーターへのインタビューも加えて、素材を増やしていきました。
撮影の途中からこれを映画にしたいなと思い、そこも含みながら撮影を続けました。一連の素材を撮り終えたころには、映画化するということと、カンヌ広告祭に出すという明確なビジョンがありました。

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マリモレコーズ初の映画作品

由洋:僕が担当した撮影では、4台のX-T2とX-H1で撮っています。
ニューヨークに行った時はX-H1が発売になっていましたが、最初の頃はX-T2を使って、映画化を想定して常に4台体制で撮影しました。
僕はイン・アクションの映像を撮るのが好きなので、 撮影しているところを撮ったり、インタビューも色んなシチュエーションで聞いたりしました。

正晃:弟(由洋)が、撮ってる最中から映画化はどうかな?って相談してきたので、これはようやく映画と言える作品を作るチャンスがやってきたということで、僕としては凄く面白いなと思ったんです。
それに、彼が元々ドキュメンタリーが得意なので、まずは得意なところからスタートするって、とても良いんじゃないかと思いましたね。
今回僕自身はプロデューサーというよりも、コンポーザーというか、音楽担当に徹して、サポートという形で参加してます。
もちろん、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいっていうのは言いましたが、音楽も結構バラエティに富んでいて、写真家によってテーマをつくっているんです。
一人一人の考え方をオマージュして曲を書いていったので、凄く面白いことをしてます。

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1人50時間のマルチカメラ素材を編集

由洋:撮影にあたって、うちのスタッフの意見は全部聞きました。
その中でマグナムのことにすごく詳しい女性スタッフがいて、彼女が16人の写真家の情報を全て送ってくれたんです。
どんなカメラマンで、どういう作品残して、今どんなことしてるのかっていうのをあらゆる情報を用意してくれました。
ニューヨークに行く前日に、色んな動画ファイルや資料を渡されて、もう一回これを見て、インタビュー内容をちゃんと考えて下さいと言われました(笑)。
一人当たりのフッテージは人によって様々ですが、多い場合は50時間ぐらいありました。しかもマルチカメラで撮っているので300時間ぐらいになっている場合があります。
短いのは、1日ぐらいしか撮影してない場合もあります。
トータルでは1000時間を超えるようなフッテージだったと思います。僕が直接撮影していない素材もたくさんありました。
でもテレビ局時代にずっとドキュメンタリーをやっていたので、そういうのを整理するのはわりと得意なので、編集はそこまで苦ではなかったです。
ただ、時間がかかるので、他の仕事が終わったあとに2時間やったり、朝早く来て、始まる前にやるといった積み重ねで、2018年の11月の終わりぐらいに、ようやく全部粗編集が完成したんです。
12月にプレビューして、みんなの意見を聞いて再編集したりで、最終的には、2019年の2月に完成しました。その頃には、カンヌの広告祭などへの登録をして、3月からは、海外のフィルムフェスティバル、6月には広告祭に出しました。
国際映画祭には、結果的に8つの映画祭でノミネートされたんですが、一番嬉しかったのは、ONIROS FILM AWARDSのファイナリストに残ったことです。これはさすがに嬉しかったですね!(笑)」

正晃:ニューヨークの写真展にエリオット・アーウィットさんが来るということで、彼(由洋)が現場に行けなかったので、ここは僕がインタビューしたのですが、あのエリオット・アーウィットですからテンションが上がりすぎて、インタビューを始めてマイクをオンにしたと思ったら、逆スイッチをしてしまったんです(苦笑)。
つまり音声が全く録れてなかった!それでマネージャーにお願いしてもう一度撮らせてほしいとお願いしたら、ちょっと時間をちょうだいと言ってくれて。
僕が謝ったら、嫌な顔一つせず、再度応えてくれたんです。今度はミスは許されない。そしたらエリオットさんがいきなり『この子は噛むのかい?』って聞いてきた。最初何を言ってるのかわからなかったんですが、彼は犬が好きで、マイクのことを犬になぞらえて言ったのに気が付いて、「これは噛まないですよ」と言ったら「Good Boy!」って言って、マイクをなでてくれて。全く嫌な顔をせずに再度インタビューを受けてくれました。

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「スクイーズ・ザ・レモン!」

正晃:この映画は最初カメラの世界観を16人が語るというオムニバス映画になると思ってた。でも彼(由洋)はドキュメンタリーをよくわかっていて、最後にデイビッド・アラン・ハービーが『Picture is never over. Squeeze the Lemon!』って言うシーンを持ってきた。
一番最後のあのシーンに持っていった時に、あ、映画になったなって思ったんです。
この言葉は自分たちでも、何かのたびに思い出すんです。
アイデアが出てこなくても、なんとか絞り出せと。そうすればなんとか最後の一滴が出てくる、その一滴が大切なんだよっていう、あの言葉は、カメラマンだけじゃなく、色んなことにおいて通用すると思う。
由洋:実はこの時、撮影は全て終わってたんです。でも帰国の日の朝、ハービーさんからサービスで、メイキングのために飛行機に間に合うまでギリギリまで撮影しようってことで、朝4時から撮影に行こうって言ってくれて、真っ暗なところから日が昇るそのときを撮影しようって、撮ってたんですよね。
そしたら、彼は突然スイッチが入って、本気で撮り出すんですよ。
本当は撮らないっていったにも関わらず。あわててRECを押して。
そしたらあの最後の名言が飛び出したんですよ。ああ、超イイこと言ったって思ったら、もうマイク外しちゃっているし。カメラマイクの音声を聞いてもあまり入っていなくて(悲)。と思ったら、彼の胸にICレコーダーを入れてあって、それはずっと廻ってたんです。帰国前の空港で慌てて音声を確認したら、あったーって(嬉)。

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過程にいる人の存在

由洋:今回、一番僕がこだわったのは、スチュワート・スミスっていうエディターなんです。
要は、どうやって写真ができていくかという過程は、写真家の視線だけじゃなくてそれを支えるプリンターやエディターのところをしっかり見せたかったんですよ。
だから、実は一番尺をとっているのは、スチュワート・スミスのカットで、イタリアでのプリティングの過程です。
結局、写真がデリバリーされるのは、彼らがいるおかげなんですよ。
プリントして人の目に映るまでの取る人、編集する人、プリントする人がいて、はじめて写真が人の目に届くという。
アナログな部分が、いまだにこの時代にある。それこそインスタなら一瞬で終わるものを、凄い時間とお金をかけて、丁寧に本を作っている人がいるという。
あくまでも、料理をする人達は16人いるけれども、それをちゃんと運ぶ人、お客さんを呼ぶ人、そういう場を作る人たちっていうのがいるんだと。
僕が描きたかったのは、決してアナログ対デジタルという対立構図だけではなくて、やっぱり、物事ができていくプロセスみたいなっものていうのは全てに共通するんじゃないかなと思っていて。それはやっぱり、結局は人の手による作業なんですよね。
中判のデジタルがあろうが、インスタグラムであろうが、色んなツールはあれど、結局、人の感性を動かすものっていうのは、人の手による作業だったり、感覚だと思っていて、それをこの写真を通じて、この素材、とても素晴らしい人たちを通して何か描けないかな、っていうのはあったんです。

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自身におけるドキュメンタリー

由洋:ドキュメンタリーって、インタビューももちろん大事だし、インタビューじゃないと引き出せないこともあるんですけど、僕が好きなのはそのシチュエーションのイン・アクションにおける自発的な声です。
僕はその撮影がある時にそこを一番大事にするんですよ。だから、常にピンマイクはオンにしておくし、許諾を得られればエマージェンシーのためにICレコーダーとかをかな必ず仕込んでおくんです。最悪、絵がなくても、音さえが入ってればいくらでも絵を被せることができますから。

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正晃:音楽の僕の生徒にも見せたのですが、一人の女の子が「本当に素晴らしい映画だ」って言ってくれて。何が良かったのかって聞くと、ラストのあのシーンのことばかり言うんです。
そこが僕らにとってもあのシーンが抑えられたことが、今回僕らにとって、とても意義があったんじゃないかなと。僕らも映画をつくるなかで、スクイーズしてスクイーズして、これは本当に映画になるのか?、なかなか出て来ないなって葛藤してました。
今後この作品がどうなるかわからないですが、そういうイメージというか。でも、それが楽しいのかなって。
いまだに僕は、この映画が言い映画なのか悪い映画なのか、自分ではわかりません。
由洋:結局人が好きなんですよね、僕たちは。人の悪い所を見る前に、この人の魅力は何だろうって考えることが好きというか、言い替えれば、人の話を聞くのが好きなんですよ。
だから、こういうドキュメンタリーは長年やってますけど、こういう得意なフィールドを拡げていけるのは、すごく幸せなことだなと思います。