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アスペクト比が物語る時代性

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HOTSHOTもこの号でちょうど創刊から丸3年を迎えた。この3年間の取材を通して映画や映像制作また上映や視聴環境もかなり変わった。
最近気になるのは、作品と画面アスペクトの関係における、その時代性についてだ。
現代において、TVよりも圧倒的に映像の視聴時間が長くなっているスマートフォン。
その画面アスペクト比もここ数年で変化している。
2018年から2019年に発売された最新のアンドロイド系スマートフォンは、HDサイズの16:9よりも横長サイズの、18:9(2,160 ×1,080pix)というサイズのものが多く、iPhone11シリーズや高画質、高解像度のモデルでは、19:9(iPhone 11 Pro等では高解像度の2,668×1,242pix)というのもあり、この辺が最近の主流のようだ。
ソニーのXperia1に至っては21:9(3840×1644 pix、HDR表示対応)ともっとワイド&高画素になっている。
もっともスマートフォンではゲームやSNSやWebサイトの閲覧が大半だ。
そしてそのどれもに映像コンテンツが含まれているわけで、これからスマートフォンと映像はさらに親密な関係になるだろう。

画面アスペクト比と映像視聴スタイルは、映像の歴史上でも昔から親密な関係にある。
HOTSHOT ♯8にも登場して頂いた木村大作監督は、黒澤明監督作品の撮影助手だったことでも有名だが、その時期がまさに日本で最初にシネスコサイズ作品を作っていた時期だ。
1958年の『隠し砦の三悪人』から1965年の『赤ひげ』までがちょうど東宝スコープと言われる、いわゆるシネスコサイズで制作された作品で、木村監督が撮影助手時代の期間とちょうど一致する。
木村監督にそれらのシネスコ作品についても色々お聞きしたが、中でも印象的だったのは、当時のシネスコ撮影で使用したレンズは最短のワイドレンズでなんと100mm、望遠では最長1,000mmのレンズも使っていたという。
黒澤作品は望遠レンズを多用することでも有名だが、当時の東宝スコープというアナモフィックレンズは、2つの操作リングの回転方向が逆で、使い方も非常に難しかったそうだが、シネスコサイズの画角で構図を作るためのセット作りへのこだわりもあり、これらの作品はいま見ても当時の映画人の情熱と意欲を感じる。
1958年という年は、まさに日本映画の絶頂期であり、日本国内の映画館入場者数が11億3000万人という現在では考えられないような数字を叩き出した年でもある。その時期にシネスコ作品の最高潮が訪れたことは偶然ではないと思うし、1965年以降、日本映画界はハリウッド映画大作の進出もあって次第に縮小し、シネスコ作品制作も減っていく。
2019年、大小様々な35mmフルサイズのカメラが出揃い、アナモフィックレンズを装着できる4:3のアスペクトを選べるカメラも出てきた。
スマートフォンでの視聴も含めて横長のアスペクト比の作品を比較的簡単に作れる土壌は揃っている。
しかし相変わらず制作予算面ではますます厳しくなり、世界市場では厳しい戦いを強いられている今の日本の映像業界。
黒澤監督は、1965年の最後のシネスコサイズ作品『赤ひげ』の制作の前に「日本映画の衰退が叫ばれている。
それを救うのは映画を作る人々の情熱と誠意しかない」と語っている。
やはり現代でも同じく、映像を作る人の『情熱と誠意』が問われているのではないか?と思うのである。

Akasaka, TOKYO ,
FUJIFILM X-Pro2  ISO200 SS 1/250 f6.4 XF27mm F2.8