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ゆーこのすくりぷとーく

- スクリプターから見えた撮影現場のあれこれ 01 -

本図木綿子

UP

私はテレビドラマや映画を作ることを仕事にしたいと思っていた。そして小さい頃からメイキング映像やNG映像を見てワクワクしていた。制作の裏側を見ることは誰も知らない世界を自分が知るような、どこか秘密を持つような感覚があって、私もその世界を知って作品を作り、人を感動させたいという思いからこの業界に興味を持ったのだ。
具体的にどの部署に入りたいというわけではなかったので、映像の専門学校に進んだときは取り敢えず手に職だと思って撮影コースに進んだ。

ただ、自分は監督に向いていないと思っていた。それは私が力を発揮するのは誰かのために動くときだからだ。リーダーとしてチームを引っ張るよりもリーダーをサポートし、リーダーの成功を見る方が達成感を感じられる性格なのだ。私がスクリプターになりたいと最初に思ったのは、撮影の先生からスクリプターの話を聞いた時だった。「作品の最初から出来上がりまで立ち会う」「監督の隣にいて助言をする」と説明を受けた時に「これだ!」と思った。

作品作りの過程は大きく「準備」(Pre Production)「撮影」(Production)「仕上げ」(Post Production)に分けられる。私は最初から最後まで作品に携わりたいと思っていた。監督と同じぐらい物語作りに意見して作品作りの中核にいたいと思っていた。監督以外にそんな部署があることを知らなかった私は、スクリプターが自分にぴったりの仕事だと思った。
しかしスクリプターの細かい仕事までは教えてもらえず、その学校はスクリプターを養成するコースもなかったし、卒業生にもスクリプターがいなかったので、私は何も詳しくその世界を知らないままスクリプターを目指すことになった。日本のテレビや映画の現場では、スクリプターは一つの作品に1人だけ。上司もいなければ助手もいない。現場を知るにはすでに現場にいるスクリプターに弟子入りする形で仕事を覚えるしかない。私も師匠と出会い現場で勉強した。そこでスクリプターの仕事量の多さに驚いた。
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スクリプターの様々な仕事

スクリプターの最初の仕事は「尺出し」だ。台本を読みながら作品がどのぐらいの時間(尺)になるか計るのだ。ストップウォッチを片手に台本に書かれた芝居がどのくらいの尺になるのか、セリフがどのくらいのスピードで読まれるのかを想像してシーンごとに尺を出して行き、全体尺を報告する。特にテレビドラマでは放送時間が1秒単位で決められているから、短いと事故になるし長いとカットしなければならない。大抵は決定稿以前の稿で尺出しをして、台本の直しの参考にされる。
準備期間では他に衣装合わせに立ち会い、登場人物たちのイメージを共有したり、美術打ち合わせに参加して監督の完成イメージを把握しておく。
撮影が始まると、監督の隣に張り付いて仕事をする。監督はスクリプターに撮ったカットをどの様につないで行くのか伝える。スクリプターはそれを聞いて現場にいないエディターに申し送りをする。監督の指定する所で編集できるように「つながり」を確認し、違っていれば直して行く。

また、スクリプターはストップウォッチを持っていてカットごとに尺を計っていく。これは撮影前に出した尺と本番撮影の尺の違いを出し、完成尺がどの程度になるのか確認するためだ。予想と大きく変わってくるようなら、監督に報告し台本を調節してもらう事もある。
例えばシーン15のカット3とか「カットナンバー」をつけるのもスクリプターの仕事だ。これはカットごとに名前をつけることで素材の呼び出しを簡単にするためである。テレビドラマや映画は基本的にはストーリー順に撮ることはほとんどない。バラバラに撮ったものをあとで順番に並べるためにナンバーをつけている。素材の目録の作成とその管理もスクリプターの仕事だ。
撮影が終わると編集作業に立ち会う。最初にエディターがスクリプターの記録を参考にして繋いだ作品を見るが、それがそのまま世にでることはない。より面白くなるにはどうすれば良いのか?監督はエディターとスクリプターと相談し、感想を出し合って編集を直していく。

その他には合成カットの管理をして漏れがないように確認したり、アフレコをする場合はアフレコ台本を書いたり、作品によっては完成台本を書く。完成台本とは、出来上がった作品を再びアフレコを加えて台本に起こし直す作業である。このようにスクリプターには様々な仕事があるのだ。

未来が見える仕事

一般的にスクリプターの仕事は日本では「記録」とも呼ばれ、現在ではテレビでは「記録」、映画では「スクリプター」と呼ばれる事が多い。その仕事は主に撮影時点での’つながり’を見ることと思われるが、その仕事の本質は監督の完成イメージを汲み取り、イメージ通りに画を繋ぐことができるよう現場を管理することだ。’つながり’は映画・ドラマ作りに携わる人なら全員が持っている概念だ。

私が担当した作品での’つながり’の例を挙げる。ある男が窓辺で本を読んでいる、本ごしのアオリのショットがあった。男は没頭して読んでいたが声がかかり驚くように振り向く。するとカットが変わって引いた画になり、声をかけた女性越しに振り向いた男が本を手渡す。この2カットは編集すれば20秒にも満たないが、現場では20分の間を開けて撮った。しかしそれぞれのカットを撮る時には状況が全く同じでないといけない。窓やカーテンの開き具合、男の髪型、座っている場所・体勢、部屋に射す光、振り返った驚きの表情。これらはそれぞれ担当する部署が責任を持って’つながる’ようにしている。そのおかげで2つの画が編集されても20分間の開きを感じさせないのだ。スクリプターはそこで2つのカットが編集されても違和感なく見れるか、つまり”つながってるか”客観的に観察する。監督が振り向く動きでカットを繋ぎたいと言っていたらその瞬間つながっているか注視する。もしかしたら片方のカットで途中、風でカーテンが大きく揺れるかもしれない。それでもスクリプターが編集するのに問題なくつながると判断すればOKになる。スクリプターは撮った素材が実際にどういう風に編集されていくか見えている。言うなれば未来が見えているのだ。なのでスクリプターの判断と発言は監督と現場に大きな影響を与える。

様々な種類のある「つながり」だがどれもつながっていることが望ましいと思う。作品に熱中しているとグラスを持っていたのが右手だったのにカットが変わったら左手になっていても気づかない時がある。ただ、観客の潜在意識にその違和感は伝わっているのではないだろうかと考えている。それが後に座っている椅子の固さに気づいたり時計を見たりすることにつながるのではと思う。そのマイナス要素を一つでも取り除きたいと思い、現場では“つながる”ように心がけている。

作品を愛し、監督色に染まる

私もキャリアを積む中ですでに様々な苦労をした。現場に一人で出てみると、まずはスクリプターの立ち振る舞いが分からない。見習いの時は師匠の元に監督やスタッフ、役者までもが質問しに来たり頼りにしていた。自分一人になるとどうやって監督やスタッフたちとコミュニケーションを取ればいいのか分からなかった。現場で監督のカット割りを聞いたら監督と何を話せばいいのかも分からなかったし、つながってないなと思っても誰に言えばいいのか、どういう風に言えばいいのか分からなかった。一人部署は寂しくて照明部の人たちがトランシーバーでやり取りしながら笑っているのが羨ましかったことを覚えている。

私は「できない」「つかえない」と思われるのがシャクなので、とにかく真面目に仕事をこなしていた。“未来を見る力”を養うためにワンカット撮り終わったら前後の画は何に気をつければ良いか、ずっと考えていた。そんな時コメディー映画で就いた監督に「もっと一緒に笑って欲しかった」と言われた。私は現場で必死に仕事をこなそうとするあまりに“作品作り”から離れてしまっていたのだ。撮った素材を間違えずに管理することや編集部への申し送りを綺麗に書くこと、正確に“つなげる”ことはスクリプターの基本業務だが、それ以前の心構えが必要だったことに気づかされた。一緒に笑い、もっと面白く、もっと監督らしく、もっと観客に伝わるにはどうしたら良いか一緒に考えるチームの一員であることを忘れていた。「作品を愛せ」「監督色に染まれ」と師匠に言われていた言葉が実感として感じられるようになった。面白いことにそれから現場での意識を変えたら途端に監督指名の仕事が入ってきた。

監督の隣で仕事していてスクリプターは監督のナビゲーターであるべきだと思うようになった。監督の意志を明確化し、スタッフに伝えたり、進む方向を迷っていたら選択肢を提案する。監督が何を大事にしているのか感じてその通りに現場が進むように働く。監督によっては“つながり”を役者に伝えることで芝居の制限になると言う時もあるので、その時は何も言わない。その監督が大切にしているのは動きのつながりよりも感情のつながりだと理解しているからだ。
スクリプターになって10年を越して、今はちゃんと自分に向いている仕事だと思っている。

時代への呼応

私が業界に入った頃はまだフィルム映画が多かったがあっという間にデジタルに移行した。画角も4:3だったテレビは16:9になり、素材はサーバーで管理され始め、映像をワイヤレスで飛ばす技術は年々進化していると感じている。スクリプターも仕事量が軽くなった部分がある。デジカメで気軽に写真が撮れて確認できるようになったため、現場のつながりを書き留めておく分量が減った。素材も簡単に確認できるようになり、編集部からメールで映像を送ってもらったり現場でも素材を呼び出すことができる。編集部への申し送りもスキャンしてデータで送れるようになって、編集室へ通わなくてもよくなった。

事務的な仕事が軽くなる一方で変わらない部分もある。それは人同士の繋がりだ。私はスクリプターとして「全てのスタッフと細いが切れない糸でつながっている」ことを心がけている。それは誰かの意見や思いが動いたら糸が震えて伝わってくるように意識のアンテナを張っている、ということだ。それぞれの部署はその道のプロであり、作品作りをして来た。その彼らの意見が監督に伝わるように、選択肢が増えるように、気付き、話しやすい状況を作ってあげることもスクリプターの仕事ではないかと思っている。これは現場のシステムが変わっても変化しない部分であると信じている。そしてこの人のつながりは現在発展しているデジタルの技術を借りて、より深くなるのではと思っている。インターネットの力でスタッフ同士の連絡の取り方をより気軽にし、現場の情報を共有することでアイデアの数を増やすこともできるはずだ。

現在情報を管理するデジタルツールも映画・ドラマ業界に合わせたものが沢山出て来ている。スクリプターの仕事道具は「台本」と「鉛筆」と「ストップウォッチ」の3点だが、これもそろそろ進化する時が来たのではないだろうか、それがどのように変わるかはスクリプター自身が時代に合わせて見つけていかなければならない。

本図木綿子(スクリプター)

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2006年(有)あとりえ117入社。唐崎眞理子に師事する。
2008年公開の「カンフーくん」(監督:小田一生)でデビュー。
代表作:映画「ちはやふる」シリーズ(監督:小泉徳宏)、「TAP THE LAST SHOW」(監督:水谷豊)、「ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARDたぶんHAPPY」(監督:木村ひさし)
TVドラマ:「おっさんずラブ」(監督:瑠東東一郎、山本大輔)、「電影少女 – VIDEO GIRL AI 2018 – 」(監督: 関和亮、真壁幸紀、桑島憲司)