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映画「鈴木家の嘘」

- 欧州映画風で家族の笑いと涙を描く / VARICAM LTで暗部撮影に対応 -

HOTSHOT#8
中尾 正人(撮影)/ 石川 真吾(DIT)

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中尾正人(撮影)
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石川真吾(DIT)
松竹ブロードキャスティングによる、作家主義、俳優発掘を掲げて開始した「松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト」の6作目、「鈴木家の嘘」が11月16日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開される。
松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクトは、松竹ブロードキャスティングが、作家性のある映画監督、脚本家による映画製作を支援し、新人の俳優を発掘することを目的に開始した。これまでに、沖田修一監督作「滝を見にいく」、橋口亮輔監督作「恋人たち」など5作品が発表されている。「鈴木家の嘘」では、野尻克己氏が、自らの経験を元に脚本を手掛ける初監督作品となる。野尻氏は、「恋人たち」「舟を編む」「セトウツミ」「テルマエロマエ」など、数々の作品で助監督を務めた実績を持つ。

「鈴木家の嘘」は、引きこもりの長男が自殺した鈴木家の家族の物語。キャストには、岸部一徳、原日出子、加瀬亮、岸本加世子、大森南朋などベテラン実力俳優が並ぶ。また、400人の候補者からワークショップを経て、新人女優・木竜麻生が選ばれた。
撮影の中尾正人氏とDITの石川真吾氏に話を聞いた。
中尾氏は、劇場映画、Vシネ、テレビ番組ドラマなどの撮影を長年手掛けてきた実績を持ち、フィルムカメラの撮影経験も持つ。石川氏はDIT、編集、助監督など、映画製作の技術サポートを長年担当。両氏とも、これまで野尻氏が助監督として参加した作品で多くの仕事をしてきた、いわば「野尻組」。野尻監督の過去作Vシネの撮影も中尾氏が担当してきた。ロケは、3月13日から4月8日までのほぼ1カ月。ストーリーの関係上、8割が「鈴木家」の屋内で撮影されたという。メインカメラにはVARICAM LT、サブカメラにはVARICAM 35とDC-GH5Sを用いている。
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メインカメラにVARICAM LT、サブカメラにはVARICAM 35とDC-GH5S

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中尾:予算的なこともありましたが、メインカメラには当初からVARICAM LTしか考えていませんでした。決め手はやはりデュアルネイティブISOですね。狭い空間だったため暗部撮影も多く、あらかじめISO5000ベースで撮影していきました。VARICAM 35も考えたのですが、家の狭いところにカメラが入っていくことがけっこうあったので、LTをメインに選び、数カ所だけVARICAM 35でも撮影しています。DC-GH5Sは撮影に入る前に購入したんですが、これも同じ色味なのでもっと狭い、車内の撮影などに使いました。
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大学の体育館で新体操をするシーンがあるんですが、体育館の水銀灯を全部消して 6Kのライトを3台借りて、体育館の外からあてて撮りました。ほとんどフレアが入らないで、ISO5000対応のカメラで良かったなと思いました。あと、最も重要なシーンで、病院で家族が初めて母親に嘘をつくシーンがあるのですが、ここは、テイクを重ねるよりも、フレッシュなリアクションを撮りたいということもあり、BカメにVARICAM 35を用いています。

SDカードのプロキシ映像で即座に監督チェック

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中尾:映画の中でも最も大変だった撮影は、車座になっている複数の役者を、円形レールで撮っていくシーンでした。役者の会話を順番に撮っていんですが、カメラを下に振りたいんだけど、どうしてもレールがばれちゃうんですよね。ドリーを操作するシーンでは、VARICAM LTのコントロール・パネルに撮影中の映像を表示する機能が役立ちました。本体のコントロール・パネルに映像を表示し、その映像を見ながらドリーを操作したので、タイミングはばっちりでした。コンパネも含め、周辺機材を外せるので、カメラ本体を小さい状態にして撮ることができた点も、フレキシブルですごく良かったですね。また、SDカードにH.264のプロキシ映像を記録できる点も、現場の映像をすぐ観たいと言われたときの対応がすぐ出来るのでとても役立ちました。

ルックは「ヨーロッパ映画調」

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中尾:とにかくやわらかいルックを作りたかったので、ライカのズミクロンを選びました。ぼけあしが独特で、雰囲気が他のレンズと全然違う。いい質感が出ていて、想像以上にいいマッチングでしたね。フィルターにはブラックサテンの2番目に薄いやつを使っています。ハイライトがふわーっとするところとか、にじむところにサテン効果が出ていますね。

石川:今回のルックの設定を「ヨーロッパ映画調」にしました。自殺というテーマなので、あまり軽薄でないルックで、と思いましたが、結構笑わせるシーンもあるんです。そこで、プロデューサーとも相談し、アメリカ映画ですがヨーロッパ調なカラーの「ジュノ」(2007年公開、フォックス・サーチライト)という映画のルックを目指してみました。また他のメーカーのカメラテストもしたんですが、私が考えているヨーロッパのフィルム調のルックに近いのがVARICAMでした。LUTはRocketStock.comの35 Free LUTs のClouseau 54.CUBE というものをベースに、オリジナルのものを作りました。実際の鈴木家のロケセットで木竜麻生さんに来てもらってテスト撮影をしました。イマジカのカラリスト、北山氏がDaVinvi ResolveでLUTを調整しました。大画面のスクリーンで映写すると少し柔らかすぎたので、暗部を締めて、全体を少しY方向に転ばせてています。最初から最後までそのLUTひとつで撮影をしたので、オンセットでのグレーディングはほとんどありませんでした。最終的なグレーディングでも、LUTを当てた現場モニターの絵からほとんど変えてません。現場とポストで統一的なワンルックで仕上げることができてよかったです。

4K収録、2K編集、ダビンチでDCPサイズにトリミング

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石川:4K 4:2:2 AVC-Intraで本体収録しています。MACで取り込んでDaVinciで落とし込んだ2K ProRes4444をつくり、それがもうマスターです。1998×1124というDCPの映写サイズにトリミングしています。オフラインはProRes L Tです。長回しで何テイクも撮ったので、容量が大変なことになりました。通常2時間の映画だと撮影素材は、6〜8時間ぐらいなんですが、今回は24時間分もあったんです(笑)、あらかじめ用意していた2TB、4TBの2つのHDDでは足りず、自腹で買い足しました。

フィルム調のグレイン追加

石川:フィルムのテイストを加えるため、エフェクトとしてグレインを加えています。「室内はだいたいISO2500でとってます。屋外ではノイズ感がめだたないので、ノイズリダクションはかけていません。ハイスピードはダビンチのノイズリダクションをかけています。それにFilmconvertというプラグインで35ミリ風のグレインを足して、フィルムのテイストを加えています。これでよりねらいに近い質感になりました。

見えないところを想像させる

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石川:ここに来てフルサイズセンサーのカメラがたくさん登場していますが、 世の中が高精細の方向にいくと、想像力を及ぼす範囲が狭くなっていくのではと感じますね。下町の人情や、家族のドラマを見せるのに、そこまで必要なのかと。見えてないところを想像させるという、そういう意味でグレインを足したという思いはありますね。監督もそのルックを気に入ってくれました。

©松竹ブロードキャスティング