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「ほんもの」という日本らしさ

石川幸宏 / HOTSHOT編集長

UP

本年9月28日から公開になる、木村大作監督・撮影の最新作「散り椿」の試写を見せて頂き、久しぶりに’正しい日本映画’’美しい時代劇’を観た!と感じた。かつて世界を驚かせ、世界で評価されてきた黒澤明、小津安二郎などの昭和の日本を代表する名監督が作り上げた日本映画の世界。いま一度、その評価や賞賛の根底にあったものとは何だろう?とふと考えさせられた。
木村大作氏は、言わずと知れた日本映画界が誇る映画キャメラマンである。黒澤明監督の撮影助手として「隠し砦の三悪人」から「どですかでん」まで1960年代の黒澤作品に関わり、優れたフォーカスマンとしての技術でその存在を示した。その後も高倉健の主演作を中心に「八甲田山」「復活の日」「鉄道員(ぽっぽや)」「単騎、千里を走る。」、また「極道の妻たち」シリーズなどの日本映画の代表作、近作では「北のカナリアたち」「追憶」など、いまだ日本映画界トップとして活躍されている。大自然の撮影など圧倒的な’ほんもの’へのこだわりと、多くの大女優からもご指名がかかる、絶妙なフレーミングや現場の空気感や佇まいを撮る表現など、まさに日本映画撮影界の頂点に立つ存在だ。今作でもその技の妙は全編に観ることができる。
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話は変わるが、以前パリで活躍するある知人と、日本語で言うところの’ほんもの’という言葉に当てはまる単語が英語を含め海外の言葉にはない、という話をした。’ほんもの’は単にクオリティーやトラディショナルとは明らかに違う。その言葉で現されるものの中に、日本古来からの伝統が育んできた精神性とそこから生まれる様式美、それを支える職人技のこだわり、そして更に進化した革新性などが含まれている。’ほんもの’はそれらを包括する言葉であり、日本の良いものとされるものには、必ずと言っていいほど’ほんもの’が備わっている。そしてこれこそが次の時代に日本が文化として伝えていく重要な要素なのではないか?と同調した記憶がある。
映像・映画の世界でも、まさにそのことがいま問われているのではないか?

よく予算がないとかものが足りないとかで’ほんもの’をあきらめている現場も多いとされるが、その時点でそもそも創造者ではなく単なる雇われ労務者だと思う。かつての日本映画にはその’ほんもの’にこだわる熱意と創造力があったように思う。「散り椿」は映画から解き放たれる圧倒的な映像力と秀逸な演技、そして大自然の美しさや怖さ、それが相まって画からにじみ出る佇まいというものが溢れていて、’ほんもの’へのこだわりが随所に観られる。そしてその佇まいは、なんとも日本人として忘れることのできない心象として残る。まさにそこにあった’ほんもの’感こそが、かつての日本映画の’日本らしさ’に繋がっていたのではないだろうか?と感じたのである。

今号の特集は、その木村大作監督へのスペシャルインタビューだが、まさにその内容はどこまでも’ほんもの’にこだわる姿勢であった。その真意をお伝えしたく、余計な言葉は省いていくつかのキーワードから、あえて木村氏の言葉を抽出して、木村語録としてそのまま掲載した。
日本映画が世界に評価されていた時代から活躍し、いまもって撮影という世界のトップに立つキャメラマンは、どんな姿勢で映画撮影に臨んでいるのか?そして監督作3作目となる最新作「散り椿」を通じて表現したかったものとは何か?さらに日本映画界と映画、そして黒澤明監督への愛について大いに語って頂いているので、この機会にぜひ楽しんで精読して頂きたい。