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One Point of View #3

- 2.5D、フル、リミテッド… アニメーション制作の 新たな挑戦から学ぶこと -

林和哉 / DIRECTOR・TECHNICAL SUPERVISOR

UP

世界を相手に成功を収めているジャパンアニメーション。 昔は手描き表現で研ぎ澄まされた様式美を生み出し、それをさらに洗練させてきました。 1995年、ピクサーの「トイ・ストーリー」の公開によって、フルCGでのアニメーションが世界を席巻。その後のピクサーの快進撃はご承知の通りです。 3DCGアニメーションは、実撮影と同じ条件で演出と配置を考える必要があり、デフォルメや騙し絵のような形でダイナミックさを表現する2Dアニメーションのような表現が難しくなる傾向があります。 2Dアニメーションで培ったノウハウ、ケレン味を活かせないことが、なかなか日本でフル3DCGアニメーションが育ちにくい要因の1つかもしれません。 その代わり、3DCGアニメーションをセル画調にレンダリングし、2Dの背景とコンポジットするという「2.5D」という表現方法が開拓されてきました。 手描きのアニメーションでは難しいカメラワークも3D空間では現実以上に容易です。作品にダイナミズムを与えることができること、モデリングされたデータなのでキャラクターのスタイル・表情の一貫性が担保できること。工夫により作画よりも日数を短く1カットを仕上げることができること等。 とはいえ熟練のアニメーターと、経験の浅い3DCGアニメーターとでは、クオリティに差が出ることも大いにあります。

「スナックワールド」での挑戦

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「スナックワールド」の公式サイトはこちら

2017年春、チャレンジングな新アニメーションが放送開始になりました。 テレビ東京系で毎週木曜日19:25に放送されている 「スナックワールド」 というフル3DCGのアニメーション作品です。1話30分枠×1年間の作品で、そのチャレンジは、フルアニメーション(※1)でありながら、リミテッドアニメーション(※1)で培ったケレン味、ダイナミズムを表現する、というものです。 そして2018年3月には、VFX-JAPAN AWARD 2018ではテレビ番組アニメCG部門では優秀賞を獲得しました。滑らかに動く髪の毛に対し、登場人物の口の動きやモーションはリミテッドのようにコマ抜きされたような動き。 パイロット版では相当リミテッドな動きをしていたキャラクターを、年間放送に合わせてアニメーターの粒を揃えるために、フルアニメーションの動きの中でそのテイストを出すという、バランスをとった制作体制が作られました。

筆者も数話のエピソードの演出で参加(※2)、多くの経験をさせてもらいました。実写映像に対してアニメーションが独自の時間解像感覚を持っていること、私はその感覚が実写にも何か新しいものを吹き込むのではないか、と考えています。

※1 フルアニメーションとは、24fpsであれば全てのフレームが動いているもの。 リミテッドアニメーションは、24fpsの中にあって、12〜18fpsなどのように、コマを抜いて表現しているもの。 フルに対してリミテッドは手描きの枚数を減らせることからも重宝され、そのコマ間の移動量でダイナミズムを表現が可能。
※2(2話、5話、8話、11話、14話、17話、20話、26話、31話、41話)

原画とタメ・ツメ

アニメーションには、映像表現上、重要な要素があります。 それは「原画」と「タメ・ツメ」です。
原画とは、そのカットの中でキャラクターの心理的・身体的状態を伝えるために一番適したポーズ(シルエット)とその中間のポーズが描かれているものです。
動画は、その原画の線を拾って、原画と原画の間のフレームが描かれているものです。中割ともいいます。
これはMPEGの考え方と似ていますね。キーフレームを作り、キーフレーム間の絵を差分として用意する。キーフレームが開きすぎるとなんだかわからなくなりそうですよね。
アニメーションでもそれは同じで、原画の枚数が少ないと、その間の動画が迷ってしまい、原画の線も拾えなくなり、曖昧な絵になっていってしまいます。
特に日本ではカット毎にアニメーターが変わるので、キャラクターの統一やアニメーションのクオリティを一定にするためにも原画が非常に重要なのですね。
原画のクオリティも沢山の人が原画を担当しますので、その品質を担保する作画監督が立っています。相当な経験と技量のある人がその役職についています。
原画は、絵であるが故に一見してそのキャラクターの状態が分かるシルエットが望ましいとされます。類型でなく典型。「こんな感じ」ではなく「こう」、という明快さ。そのために大いにデフォルメもされます。
ただそこにアーティストとしてのクリエイティビティを発揮しないとステレオタイプとなり、何処かで見たことがあるなぁ?、という事にもなりかねません。
様式美として認知されるようになった表現、例えば「とある人物が、アゴを上げることでメガネ越しの目がレンズの反射光で見えなくなり、レンズが発光していることで強い決意を感じさせる」、などは新しい可能性も探りながらドンドン使うべきです。

これは実写の演技にも繋がります。
何か決まり切らない演技があった場合、往々にしてこの原画としての重要な一瞬が上手く表現できていないことが多いと思います。
ただ、絵とは違い、典型的過ぎると強すぎる表現となって「クサい」と呼ばれてしまいそうなので、ほんの一瞬や目線の動き一つ、とてもソフトで分かるか分からないかくらいの表現をするなどの方法が模索されます。 上手い人は、殆ど動かずに、瞬き一つで全てを表現したりします。

タメ・ツメ

これぞダイナミズムを生む出す魔法です。 それぞれ動きを溜める、動きを詰めるの意味です。 砲丸を投げるとき、スタートの原画から力を溜める部分に6フレーム使い、投げる部分を3フレームとします。
この、細かくフレームを使うことをタメる(溜める)、動きを速く見せるところをツメる(詰める)といいます。 フルアニメーションよりもリミテッドアニメーションの方が、より効果を見て取ることができるでしょう。メリハリを付けるために大事にな要素です。

現在のアニメの制作工程

映像制作に携わる方でも専門でないとアニメーションの制作工程を知る機会はそれほど多くありません。ここでは現在のアニメーションのできあがる工程を見ていきましょう。
いろんな制作スタイルがあるので、全くこの通りでないこともあるかと思いますが、概要をお話します。

準備段階

シナリオが上がり、それを元に監督やコンテマンが絵コンテを作ります。
そのコンテに合わせて背景が描かれていきます。
2Dの場合、この段階でカメラアングルやキャラの位置を厳密に検討してレイアウト決定します。何故なら、それに合わせて背景画を完成させるため、変更が発生すると多大なる時間ロスになるからです。
3Dの場合、アセットとして、大道具の建て込みのように舞台を作ります。
プロップとして小道具や美術周りを作成します。
それと並行して、キャラクターアニメーションの準備が始まります。

2Dの場合
キャラクターデザインを元に、作画監督がアニメーターが動かしやすいように、キャラクターを表現している線を整理していきます。原作ものだと、止め絵としてみるとかっこよくても、動かすときにはとても難しいラインや書き込みがあったりするので、それを動かせるように修正、省略するのです。

3Dの場合
3Dモデルが作成され(モデリング)、その中にリグ(スケルトン(骨格)とその周りのポリゴンに作用するさまざまなスクリプトの集合体)を組み込んでいきます(リギング / セットアップ)。スクリプトで組まれたコントローラーを操作することで、キャラクターを容易に動かせるようにする重要な工程です。
大人数のアニメーターが動き出す前に、じっくりと時間をかけてこれまでの工程を行うことで、あとのアニメーション作業の効率化とクオリティアップのためのトライが多く行うことができるのですね。
準備が大事なのは実写映像も同じです。
早い段階で、コンテを撮影してアニメーションの実尺と同じように時間軸並べたコンテ撮を用意し、声優さんの演技を事前に撮るプレスコを撮る場合があります。
3DCGの場合は特に、リップシンクも3DCGソフトウェア内で取るために、その傾向がほとんどのようです。
3DCGの場合、モデル、プロップ、セットアセットが揃ってからレイアウトをはじめます。コンテに書かれたイメージに沿って、配置していきます。このとき、レンズのミリ数はとても重要な要素になります。
とにかく、実写よりも被写体の歪曲がよく分かります。2Dでは、すごいワイドの絵でも、鼻先と目と眉間の距離が望遠レンズで撮った様に均整の取れた様に見せられますが、3Dはキャラクターモデルを撮影する形ですから、ワイドで撮れば、目と目の距離も開いてきますし、頬の丸みも誇張されたり、画面端ではスマートになったりします。

アニメーション

アニメーターがどんどんアニメーションを付けていきます。
演出は、レイアウトチェックを通したものをアニメーターに進行させて、それをチェックしていきます。
演技が想定と違う場合、細かく指示を出し、そして再チェックします。
アニメーターが役者であり、それに指示を出して演技を固めて行くのが演出の仕事ですね。

尺編集

でき上がったカットをコンテ撮(アニマティクス)のタイムラインに並べ、最終的に間の悪いところを切り、放送尺などの定尺を出します。
2Dではまだこの段階では行われず、アフレコ前に行われます。
オフライン上がり、みたいな印象でしょうか。

ライティング(2Dでいうところの色指定と仕上げ)

でき上がったアニメーションとレイアウトにライトを足して、レンダリングをします。実写でいうところの本撮影という所でしょうか。
この工程はすごく時間が掛かります。ものすごいポリゴン数ですから、1枚に8時間〜丸1日以上掛かることがあります。1台のPCでは1秒上げるのに24日以上?…そこは大丈夫です。レンダーファームの大量のPCが並行で処理して、24台でやれば1日で1秒分が終わります。
ということで、これ以降、大幅な変更はしないようにします。(でも、たまにありますが!)

エフェクト(特殊効果)/ コンポジション(撮影)

3DCGでは表現しきれなかった光学効果や、ちょっとした重ね処理などをここで行います。2.5Dは、ここがキモになりますね。
正に実写でいうところの本編です。

あとは音響効果を入れていき、MA(サウンド調整)して完成が3DCG、このあとにアフレコを行うのが2D、という流れです。

ざっと見てきましたが、アニメーションは実写の方法論と平面絵の方法論の良いところを集めて制作されていることが何となく感じていただけたのではないでしょうか。
実写もアニメーションの表現や手法から新しい可能性を見いだすことができると思います。
いまさらながら映画「マトリックス」はそれを高次元で体現した名作だと思います。

何も派手ななCGを使わなくても演出手法としての原画的考え方、タメ・ツメの考え方も参考になると思います。 どちらも満遍なく触れてみて欲しいと思います。

©LEVEL-5/スナックワールドプロジェク卜・テレビ東京