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デュアルネイティブISOは、低予算映画の武器になる!

- 「SR サイタマノラッパー ~マイクの細道~」 -

HOTSHOT Edit Dep.

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劇場映画「SR サイタマノラッパー」(2009 年)は、日本大学芸術学部映画学科出身の入江悠の初監督作品。第19 回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得。等身大の自分たちの心情をラップに乗せたセリフとして語る独特の手法がじわじわと人気を博し、単館上映でも多くの立ち見客が出る話題作に。モントリオール・ヌーヴォ国際映画祭の招待上映に至るなど、多くの映画祭でも評判を呼び、2作目3作目まで映画化された人気作品だ。

2017年4月からテレビ東京系列の深夜枠で始まったドラマ版「SR サイタマノラッパー~マイクの細道~」は、初回作から10年が経った設定で、主人公のヒップホップグループ「SHO-GUNG」の三人が再起をかけてのイベントオファーに応えるべく、離れたメンバーを探しに東北を巡る旅に出ることになるが…
今回の撮影には、Panasonic VARICAM LTが使用された。レンズもスチル用のEFレンズを使用し、ロードムービーである機動性と照明機材に頼らない低照度での撮影が可能だ。テレビドラマでありながら、映画版のインディペンデントな作風を継承した、新たな面白さを切り取るその現場の模様を撮影の三村和弘氏に聞いた。

三村和弘

1980年、神奈川県生まれ。日本大学芸術学部映画学科撮影録音コース卒業。卒業後、「SR サイタマノラッパー」シリーズをはじめ、数々の映画やドラマ、プロモーションビデオ、ライブ等の撮影を担当。Lamp. K.K.所属。
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PHOTOGRAPHER: 高橋 ケンイチ

インディペンデント映画カメラの歴史を辿る

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「SRサイタマノラッパー」の撮影は、まさにインディペンデント映画のカメラの歴史を辿ってきました。学生の当時、僕はパナソニックのAG-DVX100A/B(SDのDVテープカメラ)が好きでよく使っていたのですが、入江監督と「SRサイタマノラッパー」で本格映画を撮るという話になって、知人の伝手でAG-HVX200(P2カード/HD)をお借りして「よし、HDで撮るぞ!」という感じで、第1作目を撮影しました。2 作目(2010 年)はソニーのPMW-EX3(=ファイルベース)で、3 作目(2012 年)はキヤノンのEOS 7D(=DSLR)で撮影しています。インディペンデント映画なので、その時期のトレンドなカメラを、何かしらの伝手を辿ってはお借りして撮影していましたね。

低予算作品に効果的なデュアルネイティブISO

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今回のプロダクションである、バスクの技術プロデューサーから、何か使いたいカメラはあるか?と聞かれ、即答で「VARICAM LT!」と答えましたよ(笑)。
僕は個人的にもAG-DVX100を使っていた時から、パナソニックのカメラのファンだったのです。ただ、ここ近年は大判センサーカメラが主流になってから、パナソニックのカメラを使う機会に恵まれませんでしたが、VARICAM 35が登場したときに、ISO感度が800と5000の2つがベース感度として選べる“デュアルネイティブISO”機能を見て、これは絶対に低予算映画の武器になる!と思ったんです。「SRサイタマノラッパー」のような低予算映画では、暗部撮影の際にも、なかなか照明機材や照明スタッフを用意できないなど、予算的スケジュール的にも色々と制限があります。でもこのベース感度が2つあるVARICAMなら、普段の撮影ではISO800で、暗所や低照度撮影ではISO5000であれば、暗部でも照明無しでも撮れるので、期待通りとても便利でした。

ワンシーン/ワンカット・スタイル

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10年の間で「SRサイタマノラッパー」の1、2作目を連続で撮って、そこから3年くらいの期間を経て3作目を撮ったのですが、さらにそこから5年経ってから今回のドラマを撮ろうという話が持ち上がりました。今回のドラマ版は全11話で、青森から岩手・遠野〜福島〜赤羽、そしてイベント会場である神奈川県の川崎を目指し、最後また埼玉に戻るという内容です。本作の撮影の特徴として、ワンシーン/ワンカットというスタイルが確立されています。ラップのシーンを扱う中で、通常ラップのPVなどでは音楽に合わせてカットを割っていき、カッコ良く見せます。でもSRサイタマノラッパーという作品は、そもそもカッコいいという作品ではないですし、(登場人物の)痛々しさをその場で表現するためワンシーン/ワンカットで撮影してきたことが、結果としてこの作品のフォーマットになりました。これは良い意味で演者を追い込むというか、現場の緊張感を生むという意味でも良かったです。でもそこで難しくなってくるのは尺の調整ですね。映画版でもかなりカットしてる部分はありましたが、特にテレビドラマでは尺が決まっているので、その辺を考えなくてはいけません。でも現場では、なるべくそのスタイルを貫きたかったので、結果オンエアでは、CM明けから次のCMまでワンシーン/ワンカットなんていうのもありました(笑)。

ベース感度 ISO5000から、4000/3200に減感

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今回の撮影では基本は1台のVARICAM LTで廻していて、川崎のクラブチッタの撮影の時だけは2台で廻しています。VARICAM LTはメーカーさんの話ではあえてカメラ内では無理なノイズ除去処理はしていないと聞いています。実際に僕も含めて、そのノイズ感がフィルムグレイン風で好きだと言うユーザーの意見も多いようですね。

今回は暗部撮影でも実際はIS05000を多用していますが、ISO5000で撮影したというよりも、ベース感度 ISO5000の設定から減感して、ISO4000もしくはISO3200に設定し、暗部の階調を少しでも残すという方法で撮影しています。少しでも照明で補助できる室内やナイターシーンでは、ノイズを減らすという意味においてもほぼISO4000、ISO3200で撮っていました。VARICAMシリーズのデュアルネイティブISOに関しては、まだその機能が正確に現場へ浸透していないようです。これまでのカメラのように、単にISO5000まで上がるという意味ではなく、あくまでネイティブのベース感度がISO5000を選択でき、5000からの減感で3200なり4000が選べるカメラというのは、これまでに無かったカメラです。そこを考慮すれば現場からポストで色々な調整ができます。カメラを選ぶ段階でプロデューサーなどへもこの機能が浸透すれば、もっと利用範囲が拡がるのでないでしょうか?

多種のオリジナルLUTで対応

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レンズは今回ほとんどスチル用のEFマウントのレンズを使用しています。作品的にも広く全体を捉えるようなフレーミングが多い作品なので、ワイドから標準までをカバーできるタムロンの24-70mmレンズを多用しています。また今後の4K配信を考えて、収録もAVC-Intra4K収録、V-Log収録による4K仕上げでした。今回はLog〜グレーディングの段階で、4Kでのテレビドラマのワークフローが、まだポスト作業でも完全に確立されていない中、現場では僕が作った多数のLUTを持ち込んで、最終的にRec.709でも簡単に調整ができるような工夫をしました。

自分にとってパナソニックのカメラルックがなぜ好みなのか?理由は自身でもよく分かりませんが、どこか自分の記憶色に近いというか、あまりドラマチックになりすぎず、他のシネマカメラと比べて着色の方法も嫌みが無いのが良いですね。

「SRサイタマノラッパー 〜マイクの細道〜」

http://www.tv-tokyo.co.jp/sr/

写真:『SR サイタマノラッパー』シリーズの映画版三部作およびドラマでラップ監修・指導を務めるP.O.Pの新曲”FRESHにSTEP”のMV撮影現場から(こちらもVARICAM LTで撮影)