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Panasonic LUMIX S1H × 撮影現場 vol.8 撮影監督田中一成 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

 

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Profile:
田中一成(たなか かずしげ):撮影監督(J.S.C.)/  東京芸術大学大学院 教授
映画『探偵はBarにいる』シリーズをはじめ、三池崇史監督『Dead or Alive 2逃亡者』、『Dead or Alive Final』、『極道恐怖大劇場 牛頭GOZU』、『ゼブラーマン』、『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』、宮藤官九郎監督『少年メリケンサック』『中学生円山』 など。TVドラマでは『鼠、江戸を疾る1,2』(NHK,『東京スカーレット』(TBS)、『スカイハイー2』(TV朝日)、他、Vシネマ多数がある。
日本映画撮影監督協会(JSC)理事。20184月より東京藝術大学 大学院映像研究科 映画専攻・撮影照明領域教授に就任。

Q:今回、LUMIX S1Hを東京藝術大学大学院での授業課題の作品撮影で使って頂きました。いま大学院ではどういったことをされていますか?

田中:2018年4月より東京藝術大学 大学院映像研究科の映画専攻で、プロデューサー、監督、脚本、撮影、美術、サウンドデザイン、編集など映画の専門分野に分かれている中で、僕は撮影・照明ゼミを担当して教えています。
現在生徒数は二年生が4名と一年生が7人、そして研究生が1人、という構成で合計12人を教えています。
基本的には監督ゼミの学生が演出する作品の撮影に関わります。
監督が4人ですから、それに合わせて各領域から4班体制で作品を担当し、撮影領域からも
を4人がキャメラマンとして担当していきます。
その他に撮影ゼミの中で、監督、撮影、録音、編集などを自分達でやっていくような授業も行なっています。

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Q:今回、学生の作品を撮るにあたって、LUMIX S1Hを使用されたということですね。

田中:今回は撮影照明ゼミの企画で「積累」という短編の作品で撮影に使用してみました。
横浜市内でのロケ2日間で撮った作品です。
機材構成は、学校で所有しているシネマカメラ(ソニーF5)と、LUMIX S1Hの2台体制で常時撮っていきました。
引きと寄りという使い方も有りましたが、どっちかと言うと、挟み撃ちに近い撮り方をしてみました。
ある時はソニーF5がメインで、ある時はS1Hがメインとなるような撮り方です。

 

Q:実際の撮影で、学生さんがセッティングなどもされたんですか。

田中:そうですね、一番の狙いどころはやっぱり画づくりだったので、基本的にポジションとサイズ、ライティング、露出など、撮影に関わることは大体その撮影の中で、学生が画作りをしたものに私が意見を言いながら撮っていくっていう形で撮影していきました。

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Q:実際、S1Hのファーストインプレッション、手に取った感想はいかがでしたか?

田中:LUMIX S1Hの一番大きい要素というのは、機動性がある中で非常にスペックが高いというのが、僕の印象ですね。
今までのこうしたサイズのカメラでは、機動性はあっても映像のディテールが弱いことが多かった。このカメラに限って言えば十分メインのカメラと同時に使っても遜色ないと思います。
むしろ暗部の出方は、Logの使い方にもよりますが、このカメラは非常に暗部の腰があるという印象でした。

 

Q:これまでもデジタル一眼型のカメラを使われていると思いますが、それらと比べて、違いはありましたか?

田中:一番は手ブレ補正機能が他のカメラよりは良いかなという印象は持ちましたね。
先程も言ったように機動性というのは、この手ブレ補正機能を含めたことです。
例えば、銀座の街中で、三脚が使えないようなところで芝居を撮らなくちゃいけないようなときには、このカメラをメインにすれば充分撮影できるんじゃないかな、という印象を持ちました。
小型カメラだとどうしても画が安定しないということもあって、ジンバルを付けたりとかいうこともあると思います。
でもLUMIX S1Hであれば、5軸の手ブレ補正機能がとても優秀で、さらにカメラ自体がそれなりに重量がある。
デジタル一眼にしては少し重めだと思いますが、僕はそんなには重いという印象はないです。
普段はもっと大きくて重いやつを使ってるんで(笑)。
むしろ、レンズが普段使っているマニュアルのシネマレンズと、AFがついたLマウントレンズの操作
の違いが大きく、そこは戸惑いみたいなものはあったんですが、それは慣れれば行けるかなという気がしますね。

 

Q:デュアルネイティブISOなどの機能を持っていますが、これらの特性は、画作りにどう関係しそうですか?

田中:V-Log使用時のベース感度が、ISO640とISO4000で、今回は両方の感度特性チャートを波形で確認しながらテストしたんですが、ダイナミックレンジ的にもS/N的にも両方ともあまり変わらないんですね。
むしろ、もっと感度を上げて、例えばISO8000とかまで上げていってもISO640のときと、ノイズの出方などもあまり変わらないし、非常に(感度耐性が)強いなという印象でしたね。

Q:テストの映像から見えてきたことはありますか?

田中:画づくりにおいて、今回V-Logを使ったんですけど、暗部の出方とかハイライトの出方が非常にオーソドックスに造られていて、基本的な点を押さえてるなと感じました。
僕達がフィルムの時から非常に気にしてる暗部の出方、潰れ方、ハイライトの飛び方っていうところは、まだデジタル的な感じはあって、特にハイライト部分ではもうちょっと工夫できるかな、っていう印象もあったんですが、暗部特性については、波形を見ながら無理やり押し込んでいっても、なかなか潰れないっていう良さがありましたね。
一番の特徴はその暗部階調の良さでしょう。
基本的に、潰れないということはライトを当てなくてもディテールが出せるということですから、非常に低予算な作品で、時間的にもライティングしている時間もない、もしくは出来ないような条件の時に使うと、非常に力を発揮するのではないかなと思いましたね。

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Q:テストして頂いた比較映像の中で、特に見えてきたポイントはありますか?

田中:暗部のディテールの良さは波形で見ても非常に優れたところがあるんですけど、実際に人物や芝居を撮った時の印象は、暗いところでも色再現が良かったなと思いました。
今回、特に2カメ体制で撮ってみて、ラッシュで同じシーンを比較しながら見たのですが、その時に暗部の出方が、色的にも階調的にも非常に良かったなっていうのが強い印象ですね。

Q:今回2台体制の違うカメラで、どのようなLUT(Look Up Table)を使われたのですか?

田中:LUTについては学生が、LUMIX S1HとソニーF5と両社のLogカーブに違いが有ることを考慮して中間のLUTを作りました。
両社の違いを完全に修正するまで追い込めなかったので、編集段階ではLUMIX S1Hで撮影したカットのほうが暗部が出ているので、カメラの違いを揃えるため暗部を締める方向です。最終的にはまだ完成はしてないですけど、完成に向けては、そのようにするつもりです。

Q:現行のデジタルカメラについて、何か感じていることはありますか?

田中:いま世界の画づくりのトレンドが、暗部階調よりもハイライトの階調に移行してきていると思います。
一方でデジタルカメラの進化は、暗部の階調はだんだん良くなってきたんですが、ハイライト部分の階調表現ではまだフィルムの方が優秀だと思うんです。
今後はデジタルカメラがもっとハイライトの階調が表現できるようになれば、理想的だと思っています。
あと今、各カメラメーカーが画素数(高解像度)を追いかけてるんですけど、不必要にシャープになって来ている。
映像表現では、シャープであれば良いといった面だけではなくソフトが良い時もあると思う。
だからシャープすぎて、それが嫌いだっていう面も出てくるんですよね。
最近は古いCookeのレンズだとか、キヤノンのK-35のようなオールドレンズが好まれてるっていうのは、デジタルのシャープネスを嫌う人たちがいるからだと思うんです。
今後は、画素数や画素の大きさを変えられるようなセンサー技術が出てきたらいいなと思いますね。今はレンズやフィルターを選ぶことでしか対処できないけど、それが出来て、もっとハイライトの階調表現ができたら、初めてフィルムを超えられるかな、っていう気がしますね。

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Q:S1Hはダイナミックレンジが非常に広いという印象はみなさんお持ちで、そこの評価が高いのですが、ダイナミックレンジについての評価はございますか?

田中:ダイナミックレンジが広いのに越したことはないですし、ちゃんとしたライティングをできない状況で非常に力を発揮すると思うんですよ。
しかしどんな作品でもダイナミックレンジが広いのが良いのか?というと、一概にそうとは言えないんですよね。
広いダイナミックレンジを活かそうとすると画がフラットになりますから。
向いた作品、向いた撮り方によっては非常に使いようがあるかな、とは思います。作品も機材を選びますし、その辺の、何が良いのかというのは、最終的には表現する人が考えていけばいいのかなと思います。

Q:レンズについてはいかがでしょうか?

田中:(動画作品を撮る場合)僕はあまりF1.2の必要性はないかなと思っています。
映画を撮る場合、開放で使うことはあまり無いし、登場人物が複数の場合には一人以外はピントがボケて気になるし、T2.1でも十分なので。
特に今はカメラの解像度が上がり画面がシャープになってきてるので、個人的にシャープな画はそんなに好きではないっていうのもありますね。
自分で買うなら、やっぱT1.4でも充分かなという気もし
ます。
レンズは、ボケ足がレンズの良さを左右しますよね。
今回試したパナソニック純正のLマウントレンズは、ボケ足も非常に柔らかかったですね。使い易いと言うか、人物のアップ、特に女性のアップを撮る時、背景がシャープなボケだと、どうしても女性の印象が硬くなっちゃうので、やっぱりボケ足が柔らかい方がいいです。あと夜の撮影になると、どうしても光源があると絞りの形が出てきたりするんですけど、完全に真ん丸が一番理想的で、まだそこまでではなかったなっていう印象ですが、これも徐々に改良されると思っています。
この辺は、このクラスのシネレンズの開発は
まだまだこれからだと思うので、その辺も合わせて考えても、このLUMIX S1Hは非常に可能性を持ったカメラだと思いました。

Q:その他、S1Hの長所、気づいた点はありますか?

田中:色の出方はサチュレーションも、すごくいいですよね。
自然というか、非常に良く感じました、またデータ表示はわかりやすかったですね。色温度なんかもすぐ出るし、シャッター開角度なんかも、文字が大きくて見やすかったりするので、その辺は非常に使いやすかった。
バッテリーも他社のデジタル一眼系カメラよりは持ちも良かったかな?
気づいた点としては、外部モニターを繋いだ時の、HDMIからの出力遅延がかなりあったこと。ここは早急に改善してほしい点ですね。
また理想を言えば、動画撮影時の感度を、V-Logを使った時でもISO640より下げられるようになると良いですね。
もうー絞り
開けられるとか、フィルム撮影の場合、昔あったISO50のコダックのフィルムが非常に良かったんですよ。
(画質は)硬かったんだけどフィルム自体の良さもあったし、昼光のオープン(屋外)撮影でも絞りを開けて使えたんです。
オープンだとやっぱりISO640あたりだと、絞りを絞らなくちゃいけないし、NDフィルターかませたり、シャッタースピードを速くしなければいけなくなるんですけど、シャッタースピードは動画の場合、流れ
ていった方がいい場合ってのが非常に多い訳ですよね。
だからそういう場合にISOがもっと低く設定できれば、NDフィルター無しでも使えるだろうし理想的にはISO100ぐらいまでは欲しいかなと。あとメニューはもう少しシンプルで選びやすい方がいいですね。
LUMIX S1Hはパナソニックという日本メーカー製なので、開発の方ともっと直接話ができる機会があると良いですね。
メジャーな海外のシネマカメラメーカーはおそらく外国のキャメラマンと結構話してると思うんですよ。
プロ用の機種っていうのはメーカーが作るだけでは成立しない。
使い手と開発側が意志疎通をしながら製品を作っていく、そういう体制をとっていかない限りは、
やっぱり進歩していかないと思うんですよね。さらにデジタルはその継続がとても大事で、僕らはこうした新しいデジタル技術を常に勉強しなくちゃいけない立場なので、カメラメーカーが開発を止めて途中で一旦途切れてしまうと、そのメーカーのまた新たな技術を勉強しようっていう気が起こらなくなっちゃうんですよ。
どこまでコミュニケーションを取れるか、そしてそれを継続しないと、お互いが進歩していけないのかなと思っています。

Vol.1 シネマミラーレスカメラ、LUMIX S1Hの可能性
Vol.2 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part1
Vol.3 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part2
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Vol.5 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part1
Vol.6 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part2
Vol.7 三本木久城 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.8 田中一成氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

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