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Panasonic LUMIX S1H × 撮影現場 vol.7 撮影監督三本木久城 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

 

三本木07

Profile
三本木久城(さんぼんぎ ひさき):撮影監督  J.S.C.
1970年生まれ。CM、PVなどの撮影を手がけ、大林宣彦監督作品でデジタル撮影/編集になった「この空の花 長岡花火物語」(2011年)から大林組に参加。
その後「野のなななのか」(2014年)、「花筐/HANAGATAMI」(2017年・JSC 三浦賞受賞)で全て撮影、編集を担当。
大林監督の179分の最新超大作「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」(2020年4月公開)では、2018年夏の撮影から、その後約1年以上に及ぶ編集作業も全て担当。

しっくり来たフルサイズ

Q:LUMIX S1H最初に触った印象は?

三本木:やはりフルサイズというところが、一番僕にはしっくり来たんですよね。
フィルム時代の一眼レフからずっと写真は撮ってきたんで、35mmフルサイズのミリ数と画角の関係が、僕の中で一番しっくり頭の中に入ってるんです。
28mm、50mm、85mmといった画角が全て、すんなり頭の中に入っています。
APS-Cや映画のスーパー35mmもそうですが、フルサイズ以外のセンサーサイズだと、やっぱり頭の中で変換しなきゃいけなかったのが、このフルサイズでそこから解放されました。
直感的にそのミリ数でいけるのがすごくしっくり来たので、そこが一番嬉しかったですね。
やっぱりフルサイズはいいなと。
スーパー35mmと比べて被写界深度など、見えてくる世界や雰囲気がかなり違います。
S1Hはフルサイズなりのボケ感も出しやすいですし、明るいレンズを使って絞りを開ければボケるし、絞り込めばパンフォーカスもできる。
被写界深度のコントロールも、やっぱり僕の中でフルサイズの方が広い方から浅い方までコントロールしやすいなっていう実感はありました。

三本木サンプル01

Q:ほとんどテスト撮影ではV-Log収録されたそうですが…

三本木:今回は動画機ということで、全てV-Logで、VARICAMとほぼ同じものが入ってると思いながら撮ったので、REC中でもV-Log設定にして、ファンクションボタンで随時V-LogとREC.709を切り替えられる設定にしたんです。
Logの画の出方、見え方と通常のREC.709の見え方を比較しながら撮っていって、このS1Hのダイナミックレンジの広さっていうのを改めて実感しました。
Logで見てる方が、下から上までどれだけ収まってるとかがよく分かるので、すごく安心して撮れましたね。
ハイライトで飛んでなければいいな、っていうところも、瞬時に飛んでない、収まってるとかが分かるので使いやすかったです。
家へ帰ってデータをPCに取り込んで、DaVinci ResolveでちょっとLUT当てて見てみると、なるほど、これだけ収まってるといじりがいがある画だな、という印象でした。
LUMIX S1Hは、とにかくダイナミックレンジの広さ、ハイライトが飛ばない安心感っていう部分が一番の特徴だと思います。デジタル一眼系のカメラでここまでダイナミックレンジがあるって、なかなか無いですよね。

確かな14+ストップの感触

三本木サンプル02

Q:実際にダイナミックレンジの広さを感じたところは?

三本木: ダイナミックレンジが実際に14+ストップあるのかというのは、今回詳しく計測した訳ではないのですが、撮影時に液晶で見た感じや、PCに撮り込んでデータを触ってみた感じだと、もう十分に広いなっていう感触は確かにありました。
今回は人物のモデル
使ったような撮り方、テストはできなかったですが、ぜひ室内でそういうカットを撮ってみたいなって思いましたね。
フルサイズの大判センサーでV-Logで撮れて、例えばそれを活かせる50mmのF1.4のレンズが付いていれば、ポートレートを撮っても、やっぱりハイの飛び方とかもボケ感とかも含めて、すごく美しい画が撮れるんじゃないかという予感はします。
今回のカメラテストでは、いつも僕がやっている、自宅近くの多摩川の川辺に行って、夕日に映えたキラキラした水面や落ちていく夕日とか、日が落ちた後の空の出方とか、だんだん暗くなって星が見えてくる時間帯に、その時の陸地と、空がどれだけ見えてるのかとか、そういったテストをやってみました。4K60Pがカメラ内収録で、更に10ビットが撮れる。これは凄いことだと思いましたね。他のデジタル一眼ムービーと比べても、このLUMIX S1Hは、圧倒的に良いと思います。まずLogで撮れるし、VARICAM的な撮り方でも内部収録できてしまうカメラなので、これで一本作品を撮ってみたいなっていう感触はありましたね。

 

Q:Lマウントレンズやその機能はいかがでしたか?

三本木:レンズの印象ですが、今回お借りしたLマウントレンズ(Panasonic 純正 50mm、24-70mm、SIGMA 20、24、35mm(2種)85mm、135mm)がどれも大きくて、スペック的にも物凄いレンズばかりだったので、ちょっとびっくりしました。
特にSIGMAの35mm F1.2 DG DNって凄いレンズですよね。
機能として気になったのは、動画撮影の際に、オートフォーカスに関してはレンズのメーカー問わず、動きがちょっともたつくかなという印象がありました。
逆にマニュアルフォーカスではとてもスムーズで、しかもピーキングエッジの信頼性がかなり高く、使いやすかったです。
撮影時は背面のモニターで見るよりも、ファインダーを覗きながら、一眼レフ的なスタイルでピンを送りながら撮るスタイルでも全く違和感なく撮影できました。
家に帰って画をチェックしましたが、マニュアルフォーカスでも全くピントを外してなかったですね。このフォーカスアシストがすごく優秀だと思いました。


手持ち撮影が楽しくなる

三本木手持ち

Q:手持ち撮影だと、手ブレ補正も効いてきますね?

三本木:この手ブレ補正機能も凄いです。本当にピタッと止まるので驚きました。
一眼スタイルで、脇を
締めて撮れば、本当にフィックスみたいに撮れちゃう。
僕は基本はジンバル等も使わず、手持ちの映像が好きなんで、S1Hの手
ブレ補正機能の素晴らしさは非常に気に入りました。
これでドキュメンタリー的な使い方も十分できると思います。29分59秒の壁も、もう無くなっているんで長回しもできますからね。
(他のミラーレスカメラに比べて)ボディの重量はあると思いますが、僕自身はこの重量は持っていてそんなに疲れないです。
ストラップをつけて、これをピンと張って撮るスタイルにするとかなり安定しますね。
手持ちの可能性がすごく広がったカメラだなと思います。
安定した画も撮れるし、手持ちならではのカメラワークもできる。
S1Hはそういう使い方をどんどんやってみたいなと思わせるようなカメラでしたね。
ジンバルを使用したパチっと落ち着いた画も良いですが、何か手持ちの映像の良さっていうのを追求できるカメラなんじゃないかと思いましたね。
ジンバルみたいに安定するのが全て良いかっていうと、そればかりではない。
手持ちの良さっていうのがあってもいいと思うし、そこは無くなってほしくないと思ってるんです。
そういう意味では凄く手持ち撮影が心地よかったですね。
手持ち撮影を、もっと増やせるってのは凄く面白いし楽しくなりますね。手持ちならではの臨場感っていうのもあると思うので、手持ち撮影は大好きなんですよ。

三本木 波形グラフ移動

Q:他の機能で気になった点は?

三本木:背面モニター上の波形グラフの表示位置を、タッチしながら画面上の好きなところに持っていける、このアイディアはとても良いですね。
アングル的に邪魔な時は別の場所にカンタンに移動できるのはすごく便利です。
大体、波形グラフの表示位置は固定か、大雑把にしか選べない。
S1Hの波形グラフは画面上のどこにでも持っていけるので、構図の邪魔にならないところに移動させて撮影できるのはいいですね。

 

Q:ビューファーの見え方はいかがでしたか?

三本木:僕はどちらかというと光学ファインダーのが好きだったんですけど、ビデオカメラは当然電子ファインダーなのですが、S1Hのビューファーは凄く覗きやすいし、見やすいです。
視野も、メガネをかけて見ても、角まで全部見えますし。
僕はもう老眼が入っているので、背面モニターに近づくと見えないんですよね。
ストラップを突っ張って遠ざけるか、メガネを外して見るとか、色んなスタイルを探ってやっぱりビューファー撮影に行きついたというか。
一人で撮る
だったら、このスタイルが結構僕は悪くないと思います。
ただ周りが見えなくなるので、そこはちょっと気をつけないといけないですけど。

今後の撮影現場へ期待

三本木08

Q:S1Hのボディについてはいかがですか?

三本木: LUMIX S1Hはとてもよく考えられた設計だと思います。
スッキリとしたボディーデザインがいいですね。
最近のカメラは、エルゴノミクスを意識した流線型のデザインが多いんですが、S1Hのトップのボディラインがまっすぐな直線でデザインされていて、道具としてもスッキリしていて個人的にはとても好きです。
サイズについては僕は小さ過ぎると扱いにくい感じがあります。
手にホールドしにくいぐらい、小さくて握りづらいカメラもありますが、このS1Hぐらい、カメラって「手に持った感」を感じたいですよね。僕はこのくらいの大きいカメラは全然大歓迎です。

Q:色の設計などでは何か感じたことはありますか?

三本木:他社のカメラと比べてという部分では、あまりメーカーの差は、正直どのカメラでも僕は大歓迎で使ってしまうので、あまり感じませんでした。
画の色についても他社のカメラにはそれなりの良さはあるし、パナソニックのV-LogにはV-Logの良さがあるでしょう。
VARICAMとも合わせて色設計もされているし、このS1Hならば、ちゃんと追い込んでセッティングすれば、他の大きなシネマカメラとも色味を合わせられるんじゃないでしょうか。

三本木01

Q:最後に、今後S1Hでどういった撮影をしてみたいと思いますか?

三本木: 撮影現場で使用するとすれば、画はデータ上に破綻も見られないので、これがグリーンバック合成のカットで、どういう風に撮れるだろう、どう仕上がるだろうな、というところに興味が湧きましたね。
もちろんヌケがいいことは大前提ですが、あとは感度を上げた際のノイズ感とのマッチングとかも、実際の映画撮影で試してみたいです。
自分が映画撮影の際のカメラを選ぶ基準としている機能として、最近ではフレームレートがわりと自在に選べることです。大林宣彦監督の作品の撮影でも結構使いましたが、24コマ以外のフレームレート、例えば20や22、18コマなどを細かく設定できたらいいなっていうのはあるんです。
僕の方から監督に提案してフレームレートを変えたりすることも多いです。
LUMIX S1Hはフレームレートも結構細かく選べますよね。
この小さいカメラで、ここはフレームレートを変えて、こういう動きにした方がいいんじゃないとか、もうちょっとハイスピードにした方がいいじゃないとかいう提案ができるといいなと思いました。
そういう意味ではLUMIX S1Hはこのサイズのカメラで、バリアブルフレームレートができるというのは映画撮影での新しい可能性と言えます。
スローモーションはよくハイスピードでよくやりますけど、S1Hならばそれ以外のモーションも色々撮ってみたいですね。これはもうまさしく、小さなVARICAMと言えるんじゃないですかね?
LUMIX S1Hなら個人で買えなくはない価格です。シネマカメラを個人で持つっていうのは、結構すごいことですし、しかも3~5年で技術もトレンドも変わるので買い換えなきゃいけないという今のご時世を考えると、S1Hは魅力的です。
さすがにVARICAMは自分ではちょっと買えないですが、S1Hなら買えるかなと(笑)。

Vol.1 シネマミラーレスカメラ、LUMIX S1Hの可能性
Vol.2 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part1
Vol.3 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part2
Vol.4 石坂拓郎 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.5 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part1
Vol.6 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part2
Vol.7 三本木久城 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.8 田中一成氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

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