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Panasonic LUMIX S1H × 撮影現場 vol.6 シネマトグラファー 田中誠士(株式会社フルフィル) × LUMIX S1H ファーストインプレッション

田中さんTOP 2

Profile:1975年、兵庫県生まれ。関西大学工学部卒業後、2001年までSEとして従事。
2002年2月に独立し株式会社フルフィルを創業。
企業系マーケティング各種サービス事業の一環として、2010年頃から本格的映像制作を開始。バーチャルスタジオ設計からカメラアレンジまでをこなし、理系出身の専門性を活かした映像制作を得意とする。
理系技術メーカー、製薬関連企業、外資系企業を中心に約50社以上の顧客へ専門性の高いプロモーション映像、CM制作、イベント映像を手がける。
2015年からは自らもCinematographerとして撮影現場で活躍中。

 

●強力な手ブレ補正

今回の撮影では、狭く限られたロケーションの中でいかに効率的に良い映像を撮影できるか、ということが求められます。
まず厨房の中に入り、調理シーンを撮影しています。調理もワンマンオペレーションに最適化されたコンパクトな厨房で、人間が動ける範囲も最小限の導線しかないため三脚を立てることも難しく、通常であれば一脚やジンバルなど、何かしらサポートが必要な環境ですが、今回はカメラボディを手持ちで撮影してみました。
ここで威力を発揮してくれたのがLUMIX S1Hの強力な手ブレ補正です。
SIGMAなどの各種サードパーティ
ーのレンズでもボディ内手ブレ補正が効きます。
その補正効果はメーカー値で6段とのことで十分に効いているのを実感しました。
そして、さらに驚いたのは、パナソニック純正の70-200mm F4 レンズ、『LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.』を使用した時でした。
ボディ側補正とレンズ側補正の連動動作Dual.I.S.2 の威力を感じる一幕でした。レンズ焦点距離を135mm付近に設定し、C4K-60Pモードにして撮影しました。
S1H でのC4K-60P収録の場合、スーパー35サイズになるためフルフレーム35mm換算にすると、おおむね200mmでの手元撮影です。
ちなみに、60Pを選択したのは2.5倍スローとして使いたいカットがあったためです。そのような環境下でも手持ちでピタッと静止する能力は特筆もので、S1Hと純正レンズでの組み合わせであれば手持ちでしっかりとFIXショットを撮影できました。
また、AF機能もその時に一部試しに使用しました。
正直なところ、まだプロ使用に耐えうるAFというわけではないものの、人物認識AFは時に有効な場面も多数ありました。
通常
私は多くのプロカメラマンの方と同様にMFでのピント合わせが基本ですが、今後のバージョンアップも考慮すれば、こうした機能は実用として使っていける場合もあるかもしれません。
シェフにはいつも通りに調理を行って頂きました。
パスタを茹でるシーンでは手際よく鮮やかな手さばきで、ゆで具合もタイミング勝負というのもあり、撮影に合わせてゆっくりと、というわけにはいきません。
こうしたドキュメンタリースタイルでの撮影場面では、S1Hを手持ちで、その場その場で感じるままにアングルを変えて撮影できたのは気持ちの良いものでした。
総じて、小型ボディの機動力もあいまって、S1Hの特徴が活かされたのではないかと感じます。

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●Lマウントアライアンスの恩恵

レンズとしては、パナソニック純正のSレンズ各種と、シグマのLマウントレンズ各種を用意しました。
また、個人的によく使用する キヤノンのシフトレンズTS-E 50mm L F2.8 と、 ZEISS Otus 85mm F1.4 ZE を持ち込みました。
EFマウントレンズについては、SIGMA製マウントアダプタ
のMC-21を介して装着しています。
プロ現場にとってメーカー依存せずに多彩なレンズ選択ができることは業務利用でのシネマカメラとして大きなメリットになります。
今回はEFマウントレンズも装着しましたが、撮影者によってはより本格的なPLマウントレンズを装着したいという場合もあると思います。
Lマウントアライアンスとして正式にライカとシグマからPLマウントアダプターがリリースされていますし、他マウントとしても実に多くのサードパーティー製品があります。映像表現の一つにレンズ選択というファクターがより大きく注目される昨今では、こうした環境は非常に有益な環境と言えると思います。
また、重量のあるレンズ、特にPLレンズの運用となると、ボディマウントの剛性が重要なポイントになります。
先述でも触れましたが、S1Hのボディはミラーレスカメラのボディとしては異例とも思える剛性感があり、やや重めのレンズであっても積極的に装着して振り回せる安心感があると思います。
Lマウントアライアンスによってパナソニック、ライカ、シグマそれぞれで共通した技術仕様を共有していることも、レンズ選びの上での安心感につながっています。
今回はシグマのLマウントレンズ も使用しましたが、特にエラーを出すこともなく、まさに純正と同じクオリティーでの運用ができたことは、今後の運用の上で信頼につながっていきますし、狙いや用途に合わせて安心して選択できるというメリットもあります。

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●光学フィルターの効果を最大限に引き出す

私の映像制作手法は実践を通して学んできた「独学」なので参考になるかはわかりませんが、その上で分岐点とも言える経験がありました。
それは10年ほど前に右も左もわ
らぬままにまずは本場を肌で感じてみようと思い、アメリカ、ロサンゼルスで毎年開催されるCineGearExpo(S1Hも昨年(2019)にここで開発発表された!)へ行き、現地の撮影現場や編集現場などを見せて頂き大きな刺激を受けました。
はっきり言ってアマチュアそのものな状態で、恥ずかしいながら現地の方々にくだらない質問をしまくって「まだ質問あるの?」と笑われたものですが、そこで親切にも沢山の貴重なお話を聞かせて頂けたのが今のベースになっています。
各ブースを見て回るうちに、現地では角形光学フィルター類を使いこなしている事を知りました。それ以来、光学フィルターを自分の撮影にも使うようになっていきました。
つまり、アナログな光学フィルターワークで出てくる、偶発的ともいえる光の効果を楽しむようになったのです。
デジタルワークフローになってからはポストプロダクション作業でルック含めてエフェクトで加えることも増えてはいますが、個人的には撮影現場で光学フィルターを使う醍醐味というのが間違いなくあると思っています。
その上で重要になるのは、カメラのダイナミックレンジと階調性の良さです。
被写体からの光学フィルターを通る光は、フィルター表面反射光、内部反射光、透過光などが混合されてレンズへと入射され、レンズ構成部を通ってカメラのセンサー表面に到達します。この過程全てで生まれる錯乱や反射、歪み、にじみ、なども含めて、いわゆる「絵の味」となって表現されます。
昨今のデジタル時代のレンズは非常に優秀で、光学補正がしっかりと効き、フレア耐性が強く、もちろん解像度も高くなっています。
良く言えば「くっきりクリア」、悪く言えば「無味無臭」といった傾向です。
そこに光学フィルターを挟む事であえて「味」を作るわけですが、各フィルターの特性により独特のフレアやミストなどの繊細な光の表現が生まれます。
この繊細な光を取り込むには、カメラの基本性能とも言えるダイナミックレンジの広さと階調性の良さがダイレクトに効いてきます。
LUMIX S1Hはメーカーオフィシャルで発表されている14+stopというダイナミックレンジが、しっかりそのまま出ていると感じます。今回の撮影ではS1Hとの組みわせでは初めて、Tiffen製のブラックプロミストを組み合わせて使いましたが、出てきた絵を見て、これには正直なところ驚きました。さらに驚くことに、様々な内部RECでのコーデック設定があるわけですが最高値となる4:2:2 での400Mbpsだけに限らず、4:2:0 150Mbpsなどのより圧縮率の高い設定でもその質感がさほど失われないのです。この辺りは、光学フィルターを通した時の点光源直入射周りにできるフレアや、ミストのかかり方を見ればよく分かります。コーデックのアルゴリズムが絶妙なのか、そのあたりのチューニングが実に良く出来ていると感じました。
過去の経験では、RECした素材を見てみると、高コントラスト部の周りのソフトに広がるにじみの部分に偽色が多数発生したり、フレアが載っていることでエンコードが破綻してブロックノイズが出ていたり、なだらかな階調部でジャギーになったりする事もしばしばありました。
そのような場合は光学フィルターを使わずに撮影して、ポストであとでエフェクトをかけるほうが”幸せになる”場合が多い印象があります。
つまり、光学フィルターを使う気になるカメラボディは機種が限定されるということです。
S1Hではそうした基本性能がかなり高く、これまでの伝統的な光学フィルターを使った技法をまた積極的に使いたくなる衝動にかられます。
個人的な感想として、そういったカメラボディにはなかなかお目にかかりません。
この辺りはスペックシートを見ただけでは分からない部分かと思いますので、実際に使ってご自身で感じ取ってもらえればと思いました。
またこの記事を執筆している時点ではまだ発表の段階となっておりリリース待ちの状態ですが、ATOMOS NINJA V との組み合わせで、RAW収録が可能になるファームウェアが出るとのことで、さらに期待を寄せています。

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●オプションのアダプターでXLR音声2ch入力ができるありがたさ

撮影現場で頻繁に登場するのが、出演者へのインタビュー撮影です。
特にワンマンスタイルでの撮影では、絵と音声を自分自身でモニタリングしながらインタビューを行うこともあります。
今回の撮影ではまさにそのスタイルでの収録を行いました。
出演者が1名の場合、ワイヤレスピンマイクまたは有線ピンマイクを出演者に付け、バックアップとしてガンマイクも併用します。
今回はワイヤレスマイクとしてこのような近距離での1ch運用に便利なRODE社のWireless GOを使いました。また、バックアップとしてSennheiserのガンマイクMKH 8060を使用しました。
こうした場合、XLR-3pinで音声入力できることを必須としているのですが、S1Hの場合、XLRマイクロホンアダプター、DMW-XLR1を使用すれば業務ムービー機と同様にXLR-3pin入力を2ch利用することができます。
このアダプターはGH5で使用されているものと同一のもので、ファンタム電源+48Vも2chそれぞれ独立で搭載されています。
また、S1H本体にはイヤホン端子があるため、音声モニタリングも当然ながら行うことができます。
マルチチャネルになればマルチトラックレコーダーを別途用意しますし、音声班がいれば当然ながら別収録としますが、小規模なワンマンスタイルではカメラ本体だけで最小限の音声収録ができることは業務用途として非常に重要なポイントです。

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●新しい撮影スタイルと言ってもいい気持ち良さ

私自身が会社として映像制作をはじめてから約10年が経過しますが、その過程で数多くのカメラを、それこそ様々なメーカー、民生機から業務機まで幅広く使ってきました。
その経験の中でも、S1Hは新しいジャンルに属するカメラだと感じています。
「小さなボディでありながら業務機そのものとして運用できる小型シネマカメラ」というありそうでなかったコンセプトで、絵としても質の高い豊かな表現力があるのです。
そう言う意味で新鮮な撮影体験ができ、嬉しく思います。
まだまだS1Hのポテンシャル、機能を使いきれていませんが、今後さらに使い込んでいきたいと思います。

Vol.1 シネマミラーレスカメラ、LUMIX S1Hの可能性
Vol.2 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part1
Vol.3 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part2
Vol.4 石坂拓郎 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.5 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part1
Vol.6 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part2
Vol.7 三本木久城 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.8 田中一成氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

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