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Panasonic LUMIX S1H × 撮影現場 vol.4 撮影監督 石坂拓郎氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

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Profile:石坂拓郎(いしざか  たくろう):撮影監督 J.S.C.
2002年、ソフィア・コッポラ監督「ロスト・イン・トランスレーション」に撮影助手として参加、以降、撮影では「さくらん」(蜷川実花 監督)、「ゴーストもう一度抱きしめたい」(大谷太郎 監督)などに参加後、撮影監督として「るろうに剣心」シリーズ(1,2,3)(大友啓史 監督)、「MANHUNT」(ジョン・ウー監督)、「サムライマラソン」(バーナード・ローズ監督)がある。2020年夏に最新作「るろうに剣心 最終章 The Final / The Begining」(大友啓史 監督)が公開。

■クリエイターの工夫が活かせる多彩な機能とクオリティ

Q:テスト撮影の場所は?
石坂:ちょうどこの冬、北海道に行く機会がありまして。苫小牧にいたのですが、早朝の海辺や港の景色を狙って撮影してみました。ちょうどマイナス零度以下の、海から湯気が立ち上ったりする、結構いい感じの光景でした。朝方だったので、パナソニックの得意なグラデーションが、見た目通りの感じでちゃんと出せました。

Q:レンズは何を使用しましたか?
石坂:LUMIX の純正レンズを貸して頂いたので、そのオートフォーカス感も見たかったので、LUMIX S PRO 24-70mm F2.8のズームレンズ一本でいきました。プライベートだったので、自分一人で三脚も立てずに手持ちでやって、後でスタビライズをかけてどこまで行けるか?みたいなことを試したかったんです。とりあえずまずは使い心地と、どんな感じのカメラなのか?っていうことを知りたかったので、使わせてもらいました。

Q:実際に使ってみて、S1Hのポテンシャルはいかがでしたか?
石坂:ポテンシャルはかなりあるカメラだと思いました。プロから見れば足りないとか、アマから見ればToo muchみたいなところは多分出てくるとは思いますけど。ある意味、何でも入ってるっていう、もう、クリエイターが好きに使いたい部分を使えばいいじゃないかな、っていうところまでは機能が詰まり切ってる気がします。ただ、軽さを求めてる人にとっては、もしかしたらこれまでのミラーレスカメラと比べたら重すぎるかもしれませんね。それがどこのユーザーがその重さを求めているかということが難しく、どちらにもとれるカメラだと思います。
ただ僕らから見ると、もうちょっと映像のプロ向けの機能があって欲しいなと思うんですが、価格を考えた時に、そっちに寄りすぎても一般の方や、個人ユーザーには売りにくくなるだろうし。そこを考えると、確かにこうならざるを得ないだろうなというところはありますね。

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■映像のシャープさを評価

Q:PLレンズの使用についてはいかがでしょう?
石坂:今回はPLレンズを使う機会がなかったんですが、全然一緒に使えると思います。
自宅でテストでZeissのCP.2を付けて覗いてみましたが、別に全然問題なく覗けました。ただフルフレーム用のレンズではなかったのですが、CP.2とかはかなりレンズの長さが短くなるので、結構使いやすいんじゃないかなと思いました。また解像度が6Kサイズになってくるので、こちらの方が尋常じゃないシャープさがあるなと感じます。4:2:0で6Kですが4:2:2 4Kで撮っても、そこのマッチングもいいだろうと思います。あとは、10bit 4:2:2であれば、カラコレも全然映えると思いますね。そこを考えると、様々な使い方の選択肢も増えますね。レンズは従来のものをつけて軽目のレンズにすることも、チョイスの中にはあるんじゃないかなと思います。また(メインカメラ的に)PLレンズを付けることもできますし、本当に多様性のあるカメラだと思います。

Q:トップエンドの現場の中で、一眼スタイルのカメラを使うシーンは多くなってきましたか?
石坂:メインカメラにするかどうかっていうことになってくると、なかなか難しいところはあるとは思うんですね。機能的というよりも精神的な部分だったりするんだと思うんですけど。その中で例えばALEXA Miniなどは、小型なのにシネマカメラの機能もトップエンドというところで、いいポジションに行ったんだなと思うんですが、やはり、デジタル一眼レフの形になっていると、僕たちの現場では撮られている側のメンタリティーとかそういうのも入ってくると思うのでなかなか難しいんですよ。ただ、プロ用に使うのであればもうPLマウントにして、しっかりモニターも付けてビルドアップして使うっていう使い方もできるので、そうしていけばドキュメンタリーでも、何でも結構多様性があるかなと思います。

Q:アクションなど動きのある機動力を求める撮影では、かなりデジタル一眼も使われてますよね?
石坂:はい。そういうデジタル一眼カメラはちっちゃいコンパクトものなので、そうすると、小さいので簡易的に色んなとこに置けたり隠したりっていう使い方ができて、たとえ壊れてもメインカメラよりコストが抑えられるっていう面もあって、そういう使い方もします。S1Hサイズのカメラになってくると、それよりはもう少し大きいので、そういうクイックに使う撮影には、レンズのコストを考えても、そこには行かない気もしてますね。
でもドローンやラジコンカーに乗せるとか、軽量でジンバルに乗せるのには、すごく向いてるんじゃないかなと思います。

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■狭いロケーションでの撮影に威力を発揮

Q:S1Hはフルサイズですが、スーパー35とのサイズの違いはどういうところに出ますか?
石坂:今夏に公開の次回作「るろうに剣心 最終章 The Final /The Begining」は、仕上げは2Kなのですが、全編8Kフルサイズで撮りました。ただ、スーパー35mmとの違いというのは結構難しくて、ぱっと初見で見た人だと、特に小さい画面で見たら分かりにくいと思うんですよね。大きい画面になって、初めてそのディストーションとか、ボケ味の違いっていうのが出てくるかなと思います。フルサイズは、アナモフィックレンズとかなり近い画角感なので(スーパー35mmから)本当に二倍ぐらいにした感じで、被写界深度もかなり浅くなってくるので、その辺は大きな画面で違いが見えてくるでしょう。日本みたいな狭い場所が多いと、従来のレンズを付けてもワイドに撮れていくので。そう考えると狭いロケーションが多い日本には、S1Hでの撮影はとてもいいんじゃないかなと思います。

Q:見え方の違いというのは感じますか?
石坂:人間との距離感とかは、目の見え方には近づいている気がします。画角感ですね。その中でチョイスとして、被写界深度をすごく浅くすることもできるので、人間の見た目ぐらいのワイド感で、すごいボケ味を作ることも出来る。ただ、そうすると何か見てる方としてはちょっと違和感を感じるんですけど。まあ、そういう違和感を演出することができるようになったっていうチョイスが増えたということでは、面白いのかなと思います。

Q:フルサイズ撮影の問題はやはりフォーカスでしょうか?
石坂:そうですね、だからあとはもう本当、フォーカスをこの小さいモニターでどこまでジャッジしきれるかとかになってきます。被写界深度を浅くしていく分、今度は本当にフォーカスが合う、合わないっていう問題は、今後かなり深刻になってくるんじゃないかなと思います。

■ダイナミックレンジが広がり豊かな映像に

Q:S1Hと他のミラーレスカメラと比べて最も違うところはどこだと思いましたか?
石坂:やっぱりダイナミックレンジじゃないですかね。本当にそこが上がるだけで、柔らかいというか豊かな感じが自然と出てくる気がします。あとカラーサイエンスも優秀で、僕もVARICAM LTユーザーですが、S1HはパナソニックだからちゃんとVARICAMっぽい色も出てくるし、その2点かな。ダイナミックレンジはやっぱり大切だなっていうのは思いますね。

Q:トップエンドが使うにあたっての改善要望はありますか?
石坂:メニューの作りとか、ボタンの位置とかですね。動画に関してのメニュー構成は、もう少しシンプルにした方がいいんじゃないかなとは思いました。動画に切り替えた時に、VARICAMで得ている知識があると思うので、そこはバリカムのユーザーインタフェースで、一番クイックアクセスできる最低限必要なものは何なのか、っていうことは分かってると思うので、そこをもうちょっと素早く入れるようにしていけば、すごく良いんじゃないかなと思います。
あと、オートフォーカスの使い勝手がちょっと悪い気はしましたね。まだ使い切れてないとこもあると思うんですけど。もっと上手に使うトリックはあるような気がするんですけど。ちょっと、フォーカスのレスポンスが難しい。フォーカスが浅いので、余計にフォーカスがちょっとだけ手前に合ってたりしてても、小さい画面でなかなか判断しきれない。動画を撮るっていう意味だと、そういうところはちょっと怖いところはあります。
あとは、まあ本当にラージフォーマットになったんで、レンズもその分、重くなっているっていうところをどう考えるかですね。

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■ドキュメンタリー撮影で使える多機能と多様性

Q:S1Hは今後、どういうシーンで使われていくと思われますか?
石坂:やっぱりドキュメンタリーがすごく良いじゃないかなと思いますね。低コストでマルチカメラができるし、クロップとかも後編集でできるし、サイズ変換もできたり。そういうことを考えると、6K撮りの4K仕上げでも、後処理で調整できたりもするので。使い方を考えると本当に多様性がありますね。ぱっと出てくるのはどうしてもドキュメンタリー系になっちゃいますけど、もちろんドラマ撮影でも全然使えるような気はします。ただしワークフローの部分で、現場とポストとのファイルのやりとりなど、どのぐらい進行をスムーズにやっていけるかは、これからちゃんと検証しなきゃいけないところだと思います。トラベルして色んなところに行って撮るドキュメンタリー撮影やインタビュー撮影などには向いているでしょう。撮れる絵とか広いダイナミックレンジの映像とかは、もう結構いいところまで来ているので、あとはユーザーがそこをどう使うかっていう部分でこのカメラを選んでいけば、とても良いカメラなんじゃないかと思いました。

Vol.1 シネマミラーレスカメラ、LUMIX S1Hの可能性
Vol.2 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part1
Vol.3 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション part2
Vol.4 石坂拓郎 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.5 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part1
Vol.6 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part2
Vol.7 三本木久城 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション
Vol.8 田中一成氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション

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