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Panasonic LUMIX S1H × 撮影現場 Vol.2 撮影監督 会田正裕 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレション

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Profile:
会田正裕(あいだ まさひろ):撮影監督
ドキュメンタリー、CM、TVなどマルチな現場で活躍。人気TVドラマ「相棒」シリーズの撮影をシリーズ初回から務めている。劇場映画作品では「相棒-劇場版」全シリーズをはじめ、「少年H 」(降旗康男 監督)、 「海難1890」(田中光敏 監督)「王妃の館」(橋本一 監督)、「TAP」「轢き逃げ」(水谷豊 監督)など。

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撮影:会田正裕 by LUMIX S1H

Q:今回初めてLUMIX S1Hをいくつかの作品で使用されたそうですが、どんな撮影現場で使われましたか?
会田:今回は、CMとライブコンサートと一部、ドラマでも使いました。
Q:LUMIX S1Hを使ってみたいと思った動機は?
会田:僕らの現場でも小型カメラを使う局面が凄く増えてきている中で、色んなメーカーで一眼スタイルの細かいものに対応するリグも出てきているし、そういうカメラワークをするために魅力的な製品がたくさん出てきています。そうした中、これまでは小型カメラだと8ビット収録が多く、その場合どうしても本体とは別に収録機で外部出力して10ビットで収録するということが非常に多かったのです。そこに本体で10ビット収録できるLUMIX S1Hが登場した。6K・24コマで10ビットで撮れるし、4Kであれば60コマまで、というこのスペックがまずとても魅力的でした。グレーディングにも多分相当耐えてくれるだろという期待感もあってS1Hをチョイスしてみました。

Q:実際に本番テストして映像をみた最初の印象は?
会田:他の機種も実は外部収録で10ビットで見てたりしたので、実は本体で10ビットといっても映像的にはそんなに変わらないだろうという予想していたんです。実際に画像を見てみると10ビットであるということよりは、印象として非常に雰囲気が柔らかいというか、リッチな感じがして、それがフルサイズセンサーとか6Kとかの恩恵が、何かの形で出てるのかな?っていう感じでした。もともと、S/Nが良いなっていう印象だったんですが、止めて(画像を)拡大しても、清潔な画面だなと。すごくすっきりしてるんだけれど、ちょっと予想よりいいぞ、というのが第一印象でした。
最初に実戦投入してみたのがCMの撮影でした。狭い車内の撮影で使いたかったんですよね。小型機で良いカメラがなければヘッドだけ取り外せるような機種を使おうかと悩んでた時に、 アレンジが自由ということで、LUMIX S1Hをテストしてみたら、これならいけるという感じがありました。またPLマウント変換でPLレンズを使用し、他のカメラとのマッチングもテストした上で、これはいけそうだということで使ってみました。

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撮影:会田正裕 by LUMIX S1H

Q:ライティングなど、CM独特の難しさもあったと思いますが、実際使って見て、どういう結果を得られましたか?
会田:どのCMも同じというわけではないですが、普段やってる映画とかドラマよりは明るめで、色もしっかりと好感の持てる色の状態のものを作りたかったですね。ハイキーというほどではないものの、くすんでしまうような撮り方はしたくなかったんです。人物が主要被写体ですから、人物を適正露出で捉えた時に他のバランスが合うような露出の切り方ですね。

Q:映画やドラマと、CM撮影とは、具体的に何が違ってくるのでしょうか?
会田:映画とかドラマの場合は、若干アンダー目に露出を切っておいて、窓外を飛ばしたりとか、色んなシチュエーションがあります。メインにしているドラマの仕事では、アンダー露出つけることが多いですが、今回のようなCMでは、たっぷりと露出を乗せてというシチュエーションでした。(ロケ現場は)ずっとバックに白い壁があって、照明の車を並走させながら人物の顔とバックとのバランス取らなければならない状況でした。しかしロケハンで思ってた理想の角度で走らせることができなくて、実際の天候のもとでライティングのための車を併走させながら撮影するという条件でした。背景が白壁で、やや順光めの陽が出てるんですが、併走しているライトも、被写体との距離によって光量や影の具合が変わってくるので、なかなかキーライトをバッチリ決めて、バックとのバランスを取るのが非常に難しかったです。撮影条件としてはちょっと厳しいですが、撮り方としては、くすませたくなかったから、少し(絞りを)開けてたわけです。そういう場合、白が飛んだらもう戻ってこない。かといって半分白が飛んでるのに強引に納めるとチープな映像になりかねない。なので、そこはもうカメラのダイナミックレンジが本当の決め手になってくるんです。

Q:ダイナミックレンジはどういう計算で設定されましたか?
会田: 我々は、メーカーが提示するカメラのダイナミックレンジは正直、良い数字を出そうとして広めに言っていると考えています。間違いというわけではないですが、測定の仕方や判断によってそうなっていると思いますが、実際に画を作っていった時に半飛びになっちゃうと、もう戻すことができないことを考えると、2ストップぐらい低めに見積って使うことが安全ですね。LUMIX S1Hも同様に思ってましたけれども、飛び方というか、ハイライトのその納まり具合が非常に好感が持てました。ダイナミックレンジが幾つまでありますとは、テストの段階で決めなかったですが、意外に粘るな、というか粘り方が気持ちよかったので、これは使えるなっていう判断をしたんです。CMの時も背景を少し、いつもの感覚よりも若干開けても、まあ大丈夫だろう、という感覚で使えて助かりました。

Q:S1Hのハイライト特性が良い、という考え方ですか?
会田: そうですね。思ったよりはハイライトの特性が、 少し使えるぞと。ハイライトの限界は14+ストップなのかもしれないですけど、そこに繋がる何か?、飛ばし方なのか、センサーの持ってる力なのか、映像の色のチューニングなのか、そういった部分が、非常に素直と言うか、使いやすかったということですね。

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撮影:会田正裕 by LUMIX S1H

Q:通常はやっぱり、ダイナミックレンジが足りないということですか?
会田: アンダー部分については、どのカメラも意外に表現できるようになってきています。一眼スタイルのカメラなら、増感特性が非常に優れたものもたくさんあります。ただ、ハイライトはやはりカメラの性能が決め手になって、値段の差、センサーの差といったところがすごく出やすいですね。最初からハイキーを完全に飛ばすようなイメージや、ただ明るく撮るだけならいいのですが、 リッチな映像を作っていくのは撮影技術としても難しいのです。CMの場合、明るい中にもしっかりと階調があって、シャドウも真っ黒なだけじゃない。映画やドラマで使ってるところのちょっと上の帯域でバランスを取っていって、陰影を作っていくんですね。これがやっぱり、カメラの価格がゼロ一つ分の違いが一番出るところでしょうね。 なんとなく、全体的に明るくベタっとなっちゃったな、っていうのと、凄く立体感が出たな、肌がきれいに映ったな、ていう部分。その、肌がきれいに映るかどうかも、ライティングのバランスとか、明るいところでやってみてきれいだな、っていうのが、カメラの性能差がわかりやすい部分です。その部分で今回、LUMIX S1Hはある程度、予想以上に応えてくれた感じがありましたね。

Q:S1Hを使われて、フルサイズと通常のAPS-C(S35)サイズとの違いはありましたか?
会田: センサーサイズが大きくなるとダイナミックレンジを増やしやすいと良くいわれていますが、動画の場合、実感としては解像度が良くなると、今度は見えすぎをコントロールするのが非常に難しいんです。基本的には、ほとんどの動画では、後でレタッチをしないで成り立たせているわけです。レタッチをすれば、時間も相当かかるし、映画の場合、スクリーンサイズをどれにするかで、肌の様子が変わってくる。結局は、撮影で完結させるのが一番クオリティーが高いものができることが多い。なので、映り過ぎよりは、むしろ階調が優れてるカメラやレンズを使うことが、上がりが安定する。視聴サイズにも影響されにくいですからね。
さらに解像度がとても良くて、見えすぎじゃなくて高階調がより効果的に見せてくれる、そういうバランスの良いカメラとかは、特にレンズで差が出てきますね。逆に、スチルカメラの高解像度のもので、動画にした途端に、何か解像度の高い影響が逆に出てしまい、見えすぎるために画質が悪く見えちゃうという、これは好みの問題なのか、何かそう感じるものがあるんですよ。

Q:解像度と階調のバランスということでしょうか?
会田: これは同じスタッフの中でも、動画にすると(高解像度でも)画質がいい感じがしないケースがあったりするのに、みんな気づいてます。で、(映像を)止めるとそんなに差がなかったりして。単に見え過ぎ(高解像)というのは、ちょっと気をつけなきゃいけない時代に入ってきたなと感じますね。じゃあ、それをフィルターで落とすのかどうか?、といった議論をざんざんしている中で、高解像だけど良いという映像もあるっていうことにも気づいたんですよ。これはやっぱり、本当に高いカメラにはそういったところが多い。パスフィルターなのかどうなのかとか、色んなこともありますけどそのバランスの、チューニングなのかもしれないですが。ぱっと出てきた画の動画の気持ちよさ、っていうのが意外に重要かなと思うんですよね。
LUMIX  S1Hは、6Kセンサーを搭載していますが、さすがにゼロ一つ違う最上位機種のシネマカメラと比較したら、雰囲気は全く違いますよ。でも、どっちがいいのかっていうのは、もしかしたら使う局面によってはS1H、十分イケてる印象ですね。好みなのかもしれないですけど、非常に好感の持てるあのシャープで柔らかい、リッチな映像の部類に入る映像が出てくるカメラだなっていうのが、今回撮ってみた感想です。

 

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Vol.6 田中誠士 氏 × LUMIX S1H ファーストインプレッション part2
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