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会田正裕 撮影監督 × 富士フイルム Xシリーズ開発チーム X-H1 誌上対談

X-H1発表を前に、デモ映像「私の写真には、いつも私がいる」の監督/撮影監督を務めた会田正裕氏と、X-H1の開発に携わった、富士フイルムの技術スタッフとの対談が行われた。

会田正裕 J.S.C

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1965年千葉県生まれ。 90年にカメラマンとしてデビュー以降、多くの映像作品に携わり、2002年から続く人気TVドラマシリーズ「相棒」で長年撮影・撮影監督を務める。「少年H」(2013年、監督:降旗康男)など、ETERNAフィルムでの映画撮影、そして常に新しいデジタル技術を積極的に現場で活用。劇場映画「相棒ー劇場版Ⅲ」(2014年)では、国内初のフル4K映画制作を行っている。日本撮影監督協会(J.S.C.)会員。

富士フイルム株式会社

DSCF1840_ナンバー入り

R&D統括本部 光学・電子映像商品開発センター
①岡本 訓氏 ②入江 公祐氏 ③高田 浩祐氏 ④水田 智之氏
営業グループ
⑤渡邊 淳氏

ETERNA(エテルナ)の魅力は「スタンダード」

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会田:今回の撮影では、ETERNAの特徴を活かすように、なるべく自然のままのトーンを素直に撮影してみました。特にフェーストーンがとても撮りやすかったと感じました。色の階調も転ぶことなく、一体感を持っていて明るく出ていましたね。私はフィルムのETERNAで何本か映画撮影をしています。その経験から、フィルムのETERNAが持つ、繋がりの良さや、階調、色再現の丁寧さを、X-H1のフィルムシミュレーションでも感じました。
シャドウやハイライトの繋がりで色の転びがない。 非常にオーソドックスに撮っただけのフェーストーンでも、リッチなトーンと滑らかなハイライトが得られる点など、とてもETERNAらしく、 ワンランク上の画質だなという印象を持ちました。環境の厳しいときもハイライトが黄色っぽくならずに、きれいなグラデーションが出る。質感豊かでシネマルックな映像が撮れるという点が特徴かと思います。
FSメニュー
入江:フィルムのころからご使用いただいている会田さんにそのようにご評価して頂き、我々としてはとても嬉しいですね。弊社はフィルムの時代から、フェーストーンができるだけなめらかに繋がるようにしようという思想を持っています。撮影中、役者さんは演技をする中で、当然明るさが違うところへと移動します。そのときに色が転んでしまうのは最も避けなければならない部分です。明るさが変わっても、できる限りフェーストーンが繋がるようにすることが重要です。フィルムシミュレーションエテルナは特にフェーストーンにこだわりました。

役者の演技を邪魔しない「個性がないのが個性」

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会田:ETERNAのシミュレーションにおけるポイントとなる個性、特徴とはなんですか。

入江:最も意識しているのは「個性がないのが個性」ということです。いわゆるシネマ的な映像の「スタンダード」を目指した、というのが大きな思想ともいえます。
動画でスタンダードというと、なによりも演者(役者)の邪魔をしない、「語るけど、語りすぎない」というところが、大きな特徴です。
また、デジタルの世界における映像は、写真ではやらないような多様な加工をするものだと理解しています。そういう点からも、なるべくスタンダードな発色を目指しました。

会田:なるほど。実は、先輩の撮影監督も私も、フィルム時代にETERNAを選んできたのですが、その理由がまさにその部分なんです。ストーリーを語りすぎないけど、しっかりとしたストーリーがあるというのが、ほんとうに使いやすいフィルムでしたね。カラータイミングの方も、扱いやすかったと話していました。そのスピリットを継いでいるということですね。

入江:ETERNAのフィルムの技術には、そうした思想が反映されており、今回、デジタルに置き換わりましたが、フィルム時代もデジタルのフィルムシミュレーションでも、その思想は同じなのです。
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“選ばれる”絵作りを

会田:X-H1の信号処理は8ビット 4:2:0ですね。正直、10ビットあれば、フジフィルムのエンジニアの方々も色設計が楽だったでしょうね。しかし撮影した感じでいうと最後までバランスは良かった。撮りやすかった印象があります。今回の撮影では、ダイナミックレンジは無理せず撮影しましたが、撮った映像はキレイで、いいなあと感じました。こういう絵を望む人は多いだろうなとも思いましたね。スペックで無理せず、4絞りぐらいで最終的トーンをつくり、全体を8絞り程度でバランスをとればきれいに撮れますね。10ビットに迫る表現ができたと思います。
実際、スペックを生かすために映像を撮るということは、映画においてはあまり意味がありません。これまで作品ごとにカメラやフィルムを選んできましたが、それはスペックの数値によるものではないんです。もちろん、スペックが高ければできることは多いけど、スペックを全てを使う人はいません。
映画においては、 色やトーン、機動力が作品に合っている事が機材選択の重要な要素だとおもいます。そういう意味で、X-H1は本当にバランスがよかったですね。
今回、シミュレーションにフィルムの名前がついていることで、いろいろなことを考えなくていいな、と思いましたね。エテルナと名前がつけば、その一言で「空はあの色だ」、と想像できる。これは他のメーカーではできないところですね。ところで、フィルムシミュレーションとLUT(Look Up Table)の違いは何なのでしょうか。

入江:フィルムシミュレーションは、その都度、計算している映像で、微妙な色のグラデーションが表現できる点が、LUTで生成されるものとは決定的に違います。
LUTはもともと、入力値に対して出力する変換の一覧表です。しかし、これだと8ビットでも1677万組の参照データが必要になり約50MBにもなります(3D LUTの場合)。さらに10ビットだと、参照データは10億以上となり、サイズも4GBとなり、カメラ内での複雑な高速処理を行うことは、事実上不可能です。
そのため、実際には参照データを間引きする「補間」が行われているのですが、これにより、どうしても誤差が生じるわけです。通常、参照データ(グリッド=格子点)の数は、33、65などがあります。グリッドの数が多い方が補間誤差は少なく、精度が高いのですが、それは同時に、より多くのメモリと計算処理が必要になります。ファイルサイズや必要なメモリサイズが大きくなり、読み書きに時間がかかる、システムとして高価になってしまう、などのデメリットがあります。
X-H1では、敢えてLUTの処理をせずに、内部では最大16ビットで演算をしています。階調の段階は、LUTの65分割に対し、たとえば16ビットなら65,535分割が実現できるので、だんぜん滑らかさが違います。また、LUTの「補間」計算はソフトウェアによる計算処理であることが殆どです。これに対して、フィルムシミュレーションは、当社のX-Processer Proによるハード依存のため、高速処理ができる分、なめらかな色再現ができるわけです。
しかし、決してLUTが悪いということではありません。弊社もF-LogのLUTをすでにリリースしてますし。ただ、市場にあふれているLUTの中には、上記の誤差などの点で品質に課題のあるものが少なくない。格子点の数や位置が良く出ない場合、ぱっと見ではわからないが絵を壊していることがある。LUTもしっかりつくれば、充分使えるものができます。

会田:今回、X-H1で撮影していてエテルナの特性が踏襲されているのを感じました。私としては、カメラのスペックや、数値目標をクリアするためだけに、フィルムのノウハウを犠牲にするのは、もったいないと思います。今までのフィルム時代につくりあげてきた貴重な絵作りのノウハウを生かしてもらいたいですね。

強靱なボディ内5軸手ブレ補正

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会田:X-H1の名称にある「H」には、どのような意味があるのでしょうか?

渡邊:「H」は、High performance(ハイパフォーマンス)のHから取っています。今回、X-H1の開発では、プロ用の高性能機ラインをつくろうということで、これまで以上にプロのフォトグラファー、ビデオグラファーからの要望をお聞きしてきました。それにお応えする形で、オートフォーカスの性能向上や動画性能向上、グリップ大型化、レリーズのフィーリング改善などの新しい機構、デザインを取り込んでいます。また、特にこれまでの利用者からの声が大きかったのは、ボディ内手ブレ補正でした。

水田:手ブレ補正は、これまでもレンズに内蔵するなど、研究・開発の成果を反映した製品がありましたが、ようやく本体にも内蔵できるまでになりました。X-H1には5軸手ブレ補正を内蔵することにより、これまで手ブレ補正機能を内蔵していなかったレンズでも補正が使えるようになります。特に、非内蔵レンズ全てで5.0段分(※CIPAガイドライン準拠)の性能を達成することにこだわり、レンズごとに細かく設計を行いました。
さらに、ジンバルによるスタビライザー等とあわせて使ったとき、ジンバルが得意とする揺れの補正周波数と、X-H1が得意とする揺れの補正周波数が異なるため、ジンバル装着時にも残ってしまう細かい揺れもきれいに消すことができます。

会田:また同時に発表される、MKXレンズなど重量のあるレンズが付くと思いますが、Xマウント周辺は何か改良はされていますか?

高田:マウント部分を中心にボディの剛性を大きく強化しています。マグネシウム合金によるボディはX-T2等の従来機種から25%ほど厚くし、さらにマウント部分は内部構造を見直しており、重いレンズに対する強度を大幅に高めています。
その他にもプロに使って頂けるよう様々なハードウェアの工夫・改善をしています。例を挙げると天面液晶の屋外での視認性を従来機よりも改善させています。液晶表面カバーをダイレクトボンディング(空気層を無くしカバーと液晶を接着)することで表面での反射を低減しています。

ボディ内手ブレ補正(+スタビライザー使用時比較)

動画撮影を想定したAF機能の向上

岡本:動画用AF制御では、動画用メニューがあり、10段階のカスタム設定でフォーカス送りの動作速度を変えることができます。被写体が前を横切ったときに、瞬時に動いてもらいたいときや、逆に動いて欲しくないときにねばらせることができます。安定性と追従性はトレードオフな部分がありますが、そこが難しいところですね。
今までは動画撮影時に動かない被写体に対してもピント位置を探る動作をしていたのですが、 X-H1でAF制御の改善を図り、こうした動作をしないようにしています。

会田:過去のXシリーズの映像を見ていて気になったのが、AFで静止している被写体を探るのがちょっと気になりましたが、僕はAF推奨派で、理想はセミオートマがいいなと思ってます。複数の人物などを撮影するときに誰にフォーカスが合っているのかが分かれば、そこからマニュアル操作の撮影が非常にしやすいと思いますね。またフィルムシミュレーションで撮影しているときに、その収録される画がビューファーにも反映されるのは非常にいいですね。

渡邊:セミオートマですか? 面白い機能のご提案有難う御座います。
X-H1でももちろんビューファーにフィルムシミュレーションの色がそのまま反映されます。X-Tシリーズの特徴である高性能EVFは、369万ドットに高画素化され、レスポンスも改善されています。
X-T2を出してから、我々の想定以上に4K動画、特にフィルムシミュレーション動画についての反響が大きく、今回動画に最適なフィルムシミュレーション 「ETERNA」を搭載し、機能や操作性改善が図れており、ある程度その期待にお応えすることができたのではないかと考えております。X-H1は、プロ向けのハイパフォーマンス機として、X-T2とは別ラインナップで併売して参ります。