HOTSHOT DX jam 032は、海外からのスペシャルゲストを迎えてのオンライントークを実施。
コロナ禍の影響が世界で最も深刻な米国のカリフォルニア州ロサンゼルス・トーランスに在住のフィルムエディター、横山智佐子さんとのオンライントークをお届けしている。
■ハリウッド映画の第一線で活躍

横山さんには、米ロサンゼルス・トーランスのご自宅から参加していただいた
横山さんは、ハリウッド映画界の第一線で活躍されてきた日本人フィルムエディター。映画「リトルブッダ」(1993年、ベルナルド・ベルトリッチ監督)に参加後、映画「グラディエーター」(2000年、リドリー・スコット監督)や、「ブラックホークダウン」(2001年)、「ハンニバル」(2001年)、「アメリカン・ギャングスター」(2007年)といったリドリー・スコット監督作品をはじめ、数々の有名作品にアシスタントエディターとして参加。「グッドウイル・ハンティング」(1997年、ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン主演・脚本)や、日本を舞台にしたチャン・ツィイーと渡辺謙出演の「SAYURI」(2005年、ロブ・マーシャル監督)や、紀里谷和明監督の「GOEMON」(2009年)などの編集担当として参加し、まさにハリウッド映画の第一線で活躍されてきた映画編集者だ。
■後進の教育に学校を設立、「HOTSHOT」ではコラム執筆も
後進の教育にも熱心で、2005年ごろから2016年まで、日本人の留学生を受け入れて生のハリウッド映画の現場を学べるという画期的な映画学校「ISMP」(インターナショナル・スクール・オブ・モーション・ピクチャー)を設立・運営し、映画界の後進を育ててきた。
2016年の創刊当初から「HOTSHOT」に映画編集のコラム「ヒッチコックのピュアシネマ」(全10回)を連載し、ヒッチコック映画へのご自身の熱い思いと、ヒッチコック作品に見る映画撮影、編集のさまざまな技法や演出アプローチを紹介してくれた。(本記事の文末に各記事のURLを掲載)

HOTSHOTで10回連載された横山さんのコラム「ヒッチコックのピュアシネマ」
現在、ご家族と共にトーランスに住みながら、ドキュメンタリー映画の編集を手掛けているという横山さんに、オンラインでお会いし、横山さんのお仕事の近況、さらには、コロナ禍以降のロサンゼルスやハリウッドの状況や、映画業界の影響などをお聞きした。
■景色が変わったコロナ禍のロサンゼルス
石川編集長は2018年以来の連絡で、旧交を温める言葉もそこそこに、さっそく近況について質問すると、現在はドキュメンタリーの編集を担当されているという。「2010年から、何本かドキュメンタリー映画の編集をしています。ただ、最近は、コロナ禍の影響でほとんど仕上がりかけた作品が公開延期になるなど、作業が中断される時期がありました」(横山氏)。今は、再開し、主に自宅で編集作業をしているそうだ。

駐車場に車が1台も止まっていない、昼間のスーパーマーケット
コロナ禍においては車社会ロサンゼルスの情景も大きく変わったようで「朝の番組で恒例の、フリーウェイ渋滞情報が、今ではすべてガラガラ」という。DX-jamでは、ご自宅のあるトーランス周辺、お嬢様が通う学校の状況や、ハリウッドの映画産業の動きなども聞いている。
「一時期、横ばいになっていた感染者・死亡者の数が、年末の感謝祭やクリスマスといったイベントのシーズンで危機感が緩んだのか、今年1月からまた拡大傾向になり、再び実質的なシャットダウン状態になっている」という。
■アフターコロナへ向け、変わりつつあるハリウッド
映画・テレビは、昨年3月から多くの作品の制作が止まったが、年末から少しずつ動き初めているという。中には、オーストラリアで制作を続行しているテレビ番組もあるそうだ。
映画の制作・配給のこれまでのシステムも変わりつつあるようだ。「劇場公開ができないことから、配信を優先するケースもでている。Netflixの会員数は拡大しており、ディズニープラスも人気。今後、映画産業の動きは確実に変わりそうだ」(横山氏)。
■劇場映画とは異なる作品づくり
番組自体の中身も、変わってきたようだ。
「いままで劇場公開では、大物スターを使って集客をねらっていたが、配信ではスターを使わなくなった。若くて演技力のある新人を起用し、内容的に面白いかどうかをより重視するようになっている。多くの若手新人俳優にチャンスがきたともいえる」
横山さんの専門分野である編集については「映画作品の質は高まったが、シリーズ作品の場合、複数の編集者が担当して、ある程度作品ごとの共通したパターンを決めているケースが多い。話を面白く伝えるように、上手に編集できている作品はやはりおもしろい」という。
■Netflixから22作品がゴールデングローブ賞にノミネート
「作品の上映時間も、これまでの劇場作品とは異なり、時間の制約がなくなった。シリーズの数や話数もそれぞれ作品ごとに異なる。いずれにしても、作品の内容重視の傾向がより強くなってきている」(横山氏)
その現れとして、2月3日に発表されたゴールデングローブ賞では、Netflixによる作品が22作品、Amazonの作品が7作品ノミネートされ、劇場映画配給をメインにしているスタジオとの明暗を分けることになったようだ。
DX-jamでは、さらに、視聴者の年齢層や、視聴傾向などについての話題で盛り上がっているのでぜひご覧いただきたい。