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映画「焼肉ドラゴン」注目の舞台劇を映画化、シビアで明るい群像劇

- VARICAM LTデュアルネイティブISOでフォーカスコントロールを自在に -

HOTSHOT#7
撮影監督:山崎 裕

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鄭義信作・演出により、2008年に舞台劇として上演された「焼肉ドラゴン」。各種の演劇賞を受賞するとともに多くの支持を受けて、2011年、2016年に再演を重ねた同作品が、原作者の鄭義信の初監督作品として映画化し、6月22日にロードショーとなる。
大阪万博が開催された1970年の関西地方都市を舞台に、焼き肉店「焼き肉ドラゴン」を営む家族の絆が描かれる。在日韓国人家族を主人公に、万博にからんだ強制的な用地買収という社会的なテーマがからんだドラマでありながら、「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる」という主人公の口癖にあるように、家族や地域の連帯といった普遍性を明るく描いている。
キャストには、真木よう子、井上真央、桜庭ななみ三姉妹に加え、大泉洋など人気・実力ともに備えた俳優陣が揃う。キム・サンホ、イ・ジョンウンら韓国の名優も交え、高度成長期の時代のエネルギーやぬくもりを感じさせる物語となっている。

高度成長期まっただ中の時代背景をリアルに描くとともに、焼肉店という狭い屋内で展開される家族のドラマを映像に収めるため、撮影は東映 京都撮影所で最も大きいNo.11セットを使用して進められた。撮影に使用したカメラはVARICAM LT。レンズはULTRA PRIMEを用いた。

撮影監督の山崎裕氏は、日本大学芸術学部映画学科で撮影を学び、その後数多くのドキュメンタリー、記録映画、CM撮影監督として活躍。また、是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」(99年)、「誰も知らない」(04年)、「海よりもまだ深く」(16年)などに撮影監督として参加するなど、映画、ドキュメンタリーの両方で数多くの実績を持つ。

今回の映画「焼肉ドラゴン」で、VARICAM LTを使うことになった経緯や撮影のねらいについて聞いた。
焼肉ドラゴン本ラフ 5

群像ドラマに重要なフォーカスコントロール

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「焼肉ドラゴン」でVARICAM LTを使ったのは、主な撮影の舞台が狭い焼肉屋の中であり、そこで繰り広げられる群像ドラマであるため、ある程度、フォーカスの深度をコントロールしなければならなかったからです。 また、狭いセットの中で手持ちとかジブとかで動いて撮らなければいけないので、小型で手持ちに対応できるということで選びました。
とにかく出演者が多くて、あの狭い店の中にかなりの人がいて、それぞれが舞台と同じようにいろいろな芝居をしています。そのため被写界深度を浅くするより、ある程度のパンフォーカスを狙わなければならない。VARICAM LTのデュアルネイティブISO機能で、ベース感度をISO5000にすることで、そこからゲインを少しずつ下げても絞りが絞れるので、暗い場所でも被写界深度をコントロールできるわけです。撮影チーフと照明部との間で「絞りは4でいこう」とか、「ここは6.3まで絞ってくれ」とか、「8まで絞りたい」とか、絵を見ながら相談して「それだったら、ISO4000で撮ってください」とか「ここはISO3200でいきましょう」といったやりとりを重ねました。これは、昔、映画をフィルムカメラで撮影する時に、シャッターと絞りの関係でしたときと同じ感覚ですね。

画面の中で展開される感情の動き

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最近、被写界深度の浅い映像がもてはやされていますが、確かにそういった画はワンカットではかっこいいんですよ。 もちろん、ホラームービーとか大アクションとか、日常的には考えられない状況の世界を描くならそれもありかと思うんです。これは個人的な考えですが、映画って「画」を見て欲しいわけじゃないんですよね。映像は大事ですが、画面の中で展開される人生とか、そこで生きている人たちの感情の揺れを見せたいんですよ。
もちろん、スクリーンは日常とは別なもう一つの世界だから、特に日常的な世界である必要はないのですが、今回の場合のように、ある程度、日常的な人間の人生の生活の中で起こった出来事の中で、それぞれの主人公が悩んだり、悲しんだり、怒ったりっていう感情の揺れがあって、お話しが進んでいくっていう話しの時に、絵を見てくださいじゃなくて、お芝居であり、スクリーンという世界の中で、その人たちが生きていないといけない。
河瀬直美監督がよく演技指導で「お芝居しなくて良いから、この映画の中で生きてて」と言うけど。そういう感覚の中で見ていると、ボケ狙いの映像とか、絵を人工的にものすごく作っていく、というのは、フォトグラフィーとしてのセンスはあると思うけど、そういうのが極端に表に出てくると、お芝居とか人間が見えないんですよね。それがなんとなく気になります。

使用レンズは?

VARICAM LT w Leica
ウルトラプライムでPLマウントでした。予算的なこととVARICAM LTでISO-5000が使えるので、F1.3のマスタープライムを使っていません。32mm, 40mm, 50mm, 65mm, 85mmを細かく使い分けました。特に40mmと65mmが好きですね。狭い部屋の中で85mmじゃ遠すぎる。50mmだと近すぎるというのがあるんです。サイズじゃなくて、カメラとの距離感みたいなのが気になるときがあって。それはドキュメンタリーをやっていたからで対象とカメラの距離によって、アップショットの感覚も変わるんです。

ワイドやズームは使わない?

ワイドは、1回だけ広い絵は撮りましたが、ほとんど使っていないです。狭い部屋でワイドを使うと広く見えちゃうんで、いかにもワイドレンズというような絵は使っていないですね。ワイドを使ってもディストーションが出ない、広いところで広い絵を撮るというような場合は使うときがあります。
映画ではズームも使いませんね。ズームはとても恣意的なものに見えるから。ズーミングはカメラの移動以上に恣意性というのが強く出ます。狙いがはっきりしているときはズーム効果も使えますが、ホームドラマとかでも、スリリングなシーンなどの場合以外は使いません。

オールセットで明るいホームドラマ感を演出

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今回の撮影はほとんどセット撮影でした。ほんとうは松竹にオープンセットを組む予定でしたが、松竹のステージがスケジュール的に開いていなかったので、東映をお借りすることにしました。本当は、一部を松竹のオープンセットでやろうとしたんですが、悪天候のときのためのスタジオセットを両方使おうとすると、表の建具とかを同じにしなければならない。いくら太秦でも松竹と東映の距離で何度もセットを移動させるのは大変、ということで、東映の一番広いステージに全セットを組んでしまおうということになりました。80%以上はそのセットだけで撮りました。

仕上げで何か工夫されたところは?

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「焼き肉ドラゴン」のテーマとしては、今村昌平監督や小栗康平監督が手掛けてきたような社会派のシビアな話なんですが、ホームドラマ的な要素もあって、つらいことがあっても、明日はなんとかなるさという言葉がキーワードになっている映画なので、あまり社会派的な映画にはしたくなかった。なので、けっこう色は出るし、セット感も出るんだけど、もともと演劇だし、ある程度、演劇的な演出をしているので、それは気にせずに、ある程度、明るいホームドラマとしての日常感みたいなものは残そうと思いました。なので、もっと渋くしてもいいかとも思ったんですけど、それはせずに、ややサチュレーションを下げる程度で、ぬくもり感は残しました。
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6月22日より全国ロードショー
©2018「焼肉ドラゴン」製作委員会

「焼肉ドラゴン」
公式サイトはこちら