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「サニー/32」

- ISO5000とIR撮影で、猟奇な題材をファンタジーに描く -

HOTSHOT#5 灰原隆裕 J.S.C.(撮影)/ 広瀬亮一(カラーリスト)

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灰原隆裕 J.S.C.(撮影)
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広瀬亮一(カラーリスト)
「サニー/32」は、2018年2月公開予定の白石和彌監督が手掛けるオリジナル脚本の最新作。アイドル出身の北原理英演じる中学校教師・藤井赤理の誘拐・監禁から始まる物語は、子供の殺人というテーマの中に、強烈なキャラクターたちの群像劇がサスペンスフルに展開、人間の弱さと強さ、さらにはネット社会の危うさまでを内抱する作品。撮影は2017年2月2日~2月19日まで、降りしきる雪の新潟で行われた。極寒で変化の激しい自然の中で膨大なカット数を要した撮影には、ISO5000とIR(赤外線)撮影が可能な、VARICAM LTが使用された。
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映画「サニー/32」

Official Website: http://movie-32.jp

VARICAM LTを選んだ理由

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灰原:やはりISO5000という高感度ですね。僕自身VARICAMを使ったのは今回が初めてで、一般的に先入観としてノーマルトーンの印象が固いというのがあるようですが、12bitなので元々データの含有量が大きいのでいじれるトーンの幅が広く、そこを活かせばどのような対応もできる面白いカメラだと思いました。しかも感度があれだけ高いというカメラは他にないですからね。今回は特に後半の海岸ロケのシーンでは厳しい自然環境下で、充分なライティングをする時間もないですし、高感度でどんどん撮っていくというやり方でないと全てのカットを撮り切れなかったと思います。ナイター撮影とセットに関しては、ほぼISO5000ベースで撮りました。また幾つかはISO10000とかに上げている部分もあり、かなりカメラの限界に近い部分を使った撮影でしたね。

IR用LUTでノーマルなルックに

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灰原:IR撮影用のLUTを予め作っていき、色温度も2800Kくらいの低い色温度で、一番感度設定が低いときにニュートラルなノーマルに近い状態に持っていくようにしています。なので一見してどこがIR撮影したシーンなのか、分からないと思います。過去の回想シーンは全てIRで撮影しました。IR撮影のシーンもHS撮影以外は4K撮影していて、特に血の赤やランドセルなど赤色にIRの効果が出たと思います。もっと色温度を下げて撮ればもっと違った面白い効果が得られたかもしれません。毎回使えるわけではないですが、フィルターとの組み合わせなど、工夫次第では撮影の世界に面白い引き出しができたと思います。
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V-Logはセンサーノイズではない粒子ノイズ

広瀬:カラーグレーディングは日活撮影所の元々試写室だったところがいまグレーディングルームになっていて、そこでDaVinci Resolveを使って行いました。今回他のサブカメラとも比較して思ったのは、ISO5000、10000という高感度の画像で比べてみるとV-Logは非常に幅がありますね。色を持ち上げていって、もうこれ以上ダメっていうところの使える幅が広いのはV-Logでした。特徴的なのはノイズで、感度を上げていくとどうしてもノイズというのは出ますが、他のカメラだと明らかにセンサーノイズとして出て来てしまうのが、V-Logの場合、格子のようなセンサーノイズではなく、フィルムグレイン的な粒子ノイズなのでノイズリデュースを掛けても違和感がありません。
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ファンタジーを創り出すK-35

灰原:作品自体が子供の殺人事件を題材にした、きわどいシーンも多い作品なので、普通のドキュメンタリータッチにしてしまったら生々しくてつまらないと考えました。ファンタジーとして仕上げたいという狙いがあったので、レンズはほとんどキヤノン K-35という70年代の古いレンズを使っています。オールドレンズなのでコーティングも黄色味が強く、殺伐としたシーンが多いなかで、K-35の持つオールドレンズの柔らかさと、VARICAM LTの特徴であるISO5000、そしてIR撮影の独特な色感でファンタジー感を演出したいと思いました。陽のにじみ方やハレーションの入り方などにレンズの特徴が出たなと思います。

IR撮影の可能性

灰原:基本は4Kで収録しており、IR撮影シーンもスロー以外は4K、ISO800で収録しています。3倍、4倍のスロー(HD)も多用しましたが、その際に4KとHD素材と混ぜても違和感はありませんでした。スチル撮影ではモノクロフィルムのIR撮影は以前から趣味で撮影したことがありましたが、そのときの印象では森の緑の要素が白に変化するなど、緑色により効果が出るという印象が強かったのですが、今回やってみて思ったのは赤色にも効果的でしたね。個人的に以前からIRカットフィルターは外してみたいと思ってました。カラーフィルターを使うなどもっとカメラテストができれば、さらに違ったトーンも得られたと思います。ギミック的な効果としてIR撮影にはまだ多くの可能性があると思います。VARICAM LTのレンズとセンサーの間に別のフィルターが入れられるような仕組みがあると、さらに面白いトーンが得られるかもしれませんね。

広瀬:実はIR撮影部分の色調整については、ほぼ基準通りであまり大きく調整しているところはありません。カメラテストよりも本番のほうが血のりなど赤い要素が多く入ってきたので、それによりIR撮影の効果が際立って見えましたね。今回は全体的に柔らかいトーンの作品でしたが、IRはハイコントラストの映像でも面白い効果が出るかもしれません。

アナログとデジタルの融和性

広瀬:フィルム時代といまのデジタル撮影の違いで思うのは、35mmフィルムの撮影では、もうデジタルでもほぼ変わらず、上手く調整すればかなり似たルックに調整できます。しかし昨今色々な素材を見ていくと、16mmと70mm(65mm)フィルム作品に関しては、デジタルではまだ再現が難しいと感じます。IR撮影も結局アナログのテクニックなので、そこが面白いですよね。

灰原:すべての加工をポスプロでやってしまうことは技術的に可能ですが、それでは面白くないですよね。レンズにしろIRにしろどちらもアナログ技術なので、そういうところがデジタル撮影の中で活かされているのが面白いです。

白石作品の魅力

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広瀬:本作は、問題提起して勝手に答えを出して終わってしまうような、いわゆる”ドラマ”ではなく、ちゃんとした”映画”作品だなと思います。見終わった後に色々と考えさせられて、もやもやしたり、心地よい疲労感がありますね。仕事で様々な作品を手がけていますが、最近はなかなかそういう”映画”を感じさせてくれる作品が少なくなってきていると感じます。

灰原:「サニー/32」は他にはあまり見たことのない、ジャンル分けのしづらい、すごく不思議な映画になったな、と思いました。シナリオ自体はコンピューターとかSNSやネット社会をテーマにしている部分が目立ちますが、最終的には人の感情というか、とてもアナログ的な部分を描いている作品です。デジタルとアナログの融合として、それがファンタジーとして昇華されているのがこの作品の面白いところだと思います。


©2018「サニー/32」製作委員会