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Leitz Cine / Ernst Leitz Wetzlar GmbH – 新社屋探訪

- ライカカメラ生誕地へ帰還・・・そしてこれから -

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1911年、ドイツのWetzlar(ヴェツラー)にあるエルンスト・ライツ社に入社した一人の技術者オスカー・バルナックは、ライカカメラを語る上で忘れることの出来ない人物だ。最初に試作した映画用カメラから、小型でどこにでも持ち出せて、映画の一コマと同サイズを切り出して静止画像として捉えるスチルカメラを発想。後に「UL-LEICA(ウル-ライカ)」と呼ばれる、いまのライカカメラの起源となるカメラを開発、世界で最初にこのカメラで撮影された場所が、いまもヴェツラーの町並みに残る。ライカカメラファンであれば有名な話だ。
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ここから今のカメラの歴史が始まっているといっても過言ではない。その後日本のミノルタや、スイスのウィルドとの関係を変遷して来たライカ。
カメラ製造会社であるライカAGは1988年から、ゾルムスに居を構えていたが、ライカ生誕から100周年となる2014年に、このライカカメラの聖地と言える、ドイツ・ヴェツラーに本社社屋を設立。Leitz Parkとしてオープンした。さらに2018年の今年6月には拡張部分が完成した。
その中に、これまでライカのシネマレンズ部門を製造販売する系列会社、CW SONDEROPTICが新社屋建設を機に、懐かしい「エルンスト・ライツ・ヴェツラー GmbH」と社名変更、通称Leitz Cineとしてリスタートを切った。
今年9月のIBCでは、2019年以降に発売されるという最高峰の新ラインナップ「Leitz Prime」「Leitz Zoom」の開発も発表。創業当時は映画カメラの製造から入ったライカが、また映画の世界でその存在を大きくする日が近そうだ。
今回は、その新社屋を訪ね、社名変更やシネマレンズ製造の現況、そしてこの先の展望を、Managing Director のGerhard BAIER(ゲルハルト・バイヤー)氏にお話を伺った。
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Ernst Leitz Wetzlar GmbH
Managing Director
Gerhard BAIER(ゲルハルト・バイヤー)氏

今回の会社名変更の理由

10年間、私たちはCW SONDEROPTIC GmbHとしてやってきました。多くの方はその名前に疑問を持っていたと思いますが、実は非常にシンプルなのです。私たちはシネマに関わる製品を作っている。つまり、Cはシネマ(Cinema)のC。Wは私たちがいる街の名前、Wetzlar(ヴェツラー)から取っています。SONDEROPTICはスペシャルプロジェクトのことを指し、ライカではできなかったことをやろう、という意味です。ドイツ語でスペシャルはSonderと言い、これにレンズと関係がある光学(Optic)を足してSONDEROPTICとなりました。10年間この名前でやってきて、ライカのシネマ製品を作り、ブランドとしても確立してきました。ライカで培ったレンズの扱い方や作り方といった専門的な知識を踏襲し、その知識を写真から映像の世界へと継承していったのです。それがスペシャルプロジェクトの所以です。
新社屋の周りを見回すと、ライツパークやライツホテルといったものが見えます。ある時ふと「ライカの起源は何なのか」と思い至りました。そして、ヴェツラーで設立したエルンスト・ライツという会社である、というところにたどり着きました。つまり、ライカというのはライツ社の製品の一つに過ぎない。ライツ(Leitz)のカメラ(Camera)、だから「ライカ(Leica)」。そう、ライカはライツ社の製品なんです。オリジナルネームに戻ろうというアイディアは、80年代からレンズ作りをしていく中で、エルンスト・ライツ・ヴェツラーやエルンスト・ライツ・カナダと名付けていることからも分かる通り、ライツはレンズのブランドネームとなっているというところからもきています。それに、そもそもライカのスチルカメラは、映像から始まっているのです。当時のエンジニアは小さなポータブルのメジャーメント・ツールを作ろうとしていました。それによってシネマフィルムを探求しようとしたのです。それが実際にはライカのカメラに活かされているわけですが、そのプロセスはすべてライツ社が行なっています。つまり、すべてはその歴史につながっているのです。CW SONDEROPTICの10年後という今が、その伝統に戻るのに良いタイミングだと思いました。伝統が受け継がれたエルンスト・ライツ社のルーツに戻るということなんです。
今回変更したのは名前だけで、新しい建物を建設して、通りの向こうからプロダクション・デパートメントを引っ越しはしましたが、社内の大きな変更はありません。私たちのレンズはSUMMILUX-Cからスタートし、1つの製品ラインでやってきました。その後、SUMMICRON-Cを加えました。SUMMILUX-CがT1.4で、SUMMICRON-CはT2という製品ラインが2つになりました。そして3つ目の製品ラインとして昨年Thaliaレンズを発売したのですが、段々と手狭になってしまったので、広い場所が必要でした。ヴェツラーで場所を探したのは、ここにはライカやライツのすべてが集中しているからです。ライツパークもオープンしますし、ライカのホテルやギャラリーもある。そこで、ライカカメラAG社主のアンドレアス・カウフマン氏が「ここを離れたくないなら、新しいプロダクションのビルを建てましょう」と言ってくれたのです。それは素晴らしいお話でしたね。そうなれば、非常に効率的にモノづくりができます。CW SONDEROPTICとしてやってきた10年後、ここに Ernst Leitz Wetzler GmbHとして新しいビルを立てることができる。これは将来に対して素晴らしいステータスとなるでしょう。

新社屋建設と新体制

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新社屋に移動するということは、新しいモノを作れるチャンスがあるということです。プロダクション的には新しいマシンを入れたりすることもできますが、それと同時にデザイナーを入れることができるのです。そこで、まずはデザインチームのビルから建設しました。ここがまず変わったところです。また独自の販売も開始しました。ほかの流通業者とも組んでいますが、自社でもそうした動きをし始めたので、そこにも多くの人が必要となりました。販売する人、そこに関わる運営陣、会計士や仕入れをする人・・・あらゆる部署が成長しているので、そのためのスペースが必要でした。新社屋への体制の変化としては、デザインチームのスペースがさらに機能的になったこと、セールスチームの拡充、仕入れチームへの実装、会計チームへのスペース拡大などです。しかし原則的にはこれは変化ではなく、成長です。新しいビルによってすべての部署が一つの場所に集まることできた。これが大きなアドバンテージであり、とても満足しています。

ライカや周辺会社との関係

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ご存知のように、多くの会社が私たちとともに製作しています。本社の通りの向こうにはWeller社があり、そこでたくさんの部品を作っています。メカニカルデザインのほとんどは自社でやっていますが、通り一本挟んだ先ではその部品を作っているのです。また、ポルトガルのライカではヴェツラーの工場より少し大きな工場があり、同じクオリティーの製品ができます。同等のキャパとリソースを持っています。
また、本社の隣にはBio Optic社があり、時々ツアーを開催しています。こうしたライカのグループ会社がこの一つの場所に集まっているということがとても重要なのです。私たちは互いに行き来し、コミュニケーションをとっており、ライカの100年続くメソッドやテクノロジーをシェアしているのです。
なぜ私たちのレンズが特別なのか?それはライカがレンズ作りを始めた頃からの経験を使っているからです。その裏には多くのコミュニケーションがあります。グループとして近い位置でともに製作していることが起因していると思いますね。

業界の中でのLeitz Cine製品

写真の業界で成したことを、映像の業界でもやろうとしています。ライカは今でも写真業界では強烈なブランド名となっています。みなさんがライカの写真がどんなものかを分かっているのです。なぜそうなったのか?ライカが作り出す画が周知されているのは、私たちの起源である、顕微鏡時代に遡ります。何を見たいのか、どうすればそれを見ることができるのか。イメージだったものから実際に目で見ることができるものへと具現化するアイディアがそこにはありました。フォーカスをどこに合わせるか、またはどこでフォーカスが外れるのかということを、ライカはよく知っていました。歴史を振り返れば、重要な写真はライカによって作られてきたことが分かるでしょう。私たちはそのアイディアを用い、すでに写真の世界で成していたことをどのように映像の世界でやるか、どうすればそのまま活かすことができるのかを考えました。これは非常に面白いプロセスでしたね。動かない一コマから絶えず動くコマになったのですから、すべてが変わりました。これがシネマプロジェクトです。「写真業界で得たすべてのものを使おう」と思ってから、映像業界の市場に何があるかを見定め、そこからベストなものを取り、写真業界での知識と融合させ、SUMMILUX-Cを作りました。写真での知識(哲学)を映像業界のニーズに適合させ、それに見事に応えたのです。SUMMILUX-Cは成功した製品といえるでしょう。さらに同じようなアイディアを2番目の製品、SUMMICRON-Cにも施しました。SUMMILUX-CはT1.4レンズの中でトップクラスを誇ります。ミドルレンジのクラス、T2でも同じことができるのか?それがSUMMICRON-Cです。このレンズも同じライカの遺産を受け継いでいます。そしてラージフォーマットです。65mmカメラはトップクラス中のトップで、多くのシネマトグラファーがこのミリ数で撮りたいと思っているでしょう。アナログ時代は金銭的なリミットがありましたが、デジタル時代になり、その状況は変わりました。65mm戦争が非常に活発化し始め、ライカとしてはどうするべきかを考えたところ、やはりラージセンサーの必要性を感じました。実はすでにスーパー35mmでテストをしており、Sレンズを使っていました。Sレンズは、ライカ製品の中でも最高峰であり、MレンズやRレンズのラージフォーマット版にあたります。私はそのレンズが作り出した画が気に入りましたね。カラートーンのリッチさは、他のレンズには作り出せない画をだと思いました。そしてSレンズのテストを繰り返しながら、新しい製品を作ることになりました。少しずつ変えたり、足したり、イメージサークルを大きくしたり・・・こうして昨年Thaliaレンズを完成させたのです。非常に面白いレンズの一つです。今まで見えなかったところが見えるようになった。加えて、アーティスティックでクリエイティブなアプローチができます。こうした動きが、トップレンズを生み出しているのだと思いますね。質の良いポートフォーリオやプログラムはシネマトグラファーのニーズを満たしています。実際、私自身も撮影をするのですが、このようにすべての願いや要求を満たしてくれるレンズは他にありません。

クオリティの秘密

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多くのインタビューで、なぜ私たちのレンズがスペシャルかという質問を受けます。しかしその答えは一つではありません。第一に、私たちはレンズ製作に100年の歴史を持っています。顕微鏡から始まり、画を理解しているのです。目に映る現実をどうキャプチャするのか、そしてそれをどうフィクションにするのかを知っています。第二に、私たちはレンズの扱い方を知っています。つまりそれは製造方法を知っているということです。100パーセント間違いがないようにレンズをマウントさせ、一つのモノとして作る。アジャストメントプロセスでは、通常、フロントグループ、アイリスコンパートメント、そしてリールグループがあります。始めにフロントグループでは、完璧にセンターにきているかどうかを確認します。その後アイリスコンパートメント、リールグループと確認します。レンズマウント部分のエッジペイントといった、非常に細かい部分も見ています。これはマシンでは無理なことで、人にしかできないことです。彼らが、絶妙なタイミングやエッジペイントの厚さを分かっているのです。これによって(光の)吸収率が変わってきます。吸収してレンズ内でバウンスしてしまうか、粒子が反射してしまうか。もし反射が欲しいとするなら、そこに小さなフレアが生まれるでしょう。ライトの光源が画に乗るのです。そうした細かい経験がすべてライカ、ライツのレンズ製作に活き、ユニークなものにしています。100年以上の経験から学び、またそこから探求しているのです。そして、どこが画の中でエモーショナルな部分となるのかも注視しています。エッジペインティングといったことも含め、テクノロジーを使って、それがどのようにエモーショナルな部分とつながるかを見ているのです。それは多くの形で成功していると思いますね。
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すべての会社にそれぞれ秘密はあると思います。ただ、私がここで言える一番大事なことは、大部分のプロセスはマシンではやっておらず、人が行なっているということです。さらにレンズクリーニングに至ってもです。レンズクリーニングといえば、簡単なことのように思えることかもしれませんが、非常に難しい作業です。私の妻に私が窓拭きが上手か聞いたら「いいえ」と答えます。それと一緒でこの作業を、我が社の社員は誰も私に頼まないでしょう(笑)。私たちがなぜユニークなのか。それは人の手によるもの、それも経験のある人が長い訓練によって培ったものからきているのです。もちろんマシンも使いますが、すべてのプロセスの裏に人がいるのです。

カメラの目にこだわる

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シネマカメラを作るのは簡単ではありません。非常にチャレンジングなことです。それに、市場にはすでに良いカメラが出ています。面白いのは、後の私たちのスチルカメラになったモノを作ったとき、すでに映像用のカメラをデザインしていたのです。それは1909年のことでした。でもそれは昔のことです。今の時代では、カメラを作るのは簡単ではない。私たちより優れたカメラを作れる会社がたくさんありますしね。私たちはただ、そのカメラに対して正しい「目(レンズ)」を作り続けるのです。カメラのテクノロジーはどんどん進化しています。センサーのことも知らなければならないし、キャプチャリングデバイスのことも知る必要がある・・・でも「目」がなければ何の意味もなしません。それに、私たちはすでにカメラに対して良い「目」となっていると自負しています。私たちはそこに留まった方が良いのです。時々、カメラメーカーとも一緒に仕事をします。CineGearやIBCでも紹介したようにコンビネーション製品にも取り組んでいます。もちろんカメラによって提供しているレンズも違いますし、レンズをベースにしている場合もあります。作り出したい画によって違っています。しかし、先に述べたように私たちは「目」でいることにこだわっているのです。

フルサイズフォーマット市場への計画

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今年のIBCに来た方ならば、きっと驚いたと思います。私たちがどこへ進んでいくのか、そのロードマップをお見せしました。市場はスーパー35mmからフルサイズフォーマットへと変わってきています。そんなに急速にとは思いませんが、大きな画を作っていく時期には来ていると思います。ラージフォーマットの画を一度見たら、自分もその画の中の一つとして感じることができるでしょう。私にとってスーパー35mmも非常に素晴らしいフォーマットで、それはそのまま重宝されると思いますが、もしその画面がもっと引き伸ばせるなら、広い画を選ぶでしょう。SUMMILUX-CやSUMMICRON-Cはスーパー35mmにフィットしますが、ラージフォーマットが到来し、人々が私たちに何を期待するのかを考えました。
そこで最初に思ったのは、SUMMILUX-Cの進化版です。スーパー35mmからフルサイズにするにはどのようなレンズがいいか、同時に大きなセンサーになった時のデザインを考えました。そこでIBCで新しいライツのプライムレンズ「Leitz Prime(仮名)」の開発発表をしました。今までのようであれば先の2つのレンズで済んだのですが、フルサイズフォーマットやビスタビジョンといった大きさを考えた時、やはり何かしなくてはと思ったのです。最初に考えたデザインは今とは違います。大きな変更がありました。そして今回発表した2つのズームレンズ(Leitz Zoom(仮名))は市場にヒットしたと思います。
展示会に行っても、今や多くの会社がフルフォーマットカメラやレンズを出しており、価格のレンジも幅広いです。私から見れば、フルフォーマットの世界はまだ整備されていないように感じます。スーパー35mmの時は非常に明快でした。プレミアプロダクト、ミドルレンジプロダクト、そしてエンターレベルのプロダクト。でもフルサイズフォーマットの世界はそのようなピラミッドではなく、サークルのような感じがしますね。みんなが入ってこれて、みんなが自分のポジションを探しているような感じです。でもどこかにトップのポジションがあるはずなのです。すべての情報をキャプチャして、センサーに、デバイスに、そしてカメラに送る。ここで重要なのは情報をキャプチャすることです。ポストでどうするかはそれぞれで、ある部分では情報を捨てるでしょう。ですがそもそもその情報をキャプチャ出来ていなければならない。そこで私たちがやっていることは、フルフォーマット、もしくはビスタビジョン市場でもその点でトップになることです。
私たちが目指しているのは、シネマトグラファーが欲しているものを見極めることです。彼らのニーズ、つまりそのレンズで何をしたいのか、その画を作り出すためのにどのような操作が必要なのか、ということです。どのようなシーンにするかはもちろんシネマトグラファーのスキルによります。レンズの個性と呼ばれるものは、大部分はライティングやフレーミング、シネマトグラファーの知識によります。私たちはモノを提供しますが、それをどう活かすかはやはり彼ら次第なのです。
価格について、驚かれた方もいるとは思いますが、このレンズが何をしてくれるかを考えてほしいです。率直に、あなたの仕事を助けてくれるでしょう。どのようなライティングでもフレーミングでも情報をキャプチャしてくれます。ですから、お金の話はちょっと横において考えてください(笑)。

日本のユーザーへコメント

日本の皆さんがライカを好いてくださっているのは知っています。何人か日本のシネマトグラファーとも話したことがありますが、日本映画はその歴史を反映した伝統的なフレーミングがありますよね。非常に面白いと思います。そこに対して、私たちの製品はクリエイティブなイメージを作り出すサポートができていると思います。私たちが日本のシネマトグラファーに刺激を受けているように、私たちの製品からもみなさんに刺激を与えることができればと思っています。
Leitz Cine & HS