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海を渡る国産映像コンテンツ #1

- 19カ国で同時放送! Hulu・HBO共同製作ドラマ「ミス・シャーロック」 -

この10年、依然としてアジアが熱い。世界で最もホットな状況が続いている。映像コンテンツ制作もこれに乗じて、中国を中心にアジア全域で盛り上がっている。そのクオリティも年々上がっており、また多くの日本人スタッフ・キャストも、様々なアジアの現場で活躍の場を拡げている。最近では日本国内での海外作品のロケも増加、多国籍混合スタッフによる制作も増えている。
一方で作品の日本国内需要はどうだろうか?制作費の現状は依然として厳しく、国内需要だけでは従来方式の制作の枠組みでは、一定のクオリティを担保できないという状況もあるようだ。
そんな中で、今号の特集では、海外需要を見込んだコンテンツの海外配信、そして日本で撮影・制作されたコンテンツの制作状況について目を向けてみた。
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Hulu × HBO(「ゲーム・オブ・スローンズ」「セックス・アンド・ザ・シティ」)共同製作!
世界19カ国同日放送決定!史上最も美しいシャーロック・ホームズ誕生!
「ミス・シャーロック」

全世界の映画・ドラマ史上、最も多く映像化されているキャラクター、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソン(ギネスブック認定)。シャーロック不変の圧巻の謎解きはそのままに、この世界一有名な2人を大胆不敵な新解釈で捉えた、未だかつて誰も見たことのない、全く新しい究極の本格ミステリードラマ!
あのシャーロック・ホームズとジョン・ワトソンが、もし現代の東京にいたら…? しかも、ふたりとも日本の女性だったら…?
捜査コンサルタントのミス・シャーロック(竹内結子)と元外科医の橘和都(貫地谷しほり)。2人が出会う事件とトリックは、コナン・ドイルの正典に敬意を込めつつ、現代の東京にふさわしいものにアレンジ。シャーロックの人間離れした観察眼と知識、推理力を武器に、凄まじいスピードで次々と難事件を解決し、人間の心の闇にまで迫るスリリングなドラマが展開していく!
そして、日本のドラマ史上類をみない国際共同制作が実現!
世界有数のケーブルテレビ放送局HBOアジアと初タッグを組み、Huluが配信される日本に加えHBOアジアが放送される世界19カ国で同日放送!
今まで“地上波のドラマでは決して味わえない、刺激的で心に響く物語”を次々と制作してきたHuluが、新たなる伝説を世界に放つ!

「ミス・シャーロック」Webサイトはこちら
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古典的名作に新解釈

4月から配信予定のHuluとHBOの共同製作ドラマ「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」は、サー・アーサー・コナン・ドイル原作の「シャーロック・ホームズ」という古典的名作を忠実に活かしながら、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンという二人の主役を女性にし、さらに現代の東京を舞台にするという、全く新しい連続ミステリードラマに生まれ変わらせている。主演のシャーロック・ホームズ役を竹内結子、ジョン・ワトソン役を貫地谷しほりが演じる。
ギネス・ブックにも、全世界の映画・ドラマ史上、最も多く映像化されていると認められている「シャーロック・ホームズ」だが、この数年、この古典的名作に、さらに新しい解釈を加えた作品が世界で次々とヒットを飛ばしている。
2009年に公開されたガイ・リッチー監督の映画「シャーロック・ホームズ」(ワーナー・ブラザース、日本公開2010年)は、ロバート・ダウニー・Jr.とジュード・ロウによる新たなシャーロック・ホームズの物語として世界的に注目を浴びた。
続く2010年には、英BBC放送が小説「シャーロック・ホームズ」を翻案した「SHERLOCK」と題したテレビドラマを放映し、大ヒットを飛ばす。この作品では、舞台を21世紀に置き換え、最新機器を駆使して事件を解決する主役の二人をベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマンが演じ、カンバーバッチは一躍スターダムにのし上がった。日本でも2011年からNHK BSで放映されて人気を博している。
さらに、2012年、米CBSは、舞台を現代のニューヨークに置き換え、ホームズ役とワトソン役を女性と男性が演じるという大胆な設定のミステリー作品「エレメンタリー ホームズ & ワトソン in NY」を製作。シーズン1を通して1,100万人が視聴するヒット作となり、現在でもシーズン6が放映されている。

アジアを視野に新たな挑戦

そして、2018年4月から配信の今回の作品「ミス・シャーロック」は、主演の2人が女性で、舞台が現代の東京という、さらに新しい設定で挑む。
日本が舞台の作品でありながら、Hulu とHBOアジアの共同製作というこれまでにない座組も注目される。日本での配信に加えてアジアを中心に19カ国にも同日放送されるということで、日本のコンテンツ・ビジネスの新たな道を切り開くことも期待される。
昨年11月30日にシンガポールで開催された記者会見では日本から世界に発信するドラマとして世界のマスコミから注目を浴びた。

「ミス・シャーロック」を手掛けたのは、「海賊とよばれた男」「MOZU」など数々の大作を手掛けてきた映像制作集団ROBOTだ。編集段階も終盤に入った1月、東京・五反田のIMAGICAで、長年、本作品の企画を温めてきたプロデューサーの村上公一氏と、撮影監督の柳田裕男氏に、国際市場に提供される本作品に対する思いや今後の展望について聞いた。

株式会社ロボット プロデューサー:村上公一

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Profile

1971年生まれ、岡山県出身。サザンイリノイ大学映画学科を卒業後、ROBOT入社。CM制作部を経て、現在、同社映画部所属。映画のみにとどまらずテレビドラマのプロデュースにも携わる。主な作品は、東宝「嘘を愛する女」(18)、テレビ東京「マッサージ探偵ジョー」(17)、東宝「踊る大捜査線」シリーズ(12, 10, 03)、東宝「曲がれ!スプーン」(09)、東芝エンタテインメント「サマータイムマシン・ブルース」(05)ほか。

コンテンツ力を生かし、国際市場へ

自分の出身校であるアメリカの大学の映画学科時代の友人に、どんな映画を作っているかを聞かれても、ドメスティックな市場が中心の作品がほとんどでしたので、彼らが見る機会はなかったんです。いつかは向こうの友人にも胸をはって見せられるものがつくりたいなとずっと思っていました。
最初にお話しをうかがったのは2014年ごろです。Huluはコンテンツとして力があるものを求めていました。そこで大作映画を多く作っているROBOTに「映画のクオリティーでドラマをつくって欲しい」というお話しを頂いたんです。学生の頃から向こうで海外ドラマを見ていて好きだったので、ぜひやりたいと手を挙げました。さらにHBOとの共同製作の話になったときに、アメリカに住んでいたこともあってHBOがどれだけ力があるテレビ局なのかも分かっていたし、あの砂嵐のムービングロゴが番組の冒頭につくと想像するだけで興奮しましたね(笑)。

ハリウッドと闘う覚悟

当初の話からすぐに脚本を開発しましたが、諸事情でなかなか撮影できずにいました。その後Netflixが日本に上陸して来て焦った時期もありましたが「これ以上いいものはない!」と踏ん張って、ここまでこぎ着けました。
配信は世界レベルでの闘いになります。それはそれでやりがいはあります。 今回も、Huluのトップページ上で、他のコンテンツと比べられて、その中から選ばれるようにしないといけないわけです。僕らがつくっているコンテンツのアイコンの隣に、例えばBBCのシャーロックが並ぶ。そのとき、こちらをクリックしてもらわなければならない。そこは闘っていかないと、と思っています。
社内でも、プロデューサーの立場や意見はいろいろありますが、僕は、今回の作品を皮切りに今後、海外展開を意識したコンテンツを増やしていきたいと考えています。いろいろな人とCo Productionをしたいと考えています。

技術面や資金面で、ハリウッドをはじめとした海外のコンテンツ制作はすごいものがあります。そうした作品とどう勝負していくか。近年のホームズものは、ガイ・リッチーがまず映画を最初に作って、BBCがあって、アメリカの「エレメンタリー」があります。日本ではBBC版が大ヒットしたこともあり、どうしてもスタッフやキャストもそちらに引っ張られる傾向がありました。なので、なるべく離そう離そうと意識しました。そこは気をつけましたね。

アジアの死生観が出た作品に

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シャーロック・ホームズという、ユニバーサルなモチーフをローカライズするということで、海外展開しやすい部分がある一方、あまり意識しすぎると作品の良さを消す危険性もあると考えました。2018年の東京が舞台ということもあり、自分たちが今、感じていることを素直に出せば、今の東京、日本人がこう考えているというのが出てくると思ったんです。

そうした中で、ちょっと、ネタバレになるかもしれませんが、全8話を通して撮影・編集まで終わった今、全体を俯瞰して見ると、日本人の死生観が浮かび上がるだろうと思いました。で、それは同時にアジアっぽい精神性なのではないかと思います。もともと原作は英国の小説ですし、世界で一番映像化されているキャラクターですが、死に対する考え方・行動は西洋で作られてきたものとは違うかな。それが、アジアっぽいと思います。

今回、海外放映をするHBOアジアは、HBOのアジアブランチです。ここは放送局なので、同時放送になります。アジアの19カ国で、金曜日のプライムタイムに放送の予定です。そういう意味でも、現代の東京を舞台に、アジア的な死生観が出ている新しいシャーロック・ホームズは注目されるのではと期待しています。

撮影監督:柳田裕男

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Profile

日本の撮影監督。2000年代以降、映画、テレビドラマなど多くの作品を手がける。代表作は「うさぎドロップ」「オリヲン座からの招待状」「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」など。
近作では「君の膵臓を食べたい」(月川翔監督、出演:浜辺美波、北村匠海)、「ちはやふる(上の句、下の句、-結び-)」(小泉徳宏監督、主演:広瀬すず)がある。
日本映画撮影監督協会所属。

森監督との信頼関係

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助手の頃はほぼフィルムで撮影していました。撮影監督になって、2011年の映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」がフィルム撮影の最後ですね。
今回の「ミス・シャーロック」は、森淳一監督から電話でお誘いいただきました。今から10年ほど前に衛星放送のドラマの撮影に呼んでいただき、それ以来、森監督とは何度かやらせていただいています。

撮影期間は、昨年の9月から12月の10日ぐらいまで約3カ月で、全8話を撮影しました。1話あたり45分から50分の尺の作品ですので、スケジュールとしてはテレビドラマよりは少しゆったりしたものでした。僕の体感でいうと撮影の期間は、映画よりは短くて、地上波の連ドラよりは長い。作品の大きさにもよりますが、映画とテレビドラマの中間ですね。

ロケ地は、都内近郊・関東一帯です。 あと、川崎にある閉鎖された体育館に、シャーロックの部屋のセットを組みました。家の外見は毎回、1回か2回出てきますね。まあ、8話あるとロケだけで山ほどあります。台本も準備稿はあるのですが、追いかけあがってきたりする中で、撮影に行きながら合間を見てロケハンという状況でしたね。そういう中で、準備や移動など、物理的にかかる時間をどう効率的にやるかがいつもの苦労ですね。

脚本も一部担当している森監督がメインの演出を務め、それ以外に瀧悠輔さん、松尾崇さんが監督をしています。事前のカメラテスト段階で、ルックについても森監督と議論を重ねました。僕は昔から、陰影があって、背景にハイライトがあるような絵が好きなので、昼間でも部屋の中では窓あかりを背景にして、手前に明るいものを置いて撮るということが多いですね。
作品によって、どんな色を出すとかいう指示はありますが、森監督との撮影は、監督と一緒にルックをつくって、それにOKが出たら割と自由にやらせてもらっています。

現代の日本をフィーチャーした絵作り

今回は、実際に撮影が始まった後に、HuluとHBOが共同で製作するという体制になりました。HBOには、事前に撮影中のカットをつないで短い1分ぐらいの映像を見せました。
この数年、日本でも海外の映画やドラマを見る機会が増えており、ある意味で目が肥えた人が増えていると思います。テレビドラマっぽく撮るという発想はもともとなくて、香港のまちかどっぽく見えたらいいな、とか、海外の人が日本の風景や街並みを撮ったらどう見えるかを意識しています。また、瓦屋根などの日本的なもの、日本の味わいのある風景が入るように考えています。ドラマとしては、そこに日本人がいるわけですが、外国の人をぽんっと置くと、その景色が海外にも見えるような感じを意識しています。

今回の作品では、米国の映画監督、デヴィッド・フィンチャーの作品をイメージしたルックを目指しました。具体的には、色が前に出ない、ちょっと抑えめで、明るさ的にも締まった感じにしています。僕自身、被写界深度が浅いのが好きで、レンズはだいたい開放で撮影しています。ですので、今回は締まったトーンに、被写界深度の浅い映像になっています。

AMIRAとウルトラプライムで撮影

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今回カメラはAMIRAを使用し、レンズにはウルトラプライムのセットと、キヤノンの300mmを用いています。ここ数年は、AMIRAが出てから、映画も連ドラも、ほぼ同じ組み合わせですね。2Kで16:9のHDサイズにして撮影しています。カットによっては、ポストプロの合成処理でリサイズするところなどを3.2Kで大きめに撮影しているところがありますが、ベースとしてはHDです。
今回、場面展開で、黒い髪の毛から背景がダブルエクスポージャーして、次の実景にズーミングしていくといった演出をしていますが、そういうときには、3.2Kで大きめに撮影しています。こうした演出は、森監督のアイデアですが、BBCやアメリカのホームズ・ドラマでも、こうしたVFXのギミックを使うことが多いので、ある程度そうしたことを意識していると思います。物語の中で、いろいろな謎解きをしていくのですが、その見せ方をいろいろ工夫しており、撮影だけでなく、編集も含めて力を入れいている部分の一つです。
AMIRAはフィルムっぽいルックの映像が撮れるので評価しています。最近では、LogやRAWによる撮影方法が出てきていますが、ARRI 709で撮ってもちゃんと映画のルックになっている。今回も709で撮影しています。撮影時に、709のサチュレーションを20%オフにすることで色を浅めにして、あとはちょっとずつ暗めに撮っています。
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AMIRAの場合、彩度をあげていくと赤の発色だけが目立つことがあります。作品や被写体によっては赤が目立ちすぎると感じることもあります。そこで、最初からCC(カラーコレクション)のグリーンを3ポイントあげて撮っています。それによって顔色が安定して、あまり赤ら顔にならないようにしているんです。
僕はいつも、ディフュージョンフィルターにTiffenのBlack Promistを使っています。通常は、Black Promist1/2で、効き過ぎたら1/4にするといったことをしています。この作品に関しては、少しコントラストが欲しかったので、レギュラーを1/4にして、光の抜け、グローが効き過ぎていたときとかは1/8にしてました。
あと、撮影時に欠かせないのが”大五郎”です(笑)。手押しの台車でタイヤドリーにジブアームがついていて、レールの上でも、レールなしでも動かせるんです。三脚にカメラが乗ることはほぼないですね。これで驚くほど早くセッティングができます。
ポスト処理のグレーディングとしては、ほぼ2通りの色の入れ方をしています。一つは、シャーロックの家、部屋のイメージを統一するため、ちょっとシアン・グリーン方向にいく映像をつくっています。残りのシーンは、シアン・グリーンよりはちょっとYに振れて少しグリーンが出るようにしています。この方針で進めたこともあり、グレーディングの時間は実時間の倍ぐらいで進められました。

おもしろい本と良い美術、良い光、そして良い役者

今回の作品も含め、今後、日本のコンテンツが海外へ出て行くチャンスは増えていくと思います。僕は、映画はやはり、本がおもしろくて、良い美術で、良い光で、良い役者がいれば、撮影でそれほどへたを打たなければ、おもしろい良い作品になると思っています。 いろいろな好みやフィルムに対する解釈の仕方があるので、そこは作り手の自由であってもいいと思いますが、あまりそこに懲りすぎてもじゃあ何が生み出せるかということですね。それよりも、美術と役者に力を入れることが今後重要ではないかと思います。特に美術は、1カットでも手を抜いたシーンがあると、見ている人が「うん?」と思った瞬間、それだけで集中力がとぎれてしまうことがあります。今後、撮影機材が発達し、映像の表現技術がさらに向上すれば、そうした傾向はより強くなると思います。

役者は逆に、お金をかけるというよりは、才能のある人を見いだして起用する目利きの力ではないでしょうか。ブルース・ウィリスのデビュー当初のように、最初は誰も知らない役者がいても、面白いから売れるというような。実力がある役者を見出していく目利きの力によって、人材の裾野も広がるし、見え方も違ってくると思います。日本にも、知名度ではなく実力のある人を起用して作品をつくる動きがあります。海外向けの作品でも、そういう人たちが出る機会があるといいと思いますね。

以前、少しだけですが、アメリカ東海岸のメーン州で、フィルムアンドフォトグラファースクールで授業を受けたことがあります。海外では、作品に対する思いや映像に対する考え方が日本の視聴者とちょっと違う。低予算の映画で、昔、ニューヨークのMOMAで招待されて撮ったことがある。ティーチ・インで、あ、そういうところが面白いのか、と思ったこともあります。 今回の作品も、海外の人がどう見るか、ぜひ感想を聞きたいですね。
yanagida

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