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「亜人」 BTS Technical Notes-03

- インタビュー:DIT / カラリスト 星子駿光 -

東京現像所
映像本部 映像部 映像制作課
DI・VFXグループ
データマネージャー / カラリスト
星子駿光

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この「亜人」の撮影現場で非常に特徴的なのは、本編のカラリストが直接撮影現場に赴いて、DITとしてデータマネジメントしていることだ。
それを担当した星子駿光氏は、元々フィルムのテレシネカラコレの仕事から、シネマカメラの台頭とともにDITとして現場にいくことを薦められた。最初にDITについたカメラマンから、仕上げまでやってみないか?と声をかけられ、カラリストへの道が開かれた。DITとカラーグレーディングをこなすハイブリッドな新世代型クリエーターから観た「亜人」の舞台裏とは?

RAWデータと

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スタジオでの撮影時は、東宝スタジオ内の自社の分室で、ロケ先ではホテルの部屋をDITルームにしてデータ管理作業をやっていました。今回収録はARRI RAWで、CodexカードによるALEXA XTの内部収録でした。内部収録になってだいぶ安定しましたね。撮影データだけで60TBほどありました。
カラーグレーディングは全てDaVinci Resolve 12.5で作業しています。実は今回、ALEXA XTとともにALEXA Miniも使用してますが、MiniのRAWだけちょっと特殊なファイル形式のMXFの拡張子になっていて、当時現像できるソフトが限られている時期でした。それがResolve 12.5.4にアップデートしてネイティブで読み込めるようになったときだったので、タイミング的に後処理もスムーズにいきました。
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RAWデータが良いのは、ソフトによって現像設定を扱えるという点です。現像設定から調整できるというのは結構強みで、どうしても撮影条件が悪かったりして救いきれない場合でも、LogやRAW収録ならば救える部分が出てきます。さらにRAWですと、いわゆるカメラ設定を変える感覚で微調整できるので、スタート地点をなるべく理想の方向に近づけてから始められ、スタートの差分というのがLogとの違いとして出てきます。そういう部分で利点を感じるので、RAWで撮っている安心感はありますね。

カラリスト / DIT

カラリストとDITが同じ担当者という利点は色々あって、まず現場でカメラマンのカラーの要求を直にカラーグレーディングに反映できることは一番のメリットです。カメラマン→DIT→カラリストという流れがワンラインのため、シンプルかつスムーズになります。また「亜人」のように合成カットが多くて時間が無い場合は、迅速にデータを出さなくてはなりませんが、そのためにはプリグレーディングをして本番に近い色のデータを渡さないとCGの色味にも大きく関係してきます。そういう時にも、カラリストが現場にいて色を調整してすぐ出せるというのは大きかったですね。撮影現場にカラリストがいるというのはかなり特殊なケースだったと自覚していますが、これはカラリストとしても最終的に楽な方向なんですよね。カメラマンの声を直に聞けますし、現場で仕込みまでできるのでその情報を初期段階から反映できます。そうすると一手二手先にいけるので、よりトライ&エラーを繰り返せたり、細部まで詰めることもできます。スタート地点が変わるので初日のグレーディング作業前のプレビューで、佐光さんからも8割くらいのOKを頂きました。時間が取れた分をよりクリエイティブな時間に割けるので、全体的にやりやすさがありますね。

カメラのガンマカーブの重要性

各カメラメーカーでガンマカーブを決めてくるのですが、僕らが重要視するのはそのカーブの性格です。ALEXAの良さは、ハイに延びてくる飽和の状態や、暗部に締まってくる締まり方とか、そういったものがフィルムの感覚に近いんですね。ARRIがすごいのは、ワンパターンのLog-Cというカーブしか作っていないのに、それが大変優れているところでしょう。Log-CのQTであれ、RAWであれ、その差を感じさせないんです。RAWなのかLogなのかも大事ですが、僕は各カメラメーカーのカーブ特性のほうを重要視しています。

色の方向性

今回グレーディングに至るまでの方法を特殊な考え方で臨んでいて、最初に佐光さんに言われたのが、作品がマンガ原作の映画なので生っぽくしたくないことと、フィルムっぽさは残しつつ、デジタルの良さを思いっきり活かして欲しい、というオファーでした。それはダイナミックレンジの広さやデジタルでしかできない色の出し方です。カメラテストから合成テストなど、色んなテストを重ねたのですが、ノーマルなトーンだと観ている側の人間の意識として、CGキャラクターと実写が同じ世界のものとして見れないという感覚がありました。そこで同じ世界を意識させるため、よりクセのあるトーンをCGにも実写にも被せて、全てスクリーンの向こう側の世界ですよ、という見え方にする方法を採用しました。全体の色のコントラストを強め、なおかつシーン毎の色の振り方もより極端に振っていくアプローチをしています。

本広監督からの要望はとにかくカッコ良く、でした。そしてもう一つ。途中、おばあちゃんが出てくる田舎の日本家屋のシーンは、ほっこりする場面だから、あまりどぎつい色は避けて欲しいと。カメラマンの佐光さんとも色々と相談して、戦闘シーン、特に最初にIBMが登場するシーンとSATのシーンは一番カッコ良くするということでしたが、そのままのトーンを引きずったままほっこりするシーンが出てきてしまうと、観客の意識がそこで切れちゃうのでは?という懸念もあり、意識を途切れさせないような映画全体のバランス調整に苦心しました。
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