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「亜人」 BTS Technical Notes-02

- インタビュー:撮影監督 佐光 朗 -

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撮影監督は「海猿」シリーズや最近では「たたら侍」など大作も多く手がけている、佐光 朗氏が担当。シネスコサイズやIBM(※)の合成シーンなど、CG合成が多い作品撮影での葛藤とは?

ARRI Master Anamorphicレンズ

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なるべくスケール感を出したかったので、やはりシネスコサイズで撮りたいと考えました。あと今回はアナモフィックレンズを使いたかったのです。スタンダードサイズで撮影して上下カットしたシネスコの画と、アナモフィックレンズでのシネスコとはやはり見え方が全く違いますからね。

実は、初めはもっと味のあるオールドレンズを使おうと思ったんです。最初のカメラテストもそれで行いました。しかしそのルックをCG部に見せたところ、やはり「亜人」という作品ではIBM(※)というCG合成素材の登場する場面が1つの見せ場ですし、もう1つの主役であるといってもいい。そうした中で味があってボケ足が良いレンズだと、CGとの相性が合いませんでした。その点、ARRI Master Anamorphicレンズはディストーションも少ないし、あまり偏った個性の少ない、使いやすいレンズです。なのでCGとのなじみもとても良かったですね。また「亜人」の撮影に際して、発表されたばかりの28mmレンズをドイツ本社からわざわざ取り寄せて使用してみました。
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ARRIのMaster Anamorphicはとても重量があるレンズです。「亜人」はアクション作品なので役者の動きにあわせて、かなりカメラを振り回しながら撮影しましたが、そこをアクションだからといって軽いレンズにするというわけではなく、スタビライザーとしてMAXIMA MX30を使用するなどの工夫で、重いレンズでも目一杯振り回して撮影しています。外れたらそれはそれで自然な見え方なので、あとは編集やCG部に頑張ってもらおうと思いました(笑)

カラリストから評判の良いALEXA XT

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今回はARRIのALEXA XTとALEXA miniで撮影、ARRI RAW収録でした。今、大きな作品をデジタルで撮ろうとすると、やはりARRI製品という選択になることが多いです。ALEXAの良さはやはりハイの部分の色数でしょう。他のカメラと一番違いが出るのはフェーストーンだと思います。人間の顔には沢山の色が入っているので、そこが一番カメラの違いが出るのかもしれません。特にALEXAだとポストの処理で、カラリストからの評判がいいんです。
「亜人」の撮影で特筆だったのは、東京現像所のカラリストの星子さんが、撮影現場でのD.I.T.(Digital Image Technician)も兼任して頂いたことです。星子さん自身も原作からの「亜人」ファンであることもあって、今回はかなりルックを攻めてもらいました。色の方向性としてはとにかく発色を良くしたかったのと、CGとのなじみを気にしました。また「亜人」のアニメーション作品の方もかなり実写を意識したものだったということもあり、実写版にもまだできることがあるかなと思いました。また今回の大きな特徴として、アニメーション作品で使用されたIBMの3DCGデータを、制作元に許諾を得てこの実写版にも活用させて頂いたというのもあり、撮影では実写部分とCGとのなじみ具合が一番気にかけたところです。

HDRI撮影

今回はIBMの登場場面に限らず、VFXの合成シーンが多かったため、ほとんどのカットで、その後にすぐCG合成用のHDRI撮影を行いました。各カットが終了後、そのままの体制でVFXのスタッフがHDRIの撮影を行いました。この撮影は本編とは関係ないし、早く次のセットチェンジをしたい各部門からはよく不満も出て、とかく面倒に思われる作業です。今回もとにかく撮影時間が少なかった現場でしたが、スタッフ全員に理解して頂き、各カットごとに必ずこの作業を行うことができました。
実は過去の作品で、時間が無いなどの理由でこのHDRI撮影を行わなかったために、そのカットだけ環境照明をちゃんとCG上で再現できず、結果的に失敗したという苦い経験もありました。今回はここを必ず押さえることに徹して、その甲斐があってか、試写のときには押井守監督にもCG部分の表現を高く評価されていたので良かったです。

※IBM=Invisible Black Matter(インビジブル・ブラック・マター):「黒い幽霊」と呼ばれる亜人から発生する物体
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