JP EN

「亜人」 BTS Technical Notes-01

- 新たな有機的コラボレーティブプロダクションが生み出した意欲作 -

今年も日本映画界は、マンガ原作ものの実写映画化ラッシュだ。近年続くマンガ原作ものは、ある意味、いまの日本映画界を支えているコンテンツといえる。アニメーションと違って実写映画化作品の良さは、原作とはまた別のところにあり、特に旬の人気俳優と有名原作の掛け合わせは、近年どれも一定の興行収益をあげ続けているのは事実だ。85億円を記録した2009年の「ROOKIES 卒業」を筆頭に、「海猿」はシリーズトータルで240億円超えの大ヒット作。その他「テルマエ・ロマエ」「るろうに剣心 京都大火編」、「デスノート」などは優に50億円を突破するなど、興行成績で大ヒットといわれる30億円以上の作品も過去に30本程度はある。一方で原作を愛するコアなファンには、なかなか受け入れられない作品も多いのが現状だが、こうしたエンタメ作品がいまの映画業界の興行を支えているということは事実。もちろん異論反論も多いのだが、海外でもこの実情は同じような傾向にあるようだ。
しかし、一方でこのようなマンガ原作の実写作品の制作舞台裏は常に過酷な現場である。多くの作品はある種のSF的な表現が必須で、実在しない表現を多く含むシーンを持つ。そしてそこには大掛かりな造作と、VFXやCG合成を必要とする。しかも国産作品のどれもがハリウッドほどの予算がある訳でもなく、邦画の標準的な予算のなかで、その世界観を表すのはなかなかの至難の業だ。

「亜人」は講談社の「good!アフタヌーン」で2012年7月から連載されている作品で、2015年からは劇場版三部作としてアニメ化もされた。また2016年には全26話のTVアニメーションとしても放映されている人気作だ。
この「亜人」の実写劇場版が満を持して制作された。
原作の世界観がすでに多くのコンテンツで表現されている中、いかに実写版の魅力を保ちつつ、多くのファンを魅了する作品に創り上げるのか?
そこには現在の日本映画界の中心で活躍しているプロフェッショナルたちが、これまでとは違う新しいカタチでの、スタッフ間のリレーションシップによって、クオリティの高い作品を生み出すシステムが構築されていた。

この映画「亜人」の監督は、かつて「踊る大捜査線 レンンボーブリッジを封鎖せよ!」で、日本実写映画の興行収入(173.5億円)と観客動員数No.1(1260万人)の記録をいまだ保ち続けている本広克行監督。当時まだフィルム撮影だったなかで、いち早くデジタルカメラによる映画撮影を試みるなど、本広監督自身も新技術を意欲的に取り入れて来た監督の一人だ。
今回の制作にあたっても、また次世代型とも呼べる、新感覚のディレクションシステムを取り入れ、関係スタッフを有機的に結合させる制作体制で行われた。その他、関係主要制作スタッフにもその制作秘話を語って頂いた。

「亜人」制作スタッフインタビュー

監督:本広克行
撮影:佐光朗
DIT / カラーグレーディング:星子駿光(東京現像所)
VFX:荻島秀明、宗片純二、侭田日吉(オムニバス・ジャパン)

「亜人」
絶体絶命を、生きろ。

issue004_feature01_body001
issue004_feature01_body003
issue004_feature01_body004

STORY

病気の妹を救うために研修医となった永井圭はある日、事故で死亡。しかし直後、生き返る。死んでも命を繰り返す新人類=”亜人”と発覚し、崩れ去る圭の人生。国家に追われ続け、非人道的な実験のモルモットとなってしまう。そんな圭の前に突如、人類に牙をむく亜人最凶のテロリスト【佐藤】が現れる。
自分の運命に葛藤する圭は、佐藤が描く亜人の未来に共感できないでいた。
やがて始まる、佐藤による衝撃の国獲りゲーム。衡突する人類と亜人、そして亜人と亜人。【絶対に死なない男】と【絶対に死なない男】の終わることなき【エンドレス・リピート・バトル】が始まる。亜人たちは、永遠の命をどう生きるのか―?

本広克行 × 佐藤健 × 『るろうに剣心』アクションチーム集結!
破格のスケールで描く、見惚れるほどの新感覚アクション超大作!

issue004_feature01_body006

「亜人」2017年9月30日公開
原作:桜井画門(講談社「good!アフタヌーン」連載)
監督:本広克行
脚本:瀬古浩司 山浦雅大
音楽:菅野祐悟

キャスト:佐藤 健 玉山鉄二 城田 優 千葉雄大 川栄李奈 山田裕貴
浜辺美波 品川 祐 / 吉行和子 / 綾野 剛
製作:映画「亜人」製作委員会
製作プロダクション:東宝映画 Production I.G
配給:東宝

©2017映画「亜人」製作委員会
©桜井画門/講談社
Official Website: http://ajin-movie.com/

本広克行 監督

ー「任せる」度量ができれば、どこまででも行けるー

issue004_feature01_body008
issue004_feature01_body007

1990年代「踊る大捜査線」シリーズで、TVドラマとその映画化によるハイブリッド作品のヒットメイカーの先駆けとなった、本広克行監督。実は制作面でもいち早くデジタル撮影や最先端のIT技術を活用しており、率先して新技術を現場に取り入れ、常に映像コンテンツ制作の革命を牽引してきた。
映画「亜人」では、主に人的ワークフローの改善によって、ディレクションシステム全体を改革し、すべてのクリエイティブの質をレベルアップさせた。いまの日本の映画界で多くの若手監督が本広組から巣立っているように、スタッフィングの上手さにも定評がある

MOTOHIRO’S VOICE

issue004_feature01_body102
「亜人」では、アクション、撮影、CGなどの細かい演出は各分野のエキスパートに任せて、僕は彼らの良さを引き出す役に徹し、最終的に彼らの成果を集めて、いわゆる「定食」にするというディレクション方法に変えました。「亜人」のように、大きな予算で沢山の人に見てもらいたいエンタメ作品には、このような方法があっていると思います。いままで映画を1本撮ると、本当に身も心もすごく消耗していました。でも「亜人」は別作品の撮影の後、1ヶ月も空けずに撮影に入ったのですが、僕自身も余力が残っている状態で、なんのストレスもありませんでした。作家性の高い作品は別として、エンタメ作品では、自分一人で全てやるよりもこの方が絶対に良い作品ができますね。

いまの本広組の助監督って全員一本立ちして映画を撮れる監督で、全員演出ができるんです。だから僕がすべての現場に行かずとも彼らの演出を信じて任せました。役者も同じように、今回の主役の佐藤健さんも綾野剛さんもニュータイプなので、どんどん自分自身で演技を作ってくる。それを尊重し進めていくと、テイク1でOKというカットが多かった。
issue004_feature01_body101
また「亜人」チームには、日本のアクション界を変えたい!という意識のあるアクション演技のエキスパートが揃っていて、アクション部分の演出はそういう人に任せたので、僕の想像を遥かに超える作品ができた。撮影にしてもVFXにしてもそれは同じで、新しい世代のクリエーターがどんどん出てきてます。彼らを引っ張って任せるのが僕の仕事でした。アイディアとして僕自身が考えたのは「亜人」はコンテンツ的に4Dに向いているなと思い、カット割もシネスコで4Dを意識したコンテを考えました。

クリント・イーストウッド監督も黒澤明監督も、全てのロケ現場に行っている訳ではなかったし、大きな作品になればなるほど独りでできることは少ない。そして日本映画の現場には多くの優れた才能がいて、それを活かさないと勿体ない。逆に、彼らに「任せる」って度量ができたら、どこまででも行けるなと思いました。いまはSNSがあるので、各部門別のミーティングも毎晩呑みにいかなくても、LINEでそれぞれグループを作ってコミュニケートできる時代です。「亜人」の現場でもそれをすごく活用しました。もしかしてこれからの映画監督って、どこにいても演出できる時代が来るのかもしれません。ようやく僕みたいな映画監督が活躍できる時代が来たのかな(笑)。
issue004_feature01_body009
issue004_feature01_body010
issue004_feature01_body012
issue004_feature01_body013
issue004_feature01_body014