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1st View, 2nd Angle, 3rd Dimension-03

- “映像制作プロダクション”の世界基準 ~中から見るか? 外から見るか?~ -

松本 サキ

UP

Assemblage

Alexandre BARTHOLO(アレクサンドル・バルトロ)
アッセンブラージュCEO兼ディレクター

フランス出身で愛称はアレックス。
ディレクターだけではなく、企画、撮影(ステディカム・オペレーション)、カラーグレーディング、編集と何でもこなす。
2007年に銀行の残金15万円を握りしめて訪日し、持ってきていたステディカムで、イベントの会社の仕事を始める。2008年には自身の映像制作会社を立ち上げ、リスト氏との出会いを経て、アッセンブラージュ代表に就任。5年ごとに目標を決め、今後5年以内に映画をプロデュースする目標を掲げている。
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Ben LIST(ベン・リスト)
クリエイティブ・ディレクター

92年、留学で初訪日。卒業してから3年後に再度渡日し、CGやグラフィックデザインの仕事を経て、2000年にアニメーションとモーショングラフィックスをメインにした会社を設立。14年間ほど続けたのち、バルトロ氏とともにアッセンブラージュを設立。
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作る作品はとにかく面白く

ベン: 仕事の内容としては、日本国内からの案件が多いですが、日本に来ている外資の方で、PR担当が外国人だと英語でコミュニケーションが取れるということで、仕事を頂いたりします。仕事のタイプは企業映像やCMもあるんですけど、POS用の店舗フィルムやサイネージ、プロジェクションマッピング的な大型イベント映像といったものもあります。幅広くやっていますが、敢えて言うなら、感覚的に尖った面白い作品、そして“オシャレなものを作りたい”。子供向けの教材でも、ユーモアあって、オシャレなデザイン、とかもね(笑)。

アレックス: 最近はスモールドキュメンタリー(ケーススタディ)が多いです。商品というより、オンラインツールやアプリによくある事例映像です。最近制作したのは、リクルーティングビデオをドキュメンタリーアプローチで作ってみました。それを用いて従業員がどう思うかっていうのを実験したのです。機材は多くを自社で所有していて、その作品ではARRI ALEXA Mini、ARRIのアナモフィックレンズ、そしてスライダーを使いました。

機材の壁はすでに存在していない

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アレックス: なぜリクルーティングビデオにそんなハイクオリティーの機材を? と驚かれますが、ただテクニックをミックスしただけなんです。今はもう、機材に対する壁はないと思っています。(高価で特殊な機材は)昔は、限られた人しか扱えなかったですが、今はARRI ALEXAだって、ARRI AMIRAだって、Angenieux Optimoレンズだって気軽に持っていける時代です。将来的には皆が同じレベルの機材を持っている時代が来ると思いますよ。
機材のスタンダード(レベル)が上がってきているのに対し、製品開発はスローダウンしていますからね。今はスゴくいいカメラが安価で手に入り、若い頃に買ったレンズもずっと使えます。少しずつトップとの差はなくなっていると思います。
また、弊社で自社所有しているARRI Master Anamophicレンズだって、レンズはレンズで年々進化していますが、ずっと変わりません。僕は未だに40年代、50年代のPanavisionのスチールレンズを使っていますが、今も大好きです。10年後も使っていると思いますよ。キヤノンのEFシネプライムレンズも4〜5年前に買いましたけど、これは素晴らしい投資でしたね。一番使っています。

機材レベルに左右されない作品作り

アレックス: 使用する機材が予算に影響されるということはあまりないです。昔はありましたけど、それは作品作りに制限が生まれてしまいます。限られた予算の中でベストを尽くしたくても、機材が使えないとなると妥協しなければなりません。でも、今はレンタルではなく自社で機材を揃えているので、そこを気にしなくてもいいですし、もしプロジェクトの予算が低くても、ベストなクオリティーを出せます。
また、機材を持っていることの強みは、やったことのないハイレベルなプロジェクトに携われることです。例えば、最近手がけた携帯電話メーカー「Huawei」の海外向けPR映像ですが、もし機材をレンタルしていたら、あのようなクオリティーは出せなかったでしょう。映像の最後に、携帯を持っている手が映るショットがたくさんあるんですが、4日間の撮影だけでは撮りきれませんでした。でも機材を持っていたおかげで、「もう1日、別ショットを撮ろう!」と提案することができ、それがクオリティーに繋がったのです。

レンタル事業「equip」

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アレックス: 1、2 ヶ月前から「equip」という名前でレンタル事業も始めました。今はまだ口コミだけでやっています。この「equip」には僕の想いがあります。というのも、10 年近く日本の映像制作業界にいて感じるのは、TVCMのマーケットはすごく狭いということ。限られた会社のみで、新しく参入するのはとても難しい。制作するのも、相応の機材をレンタルするのも大変です。しかし、若い監督や撮影監督だって、機材さえがあればできるのです。僕は、彼らにお金の負担をかけず、業界にアクセスできるようサポートしたい。だからこの事業では大きく稼ごうとは思っていません。すでに何人かのクリエイターが利用していますが、マーケットの値段より下げて、そこから更にディスカウントもしているので、儲けはほとんどありませんよ(笑)。僕たちが重要視しているのは、利益ではなく、若手への投資です。それに彼らが成長する時は、僕たちも一緒に成長することになります。なぜなら「equip」で機材レンタルをすれば、彼らはもう僕らのファミリーですから!機材を貸していくことで、新しい可能性のあるクリエイターを知ることができ、企画を一緒に作ることだってできる。新たなコミュニティーを築くことができるんです。

日本と海外マーケットの橋渡し役

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ベン: 昔はテレビのワンクールっていう束縛があったし、お金もその分しかないとなると、徹底的に日本向けに作るというのは当然でした。でも今は、どうせYoutubeに載せるんだったら、グローバルに作ろうっていう感じになっています。それが当然ぐらいの時代になってる。むしろやらないと損じゃない?っていう意識にもすでになっている。そうなると、やっぱりグローバルなアプローチができる会社に都合がいいと思うんです。
アレックス: ただ、海外もマーケットにしたいっていう日本の会社はあるけど、実はまだそこまで多くない。逆も難しくて、海外の会社で日本のマーケットに何かしたくても、どんなブランドなのかっていうのを同じ感覚で話すことが難しいんです。例えばフランスのコスメティックブランドを日本でPRする時、フランスで撮った映像に字幕を入れます。ルックとフィールは海外のブランドだという印象を与えつつ、日本向けだという印象も同時に作り出さないといけないんです。
ベン: そもそものブランドカルチャーが、最初から共通意識として分かってくれるかというハードルがあります。その要素を崩さずに、日本人にも分かるようにしてもらえたらっていう案件が、当社に仕事の依頼が来るもので一番多いです。特にヨーロッパ系の会社。
アレックス: 日本の制作会社の中で、英語が流暢に話せる人を探すのはまだまだ難しいので、多くの人がアクセスできずにいるとは思います。例えばローカルマーケットにコネクションがある会社があったとしても、海外のブランドの「イメージを守りたい」という意向が伝わらなくて、「これが日本のやり方だ」と言われてしまうんですよね。そこでコミュニケーションができない。そういった問題が起こっているのは事実だと思います。ただ、どちらかが良い悪いではなくて、やり方が違うっていうだけだと思います。もちろん、ちゃんと日本国内用にPRしている海外ブランドもありますよ。でもうまくいっていないヨーロッパやアメリカのブランドがあるのは事実ですね。だから、僕らは双方の、中間的なところに対応できるという強みがあります。語学力や、映像的な文化に対してだけでなく、日本のプロダクションで働いた経験もありますからね。

ヨーロッパと日本のクリエイター層の違い

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アレックス: ヨーロッパの制作事情と比べると、日本はすごくできる人と、そうじゃない人との差がかなりあると感じます。中間層があまりいないイメージです。何でもできる天才的にクリエイティブな人か、すごく良い照明を作る、すごく良いカメラワークをする、といった一つのことにだけ特化した人かのどちらか。ちょっとずつ、あれもこれもできるっていうのはあまりいない印象です。フランスはどちらかというと逆に中間層が多い。ある時は照明、ある時はカメラ、ある時はプログラミング、とか気軽にお願いできます。

ベン: 日本では、尊重なのか躊躇なのか分からない境界線があるかもしれないですね。小さいクルーで、もっと一緒になってやるっていうのが柔軟なのかもしれない。演出家は神じゃないし、天才じゃなかったりもするんですよね。一人の人間だし、周りの意見も聞いて、より良い意見を取り込んで使うっていうのが良い。それによって、コラボレーションが濃厚になれば、やりやすくなることもあります。そういうやり方が好きだし、ビジョンをある程度持っている人や、個性が出せるようなアイディアを持っている人とやるのが楽しいです。

アレックス: 日本ですごいテクニックを持った人を見たことがあります。機材のことやポストプロダクションのことも熟知しているんですが、彼らは基本的に指示に忠実です。もし僕が細かく指示を出せば的確にやってくれると思いますけど、彼らが自分たちにすべてを任せられたら「どうやってこのイメージを良くしていけばいいの?」となってしまう。ガイドラインが必要なんですよね。仕事の受け方、取り組み方に対して、指示待ちだったり。ただ、それだと仕事がやりにくいという訳ではなく、その会社がどんなクリエイティビティを出してくれるかを知ることが必要ということです。僕の意見ですが、ヨーロッパのポストハウスに行くと、エディターはその人自身のスタイルで編集してくれます。日本では、ディレクターはエディターの後ろにいて、どうやってストーリーを構築するかを伝えていかなければいけません。もちろん日本でも良いクリエイターになると、指示されなくても自分たちで決めていきますよね。でも、そういう人は早くに会社を抜けて、皆フリーランスになってしまう。クリエイティブになった瞬間、フリーランスになる。だから、会社にそういう人たちは残っていなくて、探さなければいけないんです。

ベン: エージェントがいる会社に所属するフリーランスの人は多いかもしれない。クリエイターを育てている会社もあるんですけど、基本的に会社に頼んでクリエイターを求めることは難しいイメージです。

目指しているところはAssemble

アレックス: 目指すのは常に違うプロジェクトをやり続けることです。この会社を、一つのことに縛られた会社にしたくない。ドキュメンタリーをやっているのは一つの側面ですし、僕たちは自分たちでファンディングもしています。一つのことに特化した会社はたくさんあります。ポストプロダクションだけ、CGだけ、とか。でも、それはしたくないんです。つまり目指すところは(色んなものの)「アッセンブル(結集)」なんです。ベンは気にしてないみたいだけど(笑)

ベン: 本来、大きな会社がやっているようなスタンスにも近いんですよね。でも、面白いことをしたいっていうのはみんなの共通点です。人の目に止まって、インパクトがあって、見ていて記憶に残るっていうのができたら最高かなって思うんですよね。それがどういうスタイルを取るかっていうのが毎回違うだけです。

アレックス: 新しいプロジェクトに関わる度に、どんどん基準が上がっていると思います。どのプロジェクトも唯一無二ですし、関われて本当にラッキーだと思います。

ベン: 制作している過程の中で、常に自信を持って作品を作っていますが、完璧主義だから、どこかに不満は残るというのは、クリエイター全員の共通点だと思うんだよね。明らかに5年前の作品をいま見ると、見てられない(笑)。でも、完成度はどんどん上がってきている。昔から、すごくクリエイティブな仕事をさせてもらっているなと思うんですよ。結構自由度が高い企画もやらせてもらっているのは貴重な経験です。それをずっとやっていけたらいいなって思ってるよ。

Assemblage

http://assemblage.jp/

Works of Assemblage

Huawei P8 Lite 2017


ヨーロッパ・アフリカ(日本マーケット以外)への展開用として、昨年末に日本国内で撮影した携帯電話Huawei展開用のPR動画です。プランニングから最終納品までクライアントさんとも常に近い距離で作業に取り組むことにできました。素晴らしいスタッフに囲まれた、弊社の中でもトップクオリティー作品の1つです。
監督:Alexandre Bartholo & Ben List
撮影監督:石坂拓郎
照明監督:舘野秀樹
美術:甘粕ユリ
衣装:佐伯勅
ヘアーメイク:浅野加奈
Producer:髙橋洋
CG:Amana inc
Production:Assemblage/Amana inc

The Making of BMW JAPAN VR


BMWバイクのPRコンテンツとしてVR(360度撮影)で昨年夏に撮影いたしました。Nokia Ozoを使用して撮影したのは日本初かと思います(Nokia本社スタッフと直接連絡を取り、配送してもらうことが実現しました)。フランス出身の社内クルー、ニコラス(Nicolas)が編集担当として携わりました。

Discovery Channel Beyond Future


弊社アメリカ人ディレクター、ベン(Ben)が撮影からグラフィックデザイン、編集まで一貫して担当したDiscovery Chanel用のオープニング映像です。2016年プローマックスアジアで「ベストオープニングタイトル」金賞を受賞しました。

PHOTOGRAPHER: 高橋 ケンイチ