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カールツァイス -オーバーコッヘン本社 探訪- 03

- ウィンフリード・シェルレ博士インタビュー -

Yukihiro ISHIKAWA

UP

カールツァイスAG
エグゼクティブバイスプレジデント
コンシューマーオプティクスビジネスグループ
ウィンフリード・シェルレ博士

大学卒業後に最初の職場としてカールツァイスを選び、以来30年以上のキャリアを経て現在カメラレンズ部門のトップを務めるウィンフリード・シェルレ博士に、レンズ開発や4K/8Kへのアプローチ、そしてカールツァイスの現在について話を伺った。

カールツァイスのレンズ作りにおいて、最も重要視していることは?

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コンパクトプライムレンズ

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マスターアナモルフィックレンズ

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ウルトラプライムレンズ

技術的な観点から言えば、常にお客様の声に耳を傾けることが大切で、そのため我々は懇意にしている写真家の方々からよくお話を伺います。我々が注目しているのは、お客様たちが私たちの製品をどのように使っているか? ということです。例えば、我々は(カメラレンズ部門の黎明期には)小さな写真用レンズを作っていましたが、やがて映画用の大きなレンズも作り始めました。つまり「適用」なのです。お客様が私たちの製品を使って何をしたいか。様々なレンズの種類がありますが、それをどう使うかは全てお客様次第です。例えば私たちは現在オートフォーカスのBatisレンズを造る傍ら、映像制作向けのマニュアルフォーカスレンズも製造しています。ただここで申し上げたいのは、私たちはクリエイターに道具に頼って欲しいのではなく、私たちの製品が彼らの「何か新しいものを作りたい」という情熱に応えるものであるということです。情熱に応えるための手段として技術が存在しているのですが、例えばMaster Anamorphicレンズをご覧頂くとわかる通り、あのレンズはかなりハイエンドで、あそこまでのクオリティの製品は他社で達成することは困難でしょう。

フィルム時代と今のデジタル時代とで、レンズの開発でもっとも変化した点は?

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デジタル時代では、映像を大きな画面で見たり、大きく拡大して見ることが出来ます。また光学全体が進化し、それがデジタル時代の一つの要素です。もう一つの要素は、写真でも動画でも多くのチャンス(採用カットの可能性)が増えたということです。昔であれば一枚の写真を撮るのに写真家がモデルを使い、最高の瞬間を切り取る必要がありましたが、今ではもっと簡単です。ビデオを回して、あとから最高の瞬間の一枚を切り取ればいいのです。人々が映像を記録することは未だかつてなかったほど手軽になりましたが、それはツァイス製品を使うお客様にも恩恵をもたらしています。私たちは、プロが使うハイエンド製品であっても、常に使い易いように努めています。私たちのモチベーションの核心は、画質を損なわずに使い勝手の良い高性能な製品を作ることにあります。

4K、8Kといった高解像度の映像では、シャープさと芸術的なルックとの融合が課題です。現在こうした状況でレンズを作る際の問題点は?

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多くの人が2Kや4K、8Kと数字に囚われて話をしていますが、個人的な意見をいえば、それは正しいアプローチだとは言えません。カールツァイスのレンズは8Kでも使えますが、我々は単に一定の品質を提供しているだけで、8Kそのものについては自ら語ってきませんでした。この場合はもっとコントラストに注目すべきなのです。なぜなら、誰も動いている映像のピクセル数を顕微鏡で数えたりしないからです。それよりもレンズがどんな映像品質を提供できるのかが問題です。私は8Kカメラに装着されたCompact Primeレンズが良い解像度を出していることを見たことがありますが、8Kはマーケティング上の問題ではないでしょうか。もしあなたの自宅の居間にあるテレビから2K映像で流れていたら、あなたはそれを良い画として認識するかも知れません。4Kは更に良いかも知れませんが、しかし8Kではそうとも言い切れないのです。お客様にとって、それが良いものだとは思えないのです。8Kを楽しむためにはテレビからずっと離れないないといけませんし、全てのコンテンツは8Kに対応したカメラとレンズで制作されたものでないといけません。8Kカメラでは、コントラスト、低周波の被写体(細かい模様のない被写体の再現性)、低フレア、ハイ・ダイナミックレンジなどに留意せねばなりません。