JP EN

One Point of View

- 初心者のための、オンセットカラーグレーディング -

Kazuya HAYASHI/TECHNICAL SUPERVISOR

UP

オンセットグレーディング

この言葉が目に付くようになって、すでに長い時間が経っているが、最初は「カラーグレーディング」の定義も不確かでした。しかし今では、


“カラーグレーディング=映像の見た目を【多層的】に操作して美しく(美しさの定義は作品の芸術面の意思決定者個々人による)仕上げること。”

そして

“カラーコレクション=映像の見た目を【単層的】に操作し、ホワイトバランスや色合い、ルミナンスレベルの統一をすること。”

と一対になっているものと捉えられています。
上記はこれまでは大きな部屋で巨大なコントロールパネルで行っていた作業ですが、そこに「オンセット」が付くと、『現場』でカラーグレーディングをする、ということになる。
(しかし、念のため付け加えるなら、頑張れば(オンセットでも)スタジオと同じ事ができますが、時間的制約、視聴環境の問題から完全に同じ作業を求めてはいけません。オンセットで事前に求める方向性を作っておくことで、ポストプロダクション作業を圧倒的に早く進めるためのアシスト、というように捉えてください)
オンセットグレーディングを担当する人は、デジタルイメージテクニシャン=DITと呼ばれる人たちです(オンセットグレーディングだけを担当する人とDITが別々な時もありますが、ほぼ同一人物が担当)。ジェネラリストとしてデータをマネージメントし、ルックも決め、ラボとの連携もするのがDITの仕事です。

DITの成り立ち

issue001_tips_body001
“Into the Deep” よりissue001_tips_body002

“Into the Deep” | Output film of Sony internal seminar | Sony Professional

そもそも、DITというポジションは、どこから来たのか。その理由の一つは、VE(ビデオエンジニア)の進化形と捉えることで分かり易くなります。映像がフィルムからビデオに切り替わったとき、ルックの統一と映像信号を正しく放送基準に適合させるためにビデオエンジニアという職種が生まれた。その後数十年が経ち、2000年以降デジタルシネマの波が押し寄せてきた。そしてこの数年でRawやLogで撮影することが一般的にもなってきました。
こうなってくると、IRE 0~110の波形で見ていただけでは、ポスト作業との乖離が起こるようになり、映像の仕上がり(品質)が担保出来なくなってきます。また、記録メディアがテープからメモリーに変わったことで、素材の安全確保も必要になり、一気にやることが増えました。
VEの守備範囲よりも広く、映像表現の中核に関わらざるを得ないために、広範囲な知識が必要なり、ジェネラリストとしてのデジタルイメージテクニシャン(DIT)、という事で進化したのです。もう一つの理由は、VEから進化した人と対象的に、ジェネラリストとして途中から突然変異した人たち。カラーリストであったり、編集マンであったり、そういった人たちが時代の要請によって現場に出て行き、DITとして定着したのです。

今後求められるであろうDIT像

issue001_tips_body003
“Into the Deep” よりissue001_tips_body004

オンセットグレーディングでは、求められるルックを提供する、という大前提があります。そのルックを提供すること、データをマネージメントすることだけでも相当なエネルギーが求められ、あっという間に一日が終わります
そうしたことも手伝って、これまでDITが担っていたことは、多くはデータマネジメントであり、カラーグレーディングといっても、その実はカラーコレクションであったりしてきました。
しかし、今後DITに求められるものは、ハリウッドなどの傾向がそうであるように、DPや監督との対話を重視し、セカンダリを駆使して突っ込んだ表現を提案をしていくことでしょう。

監督やカメラマンの要望により、まずはルックを決めていきます。
そうした中に、
・要望されたままのルック
・要望されたルックよりも、ちょっと尖ったルック
・要望されたルックよりも、あえて引き算したルック

こうした提案をして、積極的で且つ前に出過ぎない(重要!)一歩引いた距離感で客観的に作品の可能性を広げていく一助を担うわけです。当然、ラボとも連携し、現場で確認したルックを最終仕上げまで届けられるように進行を管理する。
VFXチームへの素材の受け渡しは、プリグレーディングしたものを渡すのか、それともLUTを渡して、ある程度までルックを揃えて上げてきてもらうのか
そうしたポストチームとのパイプラインの設計もDITの仕事の範囲です。

最近のオンセットグレーディング事情

issue001_tips_body005

広告の世界では、撮影から仕上げまでの時間が年々短くなっています。
Log撮影でクオリティを担保しながら、それでもすぐに素材が欲しい、という要望に対するスピード感の必要性。
そんなときに、オンセットグレーディングでは2つの道が現れます。

現場決定(撮って出し)
微調整で仕上げられるように現場で詰めれるところまで詰めて、要らない色成分はドンドン抜き、コントラストも作品全体を見通して揃えていきます。DITの好みも提案できる楽しい現場になるはず。

後処理重視(あとでもう一度詰める)
一番多い現場。カーブを締めすぎない。それでいて、伸ばしすぎない。
中庸であることを目指しながら、それでいて、ハッさせるようなワンポイントをつくること。

どちらにしても、どうしても安全策で浅く眠い絵を作りがちですが、黒を大胆に締めて、そこからどれだけ緩めるか、というのが最終的には上手く作品を仕上げるためのコツでしょうか。

次回は、具体的なツールについて、触れてみたいと思います。