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マスターアナモフィックからコンパクトプライムレンズまで
世界のユーザーへの信頼の中心がここに!

カールツァイスのレンズメンテナンスサービスおよびトレーニング

カールツァイス(以下ツァイス)のオーバーコッヘン本社には、年間数多くのシネレンズがメンテナンスサービスを受けるために送られてくる。これらはいわゆる“本社送り”と呼ばれるもので、レンズが使用されている各国の現地レベルではメンテナンスが困難だと判断されたものが多い。工場の壁には、世界から送られて来た様々な重症レンズの写真が貼ってある。永年の撮影による摩耗はもちろん、落下や水没、なかには銃撃など(カメラマンは無事だったのか?と心配になるような…)など、様々なコンディションで入院してくるレンズの写真が貼られていて、その仕事量の広範さと多さとを物語っている。

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ツァイスのレンズメンテナンスサービスはオーバーコッヘン本社だけでなく、世界に3箇所ある認定サービスセンターのほか、規模の大きなレンタル会社や一般のサービス会社でも行われる。それら社外のレンズ技術者たちの研修のために、ツァイス本社ではレンズのサービストレーニング(修理研修)を行っている。

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ツァイスのシネマレンズは「Compact」「Ultra」「Master」の3プライムシリーズ、そしてCZ.2シネマズームとMAマスターアナモフィックレンズがあるが、それぞれメンテナンスに求められる技術精度の高さは異なる。

トレーニングはコンパクトプライムを確実にメンテナンスすることから始まるが、マスターアナモフィックレンズともなると別格だ。極めて高い技術力が必要とされ、オーバーコッヘン本社の中でも同レンズのメンテナンスができるのは僅かに数人のみという。

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トレーニングを統括するカスタマーケアセンターのSimon Sommer氏によれば、トレーニングは4段階に分かれており、レベル1は半日コースでレンズの基礎知識とフランジバック寸のチェックと調整方法、レンズのコンディションの評価について学ぶ。レベル2は1日コースでレンタル会社の技術者向けのコースでコンパクトプライムおよびウルトラプライムの前後玉の交換と基本的な部品交換を学ぶ。レベル3は2日半で社内に整備部をもつレンタル会社の技術者向けで、コンパクトプライム、ウルトラプライムおよび一部のマスタープライムについて分解・再組み立て・調整を学ぶ。レベル4は3日コースでコンパクト・ウルトラ・マスター各プライムレンズに加えてアナモフィックレンズやシネマズームレンズの分解・再組み立て・調整を行い、ツァイス純正工具や検査機器の操作についても習熟する。

上記4レベルのうち、レベル1から2はツァイス技術者が依頼のあった国に出張して開催され(年間約30人が参加)、レベル3と4は合宿形式でオーバーコッヘンにて行われる(年間受講者は約70人)。つまり毎年約100名程度のテクニシャンが、ツァイス直伝の整備技術を学んでいる。

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今回の取材時にはたまたまレベル4のトレーニングが開催されており、4〜5名の少人数制で朝9時〜16時まで3日間みっちりトレーナーが付ききりで指導にあたるという(受講料は一人2,000ユーロ:取材時)

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世界で行われるレベル1と2のトレーニングは各国の販売店や機材レンタルショップを借りて行われるが、その前後日には、毎年発売されるツァイスの新しいレンズとその構造の解説も随時行なっており、新製品の技術的啓蒙の意味も含めて世界巡業は毎年行うという。

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Simon Sommer氏は、シネマレンズのトレーニングを統括しているがトレーニング専任というわけではなく、入社後は組み立てラインに入り、その腕を買われて現在のサービス部門に移り、主にレンズの部品調達を担当しつつサービス技術の啓蒙活動の一環としてこのようなトレーニングも行っているのだという。

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サービス部門を見学して気が付いたのが、こうした複雑な構造のレンズ内部に使用される各種グリスの塗布作業は機械化が難しく、現在でも技術者の手に任されているものが多いということだ。またネジやスクリューを固定するロックタイト剤や、それを分離・分解するために使用する溶剤には高純度のものが使用され、一部のレンズの固定にはUV硬化接着剤が用いられている。こうしてツァイスのシネマレンズのメンテナンスに用いる工具や薬品は、すべてツァイス本社から世界の各拠点に提供され、ツァイス品質のサービスが世界どこでも受けられるようなバックアップ態勢が敷かれている。

Photo:田中誠士(fulfill)