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歴代VARICAMのVFR機能が活躍! 昭和・平成・令和と続く、特撮番組『仮面ライダー』制作の裏側に迫る

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倉田 幸治 / Koji KURATA(撮影/右)
植竹 篤史 / Atsushi UETAKE(アップサイド/左)

現在、テレビ朝日系で放送中の「仮面ライダー」シリーズ。
長年子供から大人まで親しまれているこのシリーズは、1971年(昭和46年)からスタート、昭和、平成そして令和へと続き、いまやTV番組だけでなく映画、ウェブ配信などでも展開されている。日本人なら誰でも知っている、石ノ森章太郎のマンガ原作の特撮ヒーロー番組だ。
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この撮影は、2000年代前半にフィルムからデジタルシネマカメラへと進化。
『ファイズ(555)』の劇場版『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(2003年8月公開)で、初代VARICAM AJ-HDC27F(2002年2月発売、以下27F)をテストし、その良好な結果から翌々年の2005年からテレビ放映でも採用されている。 VARICAMの当初からの特徴であった、VFR(バリアブル・フレームレート)を駆使し、キャラクターの動きを少し早く見せるための22コマ撮影など、いまや仮面ライダーの演出には欠かせないカメラシステムになっている。 現在放映中の初代令和ライダー「仮面ライダーゼロワン」では、VARICAM LTをメインカメラに採用。仮面ライダーシリーズで長年撮影を担当されてきたカメラマンお二人にお話を聞いた。

デジタルシネマカメラの黎明期から活用

倉田:僕は『クウガ』(2000)からやってまして、その前は、16mmフィルムで撮っていたんですけど、実はそのころからやっています。フィルム時代には、コマ数を変更することでスピード感を出していたわけですが、ビデオカメラは当初対応していなかったんですね。シャッターでやるとばらつきが出たり。編集でやってもカクカクするとか、表現としていかがなものかというところに、ちょうどパナソニックのDVCPRO HD カメラレコーダー AJ-HDC270Fが出て、60コマのハイフレームレートの表現ができるということで、仮面ライダーが食いついていったということです。最初に映画『突入せよ!「浅間山荘」事件』(2002年、撮影:坂本善尚)でも採用されていますね。VFR(バリアブル・フレームレート)がビデオで出来るっていうのにはびっくりしました。 フィルムのころはやっていましたが、当時まだビデオでは24Pもまだまだ定着していない頃で、ハイスピードもできなかったですからね。
『仮面ライダー 響鬼』のときは、まだ59.94iと30Pとが混在して撮影していたんですよ。放送局の納品にはインターレースで、合成チームにはプログレッシブ。それに加えて、ハイフレームレートは60Pで撮っていたりと混在して、一番の過渡期でした。
仮面機材リスト Jpeg
仮面ライダーでのカメラ変遷を見ると、それは実にVARICAMの歴史でもある。
2010年ごろから、P2 HD カメラレコーダ AJ-HPX2700Gが出て、P2システムをデータカメラシステムとして採用、その後オフライン・オンライン編集から、現場の撮影まで、P2カードの使用へ。一時期はARRI社のALEXAを使用する時期もあったが、時代は4K化へ進むに伴ってVARICAM 35に変更。4KでVFRが撮れるカメラ=VARICAM 35は仮面ライダーシリーズのメインカメラになった。

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P2システムでワークフローを大幅改善

植竹:僕がレギュラーでやり出したのは、『電王』(2007)からですね。
『龍騎』(2001)で1度だけ、新卒で助手として携わりました。毎年シリーズごとにカメラの選定会議はやります。カメラをどうするかは毎年仕切り直します。
倉田:2010年ごろは当初4Kが必要か、という議論もあったんですが、監督が4Kで合成素材を撮りたいと。
当時のALEXAはHD/2Kだったので、2015年の『ドライブ』のときに、VARICAM 35とHSのラインアップがパナソニックから発表されたので、ちょうど切り替えるポイントだということでカメラを変更しました。
しかし仮面ライダーの現場は機動性勝負なので、大きいカメラはイヤでした。
なんとか小さくて良いカメラをと探していた時に、VARICAM LTが出たのです。
LTは4Kのハイフレームレートは上がらないですが、2Kで4:2:2 10bit収録が可能で、ハイフレームレートも最大240fpsまで上がる。
仮面ライダーのコンテンツには充分だと思ったので、じゃあ、2台ともLTにしてくださいということで、今日に至ります。撮影はほとんどアクションなので、カメラは小さい方が楽ですね。手持ちでいろいろ走り回ったりしなければならないので。

仮面ライダー=22コマ撮影

倉田:フィルムのころからお芝居を撮影するときは24Pで撮っています。
キャラクターのアクションを撮影するときは22コマです。
ビデオの頃はハイスピード撮影ができなかったので、シャッターを上げたりとか、いろいろ工夫していました。
今年のゼロワンでは、21コマや20コマも試みたことはあります。その2コマだけでも、動きがクイックになるんです。 これは仮面ライダー撮影において伝統的なものですね。
植竹:いまは撮ってすぐ、その場で見れるので、もっとスピード感がほしいときは、じゃあテストで18fpsとかもやってみることもあります。
22fpsと21fpsでも、全然ちがうんですよ。アクションや長さによって。現場で試してます。
VARICAM LTはバリアブルフレームレートで撮って、その場でテストできるっていうのが一番いいんですよね。現場でプレビューができるというのは演出に直接関わってくるので、監督たちは大喜びです。
植竹:いまは撮ってすぐ、その場で見れるので、もっとスピード感がほしいときは、じゃあテストで18fpsとかもやってみることもあります。
22fpsと21fpsでも、全然ちがうんですよ。アクションや長さによって。現場で試してます。
VARICAM LTはバリアブルフレームレートで撮って、その場でテストできるっていうのが一番いいんですよね。現場でプレビューができるというのは演出に直接関わってくるので、監督たちは大喜びです。

 

多彩な合成シーン

仮面ライダーで重要なのは、合成シーンのカット。
当初は編集で後からコマをあわせたデータを合成チームに渡していたが、コマをあわせる作業が大変で、作業スピードがあわなかったという。
これが今のVARICAMシリーズになった2016年以降は、ネイティブで指定したLUTとともに合成チームに渡すことで、コマに対して光をつけるといった細かい対応もスピーディになっている。
それまでは、ラボも絡めて変換・統一して、フレームレートが正規のものに上がってるまでに、中一日から2日かかっていたものが、現在では撮った翌日には仕上げ作業に着手出来るようになった。

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膨大な撮影量と多彩なアクションシーン

現在、仮面ライダーは、テレビ番組を年間50本走らせている間に、裏では劇場版3本を撮影。それ以外に、ウェブ配信向け、出版社向けなどのサブコンテンツが同時に走っている。

倉田:一日何百カットも撮るのでGH5をジンバルにのせたものをセカンドカメラとして使っています。しかも、カメラを上にしたり下にしたり、走り回ったりしているので、撮影自体が労働力的に負荷が大きいので、小さい方がいいですね。
しかも、この20年間、毎日のように撮影をしていますから。
植竹:基本、メインはこの2名と数名のカメラマンで撮影してます。
amazon primeは別ユニットですが、仮面ライダーをやっていたメインのチームが分かれてやっています。監督も仮面ライダーを前に撮っていた監督です。
全部ワンユニットで行けたらいいんですが、時間的になかなかそうはいかないので。もちろん初めてやるスタッフもいるので、そういうときはノウハウを教えて、情報を共有しています。
かなり特殊な撮り方もしてますし、カメラの周辺機材も仮面ライダー用にオリジナルなものを色々と作ってます。
レンズのスレスレでアクションしたりするので、手製のオリジナルで横幅がないマットボックスを作ったりしてますね。

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最新技術を積極的にワークフローに導入

ある意味、仮面ライダーの撮影はワールドスタンダードではない。ハリウッドのスタッフが見学に来ても、彼らと比べて、100分の1コストと時間で仕上げていることに驚かれるという。現在収録コーデックは、AVC-Intra 200Mを使用。さらにハイスピードにfpsが上がってくるとAVC-Intra 100Mにする。ワークフローの改善として大きいのは、ネイティブのデータを合成シーンで一緒にして作業できる環境になったことが大きいという。これによって今までデータ変換していた時間を省くことができ、なおかつ、コーデックが軽いので、コンピュータの負荷がかからない。仮面ライダーの現場は、常にデジタルシネマ・テクノロジーの先駆的な現場なのだ。

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カメラ選定で重視するワークフローにおけるデータ共有

常に最新のカメラを投入している仮面ライダーの現場だが、最新機種を投入する際に最も注意している点は、技術的なことや数値以上に『現場とデータを編集するオフライン、オンライン、合成チームが全ての人がネイティブでデータを開けることができるのか?』ということを前提にAVC-Intraコーデックを選んでいるという。
各部署が違う開き方になってしまうと、現場のイメージが編集にスムーズに伝わらない。
過去に、特定のカメラはこの編集機では読まないとか、PCで開けられないこともあり、非常に現場は困惑したという。

植竹:最近は監督が、ドローンなどを含めて面白いカメラを使いたいっていうケースが増えましたね。現場としては色々なものがごちゃまぜになっているのを、もう少しトータルに同じ画質でいきたいんですが、そういう意味では、仮面ライダーはかなりいろんなカメラを突っ込んでますね。ただ、今のところそのキーになっているのはパナソニックのカメラです!

仮面ライダーゼロワン ポスター
©️2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映