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X-T3 × MKX × HANANINGEN

- 富士フイルム XシステムとMKXレンズの価値 -

高橋 拡三(Cinematographer)

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富士フイルムのシネズームレンズMKXが一眼ミラーレスを用いた映像撮影でどのようなメリットがあるのか?そして映像に対してどれほどのクオリティアップをもたらすのか?このレンズが発売されてから非常に興味を持っていました。
私自身が写真と映像のどちらも撮る、いわゆるハイブリッドフォトグラファーで、写真も映像も一眼ミラーレスと主に「スチルレンズ」で撮影します。しかし動画撮影する際のフォーカスリングの回転角やブリージングによるピント移動による映像品位の低下など、いくつかの不満点や課題がありました。そこを解消するにはやはりシネレンズへのステップアップが必須となるのはわかっていましたが、通常のシネレンズといえば巨大で高価になります。価格はともかくも巨大で重量のあるレンズは、ワンマンで写真撮影と動画撮影を同時並行的に行うこともあるハイブリッドフォトグラファーの撮影スタイルとしては導入が難しいものです。
そういった撮影スタイルと事情をXシリーズの一眼ミラーレス専用に開発されたコンパクトで軽量なシネレンズMKXは解決してくれるのではないか?という期待とともに今回その組み合わせで撮影に臨みました。

HANANINGEN 撮影

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フォトアーティスト / フラワースタイリスト 高野 崇氏

今回の撮影にご協力頂いたのは、沢山の花で被写体となるモデルを特徴的にデコレーションすることで人気の「HANANINGEN」。その広島拠点である、Studio FRAGILEの代表/フォトグラファーの高野崇さんです。撮影は高野氏がX-T3とXシリーズの「スチルレンズ」を使いモデル写真撮影を行い、同じ現場で並行して私がX-T3とMKXの組み合わせで、映像撮影とドキュメンタリー的なBTS撮影を行いました。
そのような撮影状況のためメインである写真の撮影に通常のストロボではなくLEDの定常光を用いています。定常光を用いてライティングを設計することによってモデルを写真でも映像でもそのまま同じライティングと光の質で撮影をすれば、写真と映像のテイストを揃えることが可能になるだけでなく、写真と映像をスイッチする際にもライトもそのまま、もしくは大きく変える必要がないので、素早く効率的な撮影が出来るようになると考えました。
写真と映像のテイストと方向性を揃えるのに、ライティングだけでなく今回ボディが同一のX-T3という点も大切な要素でした。そこで写真用のX-T3と映像用X-T3は同じフィルムシミュレーション(ETERNA)、WB設定を揃えて使いました。
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富士フイルムのカメラの優れた点の一つですが、写真と映像の両方を撮る際のカラーグレーディングの困難さもなく、そのままで使える写真と映像として同様の色やトーンを期待できます。こうした撮影条件では非常に助かる性能です。

X-T3の動画撮影機能

X-T3 & MKX 機材
今回使用したX-T3は、X-T2やX-H1でも素晴らしかった画質がビットレートを高めたり、新たな圧縮方式を採用したり4K/60Pが加わったりと着実で大きな進歩が見られます。

X-T2やX-H1でももともとフィルムシミュレーションを使えばポスト作業に頼らなくても雰囲気の良かった映像であったし、他社の同様のスペックのカメラに比べ不思議とカラコレ耐性の高かったものが、さらに本格的なポスト作業にも耐えうる映像データで収録できるようになりました。
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今回4K/60Pで撮影しましたが、F-logも外部収録も使用せず最も手軽な機材セッティングとベーシックなフィルムシミュレーションを使ってビットレートも標準的な画質設定で撮影を行いました。そのままでもこれまで以上の画質です。ただし、ポスト作業では、H.265の採用やデータ量の豊富なファイルになったことで、むしろ私の使用しているiMacとFinal Cut Pro Xでは従来よりも負荷が大きいという結果でした。

マニュアルレンズでのX-T3の使用に関しては、ほぼネガティブなポイントは見つかりません。AF全般、コンティニュアスAFは前機種に比べるとかなり進化していました。追加要望としては、ソニーαシリーズに付いているような、MF設定にした状態で動画録画中に必要な時だけAF作動できる機能などはあります。

全体的には画質のブラッシュアップが大きく、その他動画撮影に関わる機能も順当にアップしている印象でが、IBIS(ボディ内手ブレ補正)が装備されていないのがX-H1との大きな違いですが、画質面だけを見ればX-H1を超えてしまっている部分があります。どちらにするかは画質面だけでなくIBISが必要かどうかなどに左右されるでしょう。

ETERNAの魅力

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Xシリーズでは、 ポジフィルムやネガフィルムで撮影をしていたフォトグラファーには慣れ親しんだ、フィルムを選ぶよう使えるフィルムシミュレーションが大きな魅力ですが、映像用のフィルムシミュレーション「ETERNA」の設定は映像撮影の際の基本になりうるものだと感じます。
素直で柔らかいネガのトーンに似て、一見個性が無いように見えてそのままでも雰囲気があり、ポストで味付けする際にもやりやすいと感じます。光の色や強さに対しての反応が一貫して違和感のない写り方をする点が特に気に入りました。私自身、正直なところ最近のXシリーズでの動画撮影では、ほとんどETERNAを使用しており、明確なイメージがマッチした時だけClassic Chrome と使う感じになってしまいました。
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今回の撮影では、スチルのX-T3でもETERNAを使いましたが、他のフィルムシミュレーションと合わせてネガフィルムのバリエーションのような感覚で使いたくなりました。

MKXの優位点

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このシネレンズの大きな長所は、レンズごと、焦点距離ごとのそれぞれのカットの描写や色の一貫性があるという点です。今回のMKXについていえばズーム2本だけでかなりの画角をカバーしてしまうので、ちょっと目立たない特質ですが、撮影素材中に数カットだけスチルレンズで撮影したカットがあって、それはさほど目の肥えていない私でもそれがスチルレンズでの撮影カットだとすぐにわかるくらいの差異がありました。
最終的にグレーディングするにせよ、いろんな要素で起きる撮影カット毎のバラツキ要素も、まずはMKXのようなシネレンズであれば排除できるとも考えられます。
X-T3のボディに装着したMKXは、感覚としてスチル用ズームレンズでいえば70-200F4くらいの感覚です。今回は動画用に最低限の装備としてマイク、せっかくのギヤ付きフォーカスリングなのでフォローフォーカスを装着してやっと映像撮影っぽいスタイルになりました。それでも本格的な動画専用機に他のシネレンズを装着したものと比べると圧倒的にコンパクトで軽量なため、普段スチルレンズで映像撮影する際に使っている三脚やスライダーなどサポート機材で十分でした。
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焦点距離やレンズによって結構描写の個性の違いのあるスチルレンズに合わせて、カメラ側の設定を合わせていくことも可能かもしれないし、逆にそれをきちんと計算して使うこともあるかと思います。でも経験上言えるのは、そういうカメラ設定の変更や作画意図もなく、ただ画角に合わせてお気に入りの「数本のスチルレンズ」を使って撮影した素材を後で見ると、その違い=ばらつきにグレーディングするのが気が重くなることがあります。生粋の映像系の方々には当たり前のことかもしれませんが、スチルフォトグラファーには実は目から鱗的な気づきなのです。
単焦点シネレンズにしろ、MKXのようなシネズームレンズにしろ、映像製作に使うレンズが優れている点はフォーカス機構やズーム機構などメカニカルな部分だけでなく、最終的に一つの映像として編集してまとめるときに各カットのトーンや描写、そして色が共通したものにコントロール出来ることであることが、このMKXを使用して一番強く感じました。

動画撮影を意識したリニア設定

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富士フイルムのXシステムが映像撮影に対して深く考えているなと感心したのはX-T3側でレンズ駆動特性をリニアに設定が可能な点です。フライバイワイヤーで動作するAFレンズでも、リニア設定にすればフォーカスリングを回した量に比例してフォーカスが移動するので、シネレンズ的なフォーカス送りの動作と操作感覚が得られのは素晴らしいアイディアです。映像撮影においてMKXと一緒にスチルレンズも使う際には、フォローフォーカスでの運用に非常に有効だと思います。
MKXレンズは、スチルフォトグラファーがスチルのシステムを活かしつつ本格的な映像撮影へシステムをレベルアップする際に最適なレンズだと思います。
また、ちょっとした興味本位の試みでMKXでも写真を撮影しました。フォーカスを急ぐときにはシネレンズゆえのフォーカスリングの回転幅が足かせになることもありますが、それ以外の点ではズームによる焦点移動(ブリージング)がないことや、元々の高い光学性能とシネマレンズ的なピントの立ち上がり方など写真撮影もこれでいいのでは?と思ってしまうほどの魅力がありました。AFの必要がない撮影に限っていえば、MKXがあれば大抵の写真撮影はこなせてしまいそうです。
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MKXの長所

・シネズームとして小型軽量
・マクロ機能
・価格
・Xシリーズをスチルのシステムとして使用しているフォトグラファーが映像に参入する上で最適なシネレンズ

MKXの短所

・他のマウントのカメラでは使用できない
・広角側がもう少し欲しい(ほかにもう一本超広角域があっても良い)

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MKX 18-55mm T2.9製品サイトはこちら
MKX 50-135mm T2.9製品サイトはこちら