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スチル専用機だけではもったいない!

- ソニーα9の映像カメラとしての素質 -

田中 誠士 / シネマトグラファー

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ムービーカメラとして、ソニーのα7SⅡというセンセーショナルなミラーレスカメラが活躍している。すでに多くの映像制作者が触れ、場合によっては所有していることと思う。私もこの数年、αを積極的に活用しているユーザーだ。昨今のソニーのEマウントのミラーレスカメラの躍進には目を見張るものがある。プロの現場にもアクションカメラ的な扱いで導入され、ときにはミュージックビデオなどでメインカメラとして大活躍している。

2017年4月21日、ソニーから唐突にαミラーレスとしての最上位モデル「α9」が国内発表された。発表時期が「NAB Show 2017」の直前であることから、当然のごとく映像向けの新機能に期待した。しかし実際には、秒20コマの高速連写とAF性能を売りとしてスチル撮影に重きをおいたキャッチコピーでリリースされた。そのため、一見すると、α9は映像業界には関係のない機種のように見えた。だが、このα9というミラーレスカメラは、今後のEマウントミラーレスの未来が見え隠れする機種なのではないかと感じている。

即戦力としてテスト

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6月初旬、米国ロサンゼルスで開催するCine Gear Expo取材の撮影担当でハリウッドを訪れていた。主にスチルメインのワンマン撮影だったが、インタビューロケもあり、個人的に購入したα9をメインカメラとし、サブカメラにはα6500を持ち込んだ。αは小型軽量であるため、海外ロケに大きなアドバンテージがある。
私は発売日当日にα9を購入した。その後、いくつかの企業VPの撮影現場で”サブ機”としてα9を持ち込んだのだが、そのときα9が持つポテンシャルを感じた。
Cine Gear Expoの取材後に別件で訪れたアリゾナ州の砂漠地帯、アンテロープキャニオンやモニュメントバレーへ訪れ、そこでもα9の可能性を感じることができた。

仕事上、Eマウントのカメラを多用している。αシリーズでは、α7RⅡ、α7SⅡ、α6500を、シネマカメラではPXW-FS5を購入している。もともと、フィルム時代のミノルタαからのファンであったのだが、ミラーレスとなって新しいセンサー時代に往年のレンズ光学技術の融合ともいえるEマウントカメラが魅力的だったこともあり、ミラーレスもα7の初代から持っている。初代はα7、α7S、α7Rとシリーズが広がり、さらにMark IIへと進化してきた。その流れでリリースされたα9だが、今回の取材旅行を通じ、カメラとしての基本性能が大きく進化していることを感じ、スチル専用のカメラとしてだけ扱うにはもったいないのではないかと思った。

ミラーレスカメラとしての進化

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カメラに求めるポイントは、解像度や色深度やコーデックといった面は当然ながら、EVFの完成度、バッテリーライフ、耐久性、剛性感などがある。
ミラーレスカメラは非常に小型でありながらも素晴らしい画質をアウトプットしてくれるが、一方、バッテリー寿命については決して褒められたものではない。α7の致命的な弱点の1つといって良いと思う。
しかし、α9ではバッテリーが刷新され、これまでのNP-FZ50に比べてNP-FZ100は容量が約2.2倍ある。実際に今回の取材の旅では、体感的にはα7SⅡの約3倍近くバッテリーが持つと感じた。外付けバッテリーを付けることなく、コンパクトな本体だけで1時間を超える動画取材もこなすことができたのは非常に大きなアドバンテージである。
ある撮影では、Freeflyの3軸ジンバルMoVI M5 にα7SⅡの構成で撮影する予定だったが、撮影内容が急遽変更となり、長時間撮影が必要になった。このとき、とっさの判断でα9に載せ替えてピンチを乗り切った。こうした経験からも、バッテリー寿命の改善は大きなポイントだと感じている。

このEVFで撮りたい

EVFという面でも強化されている。画素数が370万ドットの有機ELとなり、α7SⅡでの236万ドットに比べ高精細であり、実機を覗いた時にその品質にやや驚いた。接眼レンズはZEISS T*コーティングがなされており、クリアな視界が保たれている。輝度についてもα7SⅡ対比で2倍になったということで、EVFの品質は十分に実用範囲となった。4KシネマカメラであるソニーPMW-F55には、有機ELのEVFであるDVF-EL100が搭載されている。私は個人で同機を所有しているが、哀しいことに4K収録時のピントを追いこむときの見やすさはα9のEVFのほうがずっと良いと正直、感じてしまった。
私が今、最高と思っているEVFは、LEICA SL の内蔵EVFだが、その性能にかなり近づいたともいえる。LEICA SL のEyeResファインダは約440万ドット。まさに「このビューファインダーで映像を撮りたい」という衝動にかられるほどに良くできているEVFだが、α9のEVFにもその「ビューファインダーで撮りたい」と思わせる要素があるのだ。こればかりは実際に実機のEVFを覗いて体感してもらいたい。バッテリーとEVFのこの2点だけを考えても、動画用としてα9を使う価値が十分にあるのではなかろうか。

灼熱乾燥でも正常動作

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今回の取材の旅では、砂漠地帯を車で移動していった。ときにバギーの荷台に乗って砂漠を走りながらスチル撮影をしたのだが、乾燥した空気だからか砂交じりの強い風が熱風となって常に吹き付ける。外気温は40度越えの猛暑、まさに砂漠気候だ。そんな過酷な環境の下にスチル撮影とロケ撮影を行ったわけだが、α9は熱に耐え、微粒子化した砂に耐え、特に温度警告が出ることもなく、トラブルのない9日間の取材を支えてくれた。
α9の「防塵防滴に配慮した設計」という、やや控えめな表記が気になっていたのだが、今回の旅において砂漠の砂まじりの風にさらされ、ときにスコールの雨にもさらされたにもかかわらず、その防塵防滴性能を十分に発揮してくれた。総じてカメラとしての信頼性が大きく進化していると感じている。

切望するピクチャープロファイルの追加

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カメラのスペックとしてはこれまでのα7RⅡ、α7SⅡに近いスペックであり、この場での詳細解説は差し控えるが、4K/30P収録や120P収録が可能なXAVCフォーマットであり、感度や発色の傾向はこれまでと同様である。
一つ、メーカーサイドへ要望を出したいのは、ピクチャープロファイル機能が省かれているということだ。これが本当に惜しい点である。実際に私がα7SⅡなどを使用するときはピクチャープロファイルをカスタムで使用しており、8bit収録という点からしても、個人的にはα系ではLog収録は滅多にしない。しかし、ピクチャープロファイルが使えないためLookを作るカスタマイズ性が乏しいのは本当に残念でならない。
しかしその部分を譲っても、このα9の基本性能には映像制作の面から見て大きな魅力を感じてしまう。だから本当に惜しいのである。CineGear会場でも、メーカーの方々と時間を共にすることがあったのだが「今後のファームウェアのアップデートでピクチャープロファイルに対応してほしい」という要望を強くメーカーの方々にはお伝えした。

α9はボディー形状としても、撮影モードダイヤルに動画のスロー&クイックモーションが加えられたり、これまで理解に苦しむ位置にあった録画ボタンがビューファインダの脇に移動したり、マウント部のビス数を増やすことで剛性強化して実際に明らかなる剛性感を感じられるなど、細部に改良点が見られる。α9がスチル専用機ではなく動画面も少なからず意識していることが垣間見られる。
カメラへの信頼感が高まり、α系の周辺機器は当然ながら全て併用できることからも、自分の中でα9の存在は映像制作の現場での可能性を大きく広げてくれる機種であり、今後のα9の進化に大きな期待を寄せたい。